漢字教育士ひろりんの書斎日本語の本棚
2015.1.  掲載

 赤ちゃんの言葉

 英語でお母さんのことを「ママ」とか「マミー」とか言いますが、こういう言葉は発音がしやすいので、赤ちゃんがはじめて使うのに便利な言葉です。多分、赤ちゃんが意味もなく「マー、マー」とか言っているのを、まわりの人が「お母さんを呼んでいるんだ」と受け取ったことが始まりでしょう。ちなみに、日本では、同じ「マー、マー」を「ご飯がほしいんだ」と受け取ったらしく、「まんま」とか「まま」とかいうのは「ご飯」の意味になります。
 それではお父さんの「パパ」はどうでしょうか。これも赤ちゃんにとって発音しやすい言葉ですが、日本語には「ぱぱ」という言葉はないのでしょうか。
 実は、「はは(母)」という言葉がそうなのです。昔の日本語では、今の「はひふへほ」を「ぱぴぷぺぽ」と発音していました。つまり、「母」は「パパ」と呼ばれていたのです(なぜそんなことが分かったのかについては面白い話がありますが、それはまた別の機会に)。変な感じがするかもしれませんが、赤ちゃんの「パー、パー」という言葉を、日本ではお母さんを呼ぶ言葉だと受け取っていたようです。
 同じように、「チー、チー」は「ちち(父)」、「ジー、ジー」は「じじ(おじいさん)」、「バー、バー」は「ばば(おばあさん)」という具合に、赤ちゃんの得意な言葉(音?)が、赤ちゃんにとって大事な人を呼ぶ言葉となったのでしょう。
 「チー、チー」については、赤ちゃんにとって一番大事な「ちち(乳)」の語源にもなっていると思われます。
 もうひとつ、「ダー、ダー」というのも赤ちゃんの得意言葉です。これにあてはまる意味のある日本語は何でしょうか。私にもわかりませんが、英語ではお父さんのことを「パパ」のほかに「ダッド」とか「ダディー」とか言います。これは多分「ダー、ダー」からきているのでしょう。
 ここまで書いたことは、私の「想像」のレベルのもので、本当かどうか確かめるのは大変難しく、あいまいな書き方になってしまっていますが、一応つじつまは合っていると思います。
 「父」とか「母」とかいうとあらたまった言葉のようですが、もともとは赤ちゃん言葉だったとするとおもしろいですね。