交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」

ギュンター・ヴァントブルックナーが作曲した交響曲のなかで唯一標題がついている作品である。しかし、単に幻想的な気分や雰囲気を描くだけではなく、物語や自然の情景を描写的に表現するという19世紀的なロマンティシズムが背景になっているようである。ブルックナー自身、「中性の夜明け。城の門から白馬に乗った騎士達が狩りに出かける・・・。」と明示しているように、心象絵画的な要素が含まれていることがこの曲を理解するのに大きなポイントになるのではないか?と思います。

■作曲過程・版・稿について
第4交響曲には第3交響曲と並んで、版や稿についてはもっとも複雑な問題をはらんでいる。第1稿はブルックナーのオリジナルのもの。これは今日では演奏されることは少ないが、インバル、ロジェストヴェンスキーらのCDによってその音が聴くことが出来る。ノヴァーク版W/1と呼ばれるものでる。しかし、wphによる試奏の段階で演奏不可能の烙印を押されたブルックナーは、この稿の初演も見ないまま自らの手で改訂をほどこす。おおざっぱに言うと、1楽章、4楽章の小節数の短縮、3楽章に関しては、全く違う曲に差し替えられた。で、1878年に第2稿が完成された。しかし、ブルックナーはこの後、1880年に4楽章フィナーレのみを改訂している。そのため、1878年に作曲された古いフィナーレは「Wのフィナーレ」と言い、ノヴァーク版zuW/2として出版されている(4楽章のみの異稿)。よって1878年に作曲された1楽章〜楽章と1880年に作曲された4楽章を合わせて、第2稿として、ハース版、ノヴァーク版N/2と呼ばれており、両者の間には大きな違いはないと考えて良い。そのためノヴァーク版W/2を元に演奏される場合でも、アバド/wph盤のようにノヴァーク78/80稿と表記されている場合がある。しかしやっかいなのが、ブルックナーお約束の、弟子による改訂である。第4交響曲は第2稿の形で1881年にハンス・リヒター指揮、wphで、評価は悪いものの大成功を収めている。このときの練習で、リヒターに銀貨を握らせて「一杯やりたまえ」と言ったのは有名な話である。しかし1886年にグードマンからの出版が決まった際に、弟子のレーヴェが(一応ブルックナーの了解を得た上だが)改訂しており、これを第3稿と呼ぶ場合がある、この改訂は当時の聴衆に受け入れやすくするため、もちろん善意のもとで行われたが、大幅なカットを伴うものであった。さらに他の作曲家の改訂でも有名なマーラーが、この第3稿をもとにさらにカットを施した、マーラー編と言う物まであるからややこしい。この第3稿は明らかに改訂版と呼んでいいと思う。現在一般に演奏されているのは、ノヴァークN/2(78/80年)あるいはハース版と呼ばれる稿である。


<交響曲第4番所有ディスク一覧&愛聴盤 2002.3現在>

指揮者

オーケストラ

録音年月

一言コメント

ヘンリー・アドルフ フィルハーモニカ・スラヴォニカ
クラウディオ・アバド ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1990.10 どうしてもはずせない1枚。ロマンあふれるブルックナー。
フォルクマー・アンドレーエ ウィーン交響楽団 1953.1.19L
エリアフ・インバル フランクフルト放送交響楽団 1982.9.16〜18 第1稿。
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1951.10.22L レーヴェ改訂版。
ハンス=シュミット・イッセルシュテット ハンブルグ北ドイツ放送交響楽団 冬でも半袖の指揮者「半袖趣味と言ってるでしょ。」演奏は名演。
ヘルベルト・ケーゲル ライプツィヒ放送交響楽団 1971.9L オケの貧弱さが全面に出てしまいました。
ルドルフ・ケンペ ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
いつまで売ってる、限定3,000プレス。PILZ盤。
ラファエル・クーベリック バイエルン放送交響楽団 1979.11.18・21 透き通るかのごとくなブルックナー。
オトマール・スィトナー ベルリン国立歌劇場管弦楽団 1988.10
ロヴロ・フォン・マタチッチ フィルハーモニア管弦楽団 1954.10&12 SP復刻盤。
ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー ソビエト国立文化省交響楽団 1987 第1稿。
1988 第2稿。
1984 マーラー改訂版
1987 1878年稿。Wのフィナーレ異稿。
ハインツ・レーグナー ベルリン放送交響楽団 1983.7&1984.1 快速ブルックナー。
エサ・ペッカ・サロネン ロサンジェルス・フィルハーモニー管弦楽団 1997.5.12・13 情緒がありすぎ。ブルックナーというにはちょっと。改訂版のほうが良かった?
カール・シューリヒト シンフォニック・オーケストラ 1961.6 音悪し。シンフォニック・オーケストタって?
スタニスラフ・スクロヴァチェフスキー ハレ管弦楽団
ザール響とは一味違う。
オイゲン・ヨッフム ドレスデン国立歌劇場管弦楽団 1975
ギュンター・ヴァント ケルン交響楽団 1976.12.10
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1998.1.30・31&2.1L BPOとのコンビ第3弾!


 この第4交響曲に関しては、これぞ!というのがない。その中でも、アバド/wphの演奏をあげたい。冒頭でも述べたがこの曲には標題的要素を感じるところが多いのだが、一般にブルックナーには重厚なサウンドを求めるきらいがあるので、ブルックナー通からは、非難を受けるかも知れないが、はじめてブルックナーにはまった演奏ということもあり、どうしてもはずせない演奏である。
またヴァント/BPOの演奏だが、演奏的にはすばらすく重厚なサウンドではあるかと思うが、上記の理由から、はたしてロマンティックをあそこまでしていいのか?と言う疑問が残ります。それでも重厚な演奏をあげるとすれば、ヴァント/BPOよりは、シュミット・イッセルシュテット/NDR盤をあげたいです。
 発売されたときには、なにかと話題の多かったサロネン/ロス・フィルの演奏ですが、情緒に富みすぎて、これがブルックナーとするのにはちょっと気が引けますね。サロネンは改訂版、あるいは第1稿での演奏のほうがよかったのかも?と思います。





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