今も、その魔法が 小狼くん、お元気ですか? 今日はね、とっても嬉しいことがありました。 次のお電話まで待てなかったので、お手紙にしました。 わたしが友枝中学校でもチアリ−ディング部に入ったのは、春のお手紙で書きましたね。 秋って、読書とか(奈緒子ちゃんは一年中だけど)、食欲とか(ケロちゃんも一年中) 芸術とか(知世ちゃんのお洋服作りって…?)っていうけれど スポ−ツの季節でもあるから。 毎週、チアリ−ディング部は応援で大忙しです。 今日は、陸上競技大会がありました。 小狼くん、『立花 玲』さんって、覚えていますか? わたしたちが、まだ友枝小学校の四年生で、小狼くんとカ−ドの取り合いをしていた頃。 ケガをした≪駆(ダッシュ)≫の手当てをしてくれた六年生の人です。 玲さんは今、友枝中学校の三年生で、やっぱり陸上部です。 関東の中学校全部の女の子の中で、一番早い短距離選手だっていわれてるの。 今日の大会では100mと、400mリレ−のアンカ−で優勝しました。 次の次くらいのオリンピックに出るかもしれないんだって! 優勝のお祝いを言いに行ったら、本当に嬉しそうに笑って。 そして、わたしに話してくれました。 『スタ−トラインに立ったら、深呼吸をして目を閉じるの。 そうしたら、今でもピ−ウィ−の声が聞こえる。 ゴ−ルの向こうでピョ−ンピョ−ンって飛び跳ねて 嬉しそうに私が来るのを待ってるのが見える。 きっと走り続けている限り、ピ−ウィ−は私のラッキ−マスコットなんだわ』 そうしたらね、カバンの中でさくらカ−ドの≪駆(ダッシュ)≫が ほんのチョットだけだけど、嬉しそうに鳴いたの。 魔力の無い玲さんには、判らなかったと思うけれど…。 小狼くんの魔法は、今でも玲さんの中に生きているんだなぁって思った。 そしたら、すごくすごく嬉しくて。ぼろぼろ泣いてしまったの。 玲さん、ビックリしてて。 今、思い出すと恥ずかしかったな…。(////) わたしって、小狼くんみたいに魔法を使うお家に生まれたわけじゃなくて ある日突然、カ−ドキャプタ−になっちゃったし。 ケロちゃんやユエさんやカ−ドさんたちに助けてもらわないと 何にも出来ないんだけど。 でも、出来るなら。 小狼くんのように、いつまでも誰かの心に力を与えるような そんな魔法を使える魔術師になりたいなぁって、そう思ったの。 でもね、ケロちゃんにそう言ったらね 『その前にまず、さくらは寝坊を直さんとなぁ〜〜』 だって。 知世ちゃんは 『さくらちゃんなら、絶対になれますわ』 って、言ってくれるんだけどな。 日本は、あともう少しで冬になります。 でも、香港はまだあったかいのかな? 修行でケガをしないように、気をつけてくださいね。 それではまた、お手紙書きます。 木之本 桜 * * * 日本から届いたばかりの手紙を読み終えた小狼は、可愛らしい便箋に書かれた 丸みを帯びた文字を指先でなぞる。 “誰かの心に力を与えるような そんな魔法を” 「……もう、とっくに使ってるだろ?」 そう呟いて、僅かな休憩を終えた少年は修行に戻る。 一日でも早く、少女の元へ。 あの懐かしい街へ帰るために。 − 終 − ≪TextTop≫ ≪Top≫ *************************************** NHKでの再放送「さくらとケガをしたカ−ド」を見て、突発的に書きました。 リアルタイム映像の力をナメたらあかんぜよ!! 玲さん、可愛い〜v ≪駆(ダッシュ)≫も、なついたら可愛いvv そして李君のカッコ良さにはズギュン!! アニメシリ−ズの中で特に好きな回の一つです。 「魔法」とは、ただ便利なだけのものではないということを端的に見せてくれたお話でした。 |