モドル | ススム | 009

  袋小路  




────── 君達は(我々は)家族だ ──────



なんて最初に言い出した奴は誰だ糞っ垂れ。





帰って来るのでは無かった。

分かっていた事だ。春が来て夏が過ぎ、秋の気配もそこそこに冬が姿を現しても、



尚の事、それは。

分かっていてなぜ自分は此処に居る。

なぜ自分を鞭打つ様な事をしている。最悪だ。俺はどうしようも無い最低のマゾヒストだ。



だったら今すぐ右手の銃口を自分のこめかみに当てて
ズドンとやってみろ。そこでお前のアイデンティティは
確立し、且つ永遠に破壊されるだろう。
かつてお前は そんな事を望んでいたじゃないか。




…皆は泣いて止めるだろう、家族だから。・・・彼も泣くだろう、家族だから。


そこできっと自分はあっさり銃口を下ろすんだろうな。理由は考えなくてもそう多分 ────── 、
泣いて潤む瞳が可愛らしいとか、俯いて襟から覗く項が色っぽいとかでいつまでも眺めていたい、みたいな事だろうな。
そうやって『悪かった』みたいな言葉を低くぽつりと呟いてみて、腕に縋ろうとする彼の体をここぞとばかりに抱き締めたりなんかするんだろうな。




ああ、そうやって恨んでも恨みきれずにいつも。一縷の望みさえも伴って醜く苦しい事この上無い最低のマゾヒスト。



その感情は何処に行く?





何処にも行かない。入口も出口も無い繰り返し、繰り返し。







『一時の悦びに感謝はすれども。 どうしても、それは 結局愛であっても、それは 』









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