漢字教育士ひろりんの書斎日本語の本棚
2017.4.  掲載

 ゼネコン

朝日新聞とベネッセが共催する「語彙・読解力検定」というものがある。次のような例題が広告として新聞に載っていた(2015.11.28朝日新聞夕刊)。

新聞語彙
「 」の意味を示す語を、①~⑤から一つ選びなさい。
・「土木工事も建築もまとめて請け負う総合建設業者」(2級相当)
   正解は、②ゼネコン

 この問題文がおかしい。これでは、土木と建築と両方を請け負わないとゼネコンではないように受け取れるが、土木専門、建築専門のゼネコンはいくらでも存在する。
 ゼネコンとは、英語"General contractor"(ゼネラル・コントラクター)の略で、もちろん日本でしか通用しない語である。contractor(constructor=建設者 ではないことに注意)は「請負者」という意味で、General contractor(すなわち「総合請負者」)は、特定工種(屋根、鉄筋、電気、塗装、舗装等)の工事だけを請け負うSpecialist Contractor(専門工事業者)あるいは元請業者から工事の一部を請け負うSubcontractor(下請業者・サブコン)に対する用語である。
 要は、発注者から一式工事を一括で請け負い、それを複数の専門業者に下請けに出し、現場全体をコントロールして工事の完成に責任を持つ「元請業者」の役割を担う業者である。建設業の許可は工事の種類ごとに得る必要があるが、ゼネコンとしては「土木一式工事」または「建築一式工事」の許可が必要となる。
 広辞苑(第6版)で「ゼネコン」を引いてみると、「建築および土木工事を一括して請け負う大手総合建設業者。総合工事業者。」とある。この「建築および土木工事」という文を読み間違えて、両方ともやるのがゼネコンだと思ってしまったのではないか。現実には、土木と建築をまとめて一つの業者に発注することはほとんどない(本体工事に付帯する比較的小規模な工事はあるが)。
 通常ならこの程度の用語のミスはいちいち気にしていられないところだが、何しろ語彙の検定試験の例題だと言うので、あえて指摘した次第である。