星通信
カーテンの隙間から覗いた夜空は満天の星。
月の出ない夜、星達はこぞって体一杯の光を地上に
届け、我が存在を主張する。
脆弱な光の交信。何万年分の想いが行き交う。
くすくす笑いに啜り泣き、溜め息、諍い、愛の囁き。
普段、月の光や闇に紛れて見えない星達が互いの存在を確認し合う大切な日。
ベッドの上に起き上がって膝を突き、窓辺に凭れる。
息で曇った窓ガラスを手でごしごし擦り、夜空を見つめ続ける。
──── 『私を忘れないで』
太古の星達は今夜、無事に想い人に巡り会えただろうか。
──── ジョー
静かな声が背後から名を呼ぶ。
星座さえ見つけられない。この賑やかな夜空の有り様
では。
窓のガラスを挟んで、星空に額をくっつけた。
──── ジョー・・・おいで・・・
背後から伸びた手が、肘に触れた。
──── ・・・うん・・・
上の空の返事と同時に肘を引かれ、後ろから抱き込まれた。
そのままシーツの中に引き入れられてしまう。
それでも目は閉じることは出来ない。彼らの逢瀬を見届けたくて。
空から溢れそうな星達は、割れたガラスの欠片の様だ。
横たわった体の上に、見開いた儘の目に、容赦無く降り注いで来る。
短夜に溜め息を吐くのは地上の恋人達だけではない。
今宵、星達と想いを分かち合う。
明かりは何一つ要らない。太陽や月さえも。
せめて逢瀬の時だけは。
鋼鉄の手が、カーテンを引いてしまった。
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