十分後の世界は

(性描写有り R18 OKの方のみスクロール↓)
















 互いを貪り合う様に縺れては離れを繰り返二本の剣。
 火花散る鋼の向こうに、彼の輝く両の目が嘲笑い妖艶に微笑み、そして焦った表情へと目紛しく変化していく。

 一目瞭然の動揺がある。それは相手がこの土方十四郎だからだ。
 剣が役に立たなくなると錯覚する瞬間がある。それは互いの瞳が心の奥底にある願望を不意に読み取ろうとするからだ。

 桂小太郎。世に名高いテロリスト。人心を惑わす犯罪者。彼は自身の性と同じ、男を好む。強く、恐らくは剣の腕の立つ者を特に。
 清潔が服を着た様な顔をして、実はとんでもない魔性。汚れた恥知らず。
 いつも人を見下す様な視線は無意識の色目だ。
 吐き捨てる蔑みの台詞で自身の罪を隠蔽する、淫靡に塗れた小賢しさ。


 二人は細い路地へと雪崩れ込む。
 桂のぎらり輝く剣の切っ先が不意を突き、土方は倒れ込む。剣は弄ぶ様に首元すれすれに迫って地面へと突き刺さった。
 荒い呼吸に二人の胸が上下する。桂は冷ややかな目で見降ろす。色付いた花弁の様な唇がせせら笑って歪んでいる。が、その瞳は疲労と恨め しさの色を隠しきれてはいない。

 彼は一先ずの勝利を収めたと思っている。
 だが喜ぶなら今の内だ。
 土方は取り落とした剣を手探りで引き寄せる。
 お前が腹の中で高笑いしている間、こっちは冷静に次の算段を立てているのだ。
 憎悪と愉悦に浸っているであろうその裏で、実は彼は目の前の雄の匂いに溺れかけている。
 これから狙うのは彼の中の最も弱く儚い部分。彼の心、その捩くれた胸の最奥。
 剣を刺すが如くそこを一突きしてやれば、そこから二人の間の時計の針は一気に動き出す。

 およそ十分、最低十分は必要だと土方は頭の中で試算する。
一瞬も無駄には出来ない。十分間で何もかも始末をつけなければならない。

 傲慢な油断を見せたが命取り。とうとう雄の獣がお前に向かって牙を剥く。
 無言の咆哮。天を仰ぐ様に大きくしなる身体。噛み付かれ捻じ込まれる舌。
 呼吸が奪われたお前の手から剣は彷徨い離れ、あっという間に路地裏は二人の獣の喘ぎの海に沈んで行く。

 突き飛ばして地面に倒れ込む身体。乱れる長い髪の間から憎しみに満ちて見上げるその目の中に、路地に細く差し込む太陽の光、 続いて自分に向かって屹立する男根が映った時、お前は言葉を失うだろう。そしたら背ける顔を掴んでその形の良い唇に力づくで捩じ込んでや るのだ。
お前は息苦しさに涙目になって抵抗するが、何度か喉奥を突いてやったら、むせ返る雄の匂いと熱さが麻薬の様にじわりと脳を支配し始めて、 見る見るうちに白い頬と目元に赤味が差す。
そうするとお前が自分から頭を動かし始めるのに時間は掛からない。
ぎゅっと目を閉じ、口の中で擦れる雄の感触をじっくり味わおうと睫毛を震わせ亀頭に舌を絡ませ熱い息で包み込む。
切ない表情で濡れた音をさせながら何度もくびれを締め付ける。
今自分が咥えているものがこの後与えてくれるであろう事の想像がその全身を駆け巡り、甘い恥辱に痺れている。
頬を紅潮させ、舌先で何度も裏筋を舐め上げて、慣れた仕草で自ら横咥えまでしてしまう。
 地面に落ちた二本の剣が、狂った自分達を淡々と見つめている。
 まるで二人の間で時が止まるその瞬間を目指して刻々と進む、時計の針の様に。


 やがて荒々しく持ち上げられる細い身体。嫌がるお前。だが一見たおやかに見えて実は強靭な脚は既に熱っぽく、いとも簡単に割り開かれて しまう。 か細い悲鳴。とうとう貫かれる肉体。あられもない卑猥な体位。
のけ反って露わになった首筋に血を舐め取る様に舌を這わせて幾つもの印を付けてやる。それが罪人の証。

 二人の腰が揺れる。お前の長い髪が、手足が、全身に絡みつく。

 腕の中で底無しの快楽を恨みがましく訴え続ける桂、

 俺の桂、俺の、桂小太郎。


 羞恥に悶えながら何度も躊躇う様は秒読みの如く、涙ながらについにお前は昇天する。



 桂、お前は自身が好む男に望み通りに犯される。

 およそ十分。十分後の世界において、お前は俺の物になる。


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