Letter of thanks




お日様を浴びた麦わらの香りに、あなたを思い出す

だから、カル−達のカルガモ鳥舎の敷きわらに寝転がるのが
私のお気に入り

麦わらって、お日様に透かせると金色に輝いて
あなたはずっと、黄金の冠を頭に乗せていたのだと気づく

何でもアリの破天荒な日々の中、あなたが私に教えてくれたのは
人を率いる者の信念と覚悟

どんなに残酷でも 認めたくなくても
事実から目を背けずに、立ち向かうこと


  『人は死ぬぞ』

  『おれ達の命ぐらい、一緒に賭けてみろ!!
   “仲間”だろうが!!!』


あなたがゴムの拳で教えてくれたから、私は

国王軍と反乱軍との戦いが、始まってしまった時も
アラバスタの人々が、血を流し倒れる様を目の当たりにしても

最後まで、顔を上げていられた

今のアラバスタにも、私だけの力ではどうにもならないことが沢山あって
唇を噛んで俯いてしまいそうになる毎日だけれど

ルフィさん

麦わらの中に顔を埋めれば、麦わら帽子の下で笑うあなたを思い出せる


   * * *


刀と刀の打ち合う音に、あなたを思い出す

だから、ペルやチャカが兵士達に剣の稽古をつけているのを見るのが
私のお気に入り

本物の剣士は、流させた血より流した汗の方が多いものだというけれど
あなたは毎日、何リットルもの汗を流して修行を続けていた

口喧嘩から戦争まで、争いばかりの日々の中、あなたが私に教えてくれたのは
自分自身への責任とケジメ

流した汗と 涙と 己の全てを賭けて
始めたケンカの決着は、必ず勝ってつけること


  『勝負に引き分けはねェっ!!』

  『唯一の希望がお前なら、何が何でも生き延びろ…!!
   この先、ここにいる俺達の中の“ 誰 が ど う な っ て も ”だ…!!!』



あなたが背中で教えてくれたから、私は

“バロックワークス”のエージェント達に、追い詰められた時も
戦いを止めようとして、何度はね返されても

足掻いて藻掻いて、負けずにいられた

今のアラバスタでも、引けない交渉と譲れない取引の連続で
負けられない勝負ばかりの毎日だけれど

Mr.ブシドー

刀と刀の打ち合う音に耳を澄ませれば、独り黙々と修行するあなたを思い出せる


   * * *


レモンやオレンジの香りに、あなたを思い出す

だから、最近つけるようになったナノハナの香水では、シトラス系が
私のお気に入り

船の上で、毎日“ベルメールさんのみかんの木”の手入れをしていた所為か
あなたからは、いつも甘酸っぱい香りがした

行く先々でトラブル続きの日々の中、あなたが私に教えてくれたのは
強(したた)かな美しさの秘訣

いかなる時もオシャレを忘れず キュートかつセクシーに
楽しみながら、“女の武器”を研ぎ澄ますこと


  『大丈夫!!!
   あんたをちゃんと…アラバスタ王国へ送り届ける!!!』

  『その時は…、歓迎するわ!!
   海賊だけどね……!!』



あなたが小麦色に日焼けした手で教えてくれたから、私は

一刻も早くアラバスタに帰らなければと、焦るばかりだった航海の間も
自分がどうするべきか、どうしたいのかを迷い、悩んでいた時も

自分を、嫌いにならずにいられた

今の私は、王女という立場から注目されて、服装一つとっても褒められたり貶されたり
正直、ウンザリしないでもないけれど

ナミさん

シトラスの香水をつければ、私をぎゅっと抱きしめてくれたあなたの体温を思い出せる


   * * *


トンテンカンと、釘を叩くトンカチの音に、あなたを思い出す

だから、王宮や町のあちこちから聞こえてくる音が
私のお気に入り

メリー号の修理をしたり、絵を描いたり、可笑しな発明をしたり
あなたは壊して奪うより、直して作るのが得意な海賊だった

巨人や恐竜や、世界の大きさに驚く日々の中、あなたが私に教えてくれたのは
自分で自分を励ます勇気

臆病で 弱くて 情けない
そんな自分を、見捨てないこと


  『みんな!!おれはな!!
   いつか、絶対に!!エルバフへ!!戦士の村へ行くぞ!!!』

  『ビ…ビ、ビビビ!!!心配すん…パイスン…スンぱいなよ!!!
   おれガツ…ガッツいて……』



あなたがガクガク震える膝で教えてくれたから、私は

押し寄せる反乱軍の前に、立ち塞がろうとした時も
絶対に勝てない敵を目の前にした時も

逃げずに、踏みとどまることができた

今の私は、王女として海軍や世界政府の強面(こわもて)相手に
腹を括ってすっとぼけたり、嘘八百もつかなきゃならないけれど

ウソップさん

高らかなトンカチの音を聞けば、精一杯に声を張り上げるあなたを思い出せる


   * * *


焼きたてのパンやスイーツの香りに、あなたを思い出す

だから、宮殿中の食事の支度でいつも忙しいテラコッタさんの厨房が
私のお気に入り

目覚めのコーヒー、時化った時の炊き出しのおにぎり、毎日違うディナーのメニュー
あなたがキッチンに立つ時は、いつも鼻歌交じりで楽しそうだった

ずっと張りつめて歯を喰いしばっていた日々の中、あなたが私に教えてくれたのは
肩の力を抜くことの意味

しっかり食べて たくさん笑って ぐっすり眠って
心と身体に、力を蓄えること


  『そう力む事ァねェよ、ビビちゃん。俺がいる!!
   本日のリラックスおやつ、プチフールなどいかがでしょう?』

  『反乱はまだ止まるんだろ?ビビちゃん。
   ……そのオカマ、俺が引き受けた。行け!!!』



あなたが美味しいお料理と笑顔で教えてくれたから、私は

宮殿を目指して、ポルカ通りを駆け抜けた時も
砲撃手を捜して、アルバーナ中を駆け回った時も

最後まで、走り切ることができた

一国の世継ぎ王女のお仕事は、見た目よりずっとハードで
行事が詰まると、一日が終わるどころか午後にはもう、グッタリしてしまうけれど

サンジさん

疲れて甘い物が欲しくなる度に、優雅にお皿を差し出すあなたを思い出せる


   * * *


ピンクの小さな花びらに、あなたを思い出す

だから、宮殿の裏庭やオアシスの岸辺に咲く花々の中に、ピンク色を捜すのが
私のお気に入り

ドラム島で見た、冬島の桜は夢のようにキレイだった
あなたはずっと、亡くなったドクターを信じ続けていたのね

酷いことと素敵なこととが入り乱れた日々の中、あなたが私に教えてくれたのは
あきらめない強さ

誰にも信じてもらえなくても 自分でさえ信じられなくなることがあっても
けっして、夢を捨てないこと


  『おれが“万能薬”になるんだ!!何でも治せる医者になるんだ!!
   だって、この世に治せない病気はないんだから!!!』


  『幻想じゃないよ…!!ドクターの研究は、完成してたんだ!!!』


あなたが涙でいっぱいの、まあるい瞳で教えてくれたから、私は

反乱を止めたいという願いを踏みにじられても
クロコダイルに見下され、あざ笑い続けられても

大切な私の夢…理想を、失わずにいられた

今のアラバスタも、私自身も、まだまだ夢見る理想には程遠くて
やりたいことと、やらなければならないことが山積みだけれど

トニー君

ピンクの花びらを空に舞わせれば、青いお鼻をヒクヒクさせるあなたを思い出せる


   * * *


賑やかな笑い声に 輝く月の夜に 優しい雨に

風が砂を運ぶ、潮騒に似た音に

あなた達を思い出す



  『いつか また 会えたら!!!
   もう一度、仲間と呼んでくれますか!!!?』




遠くても 目を閉じれば思い出せる

私の声に応えてくれた 6つの“×”印を



                                     − 終 −


※ a letter of thanks : お礼の手紙、感謝状


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下船後の姫。
折に触れ何かにつけ、6人のことを思い出していただろうと思います。
そして彼等の存在が彼女の中に、それぞれの形でずっと生きているといいな〜と。
誕生日絡みではありませんが、姫愛の原点に戻ってみました。
……単に、ネタ切れともいいます。(涙)

さて、お誕ネタではありませんが、このテキストは企画恒例の“お持ち帰り自由”と
いたします。
リンクの有無、サイトの傾向等は問いませんが、いずこかに拙宅サイト名を明記して
くださいますよう、お願いします。
背景、文字色等レイアウトも自由に変更していただいて構いませんが、背景画像に
ついてはDLFではありませんので、ご注意ください。
企画期間中ですので、お持ち帰りのご報告も特に必要ありません。
DLF期間は本日(2012.2.2)より2012.3.1までといたします。

* DLF期間は終了いたしました。 *

9度目となる今回も、クルシミつつも姫と姫に関わる人々について、あれこれ書いて
まいります。
どうか最後まで、何卒よろしくお願いいたします。

2012.2.2 上緒 愛 姫誕企画Princess of Peace20120202