三菱 ローザ マイクロバスの系譜 (三菱/ふそう編_1)

1959年発表の3t積中型トラック ジュピター(T10)の
足回りを利用し1960年12月に発売されたマイクロバスである。

当初は新三菱重工(名古屋)で生まれ、並行して三菱ふそう(川崎)のライトバスと
競合していたが、その後統合されて現在の三菱ふそう ローザとなった。


1960 B10
新三菱重工業 ローザ


ボデー・シャシー・エンジンを一貫生産
するコンプリートバスとして三菱が
企画した自家用小型バス。

エンジンはジュピター(T10)と同じく、
ジープ用JH4(ハリケーン)を使用した。


定員21名、軸距2,950mm

出典:三菱自動車工業社史(1993)
1960 B10
新三菱重工業 ローザ

(21人乗)

リベットレスの溶接ボディは国産初で、
通称「ダルマローザ」と呼ばれた。

内外装のデザインは、ベンツの小型バス
O319を参考にしたもので、
カラーリングもよく似ている。


当初からダブルタイヤなのが、
2tトラックをベースとした他車との
大きな違いである。

出典:モーターファン1960-12別冊付録 No.7自動車ショー
(参考)メルセデスベンツ O319

1955年に登場した小型バス。

天窓のない標準車もあり、ヤナセの手に
より、日本にも少数が輸入された。

定員は11・18・19名の3種、エンジンは
ガソリン/ディーゼルの2種。

後部を荷室とした貨物車L319も作られた。

1960 B10
新三菱重工業 ローザ ライトバン


ベンツのL319に倣って後部を
荷室としたライトバンも企画された。

ショー展示車であり、参考出品に
留まった可能性が高い。

巨大なボディは
全長5,390mm、全幅2,125mm、
全高2,380mm、軸距2,950mm。

現行ハイエースのワイドボディ・
スーパーロング車を超えるサイズ。

後年のコースター ビッグバンを先取り
したクルマとも言える。

出典:モーターファン1960-12別冊付録 No.7自動車ショー
1961 B10D
新三菱重工業 ローザ


この年、2モデルが追加された。

【B10D型】
4気筒ディーゼルエンジンKE31型
(61PS)を搭載したもの。

【B20D型】
全長を860mm延長、25人乗とし、
エンジンを86PSのKE36型に変更した
もの。乗降扉は折り戸となる。

B10Dは1964年5月まで生産(422台)

出典:自動車ガイドブックVol.8 1961-1962
1961 B20D
新三菱重工業 ローザ

(25人乗)

スペアタイヤを吊り下げ式として
後部のトランクスペースを拡大。

リーフサスの改良で乗り心地が
改善された。サイドウインカー追加。

営業ニーズを見込んで乗降扉を折り戸
とし、方向幕と運転席囲いを標準装備、
燃料タンク容量も拡大してある。

クラス最大の全長6,250mmを誇る。

出典:モーターファン1962-12別冊付録 第9回自動車ショー
1963 B21D
新三菱重工業 ローザ

(29人乗)

他社製品よりも大きな車体は
思惑どおり営業車として重宝され、
全長をさらに750mm延長したタイプが
63年に登場した。実に全長7,000mm。

エンジンも6気筒ディーゼルの
KE63型(3,520cc・92PS)となった。

路線バス向けにマーカーランプ追加。
出典:三菱自動車工業株式会社社史(1993)

1964 戦後、財閥解体で三社に分割されていた三菱日本重工業・新三菱重工業・三菱造船が合併し、三菱重工業となる。

1964 B22D
三菱重工業 ローザ
(25人乗)

64年10月、25人乗B20Dも6気筒の
KE63型に変更され、出力UPが図られた。

外観は、リヤのホイールアーチを拡大。

札幌市交通資料館の保存車は、
このモデルを27人乗りとしたもの。

ローザの1964.5末までの総生産台数

1,766台。

出典:自動車ガイドブックVol.14 1967-68
1965 B21D
三菱重工業 ローザ

(29人乗)

B21Dの65年の姿を示す。

特に変化はない。

全長7mの長大なボディだが、
改正前は普通免許で運転できた。

「営業用としてもすぐれた採算性を発揮
します」とあり、各種団体・企業に強い
三菱らしい方向に特化したようだ。

ボディサイズは現行の日野リエッセに
匹敵するが、スマートなため
より長く見える。

出典:「三菱の自動車」1965年版
1966 B12
三菱重工業 ローザ


他社のマイクロバスが150万円以下で
販売される中でローザは200万円近く、
シェア確保のため低コストの
新型車が66年9月に登場する。

愛称は“ライトローザ”。

他社では21人乗クラスの短めの車体に
25人分の座席を詰め込んだもので、
価格も他社と競合できる135万円。

KE42ガソリンエンジン(90PS)搭載。

25人乗、27人乗“だるまローザ”と併売。

出典:モーターファン1967-12別冊付録 第14回東京モーターショー
1967 B22
三菱重工業 ローザ
(25人乗)

B22の67年の姿を示す。

特に変化はない。

64年登場の0系新幹線の
影響を感じる塗り分けだ。

ガソリン車は“ライトローザ”に
任せたためか、形式末尾に
ディーゼルのDをつけるのを
やめたようだ。

出典:「三菱の自動車」1967年版
1968 B24
三菱重工業 ローザ


68年10月、ディーゼル車のエンジン変更
KE65型(3,473cc・95PS)

何を思ったか、ライトローザと同じく
「ニューローザ」と呼ぶ。ややこしい。

ラインナップは2種で
25人乗のB23
29人乗のB24

ウインカーが大型化し、ふそう
トラックのイメージに近づいた。

マーカーランプの橙色化は保安基準
によるもの(路線バス=青紫色)か。

この姿で73年の“プリティローザ”
登場まで持ちこたえた。

1960〜68年の総生産台数、3,674台。
出典:「三菱の自動車」1968年版


   だるまローザのボディサイズとエンジンの変遷 まとめ
型 式 定 員 全 長 登場年 ガソリン ディーゼル
B10/B10D  21人   5,390mm  1960/1961 JH4(L4・2,199cc・76PS) KE31(L4・2,199cc・61PS)
B20D  25人  6,250mm  1961 KE36(L6・3,299cc・86PS)
B22D 1964 KE63(L6・3,520cc・92PS)
B23 1968 KE55(L6・3,473cc・95PS)
B21D  29人   7,000mm 1963 KE63
B24 1968 KE55


【参考資料】
『新三菱重工業社史』(1967)
『海に陸にそして宇宙へ 続 三菱重工業株式会社社史』(1990)
『三菱自動車工業株式会社社史』(1993)
日本自動車工業振興会 『自動車ガイドブック』 各号
『モーターファン』 各号
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