・・・寮に帰った後・・・
・・・俺は、あまりの眠気のあまり・・・
・・・そのままベットに倒れこんだ・・・
〜3 years ago〜

「ねぇ、梗耶」
「あん?」
あの後、制服に着替えた頃には、既に朝ごはんを食べる時間もなく、俺は空腹のまま学校に向かっている。
「何であんたって、朝あんなに弱いかな〜」
呆れるように言ってくる。
「仕方ねぇだろ。起きれないもんは起きれないんだから」
「ちょっとは起きる努力はしなさいよ」
「いぃやんけ、どうせ、良い目覚ましが近くにあるねんからな」
笑いながら言い、攻撃が来るのを恐れ、防御の姿勢に入る、が、攻撃は来なかった。
「私だって、何時までもあんたを起こせるわけじゃないんだからね・・・」
今までと違い、声を落して言ってくる。
それが何を意味するのか、この時点では予想も出来るはずなく
「何や、今日は攻撃されんかったの〜。おもろぅ無いの〜」
今までと違う態度に不満をもらす。が不意をついて俺の顔に鞄が直撃する。
「ぐはっ!!」
「ば〜か。油断すんじゃないわよ!」
さっきの暗い顔は其処にはなく、いつもの笑顔に戻っていた。
「ほらっ、さっさと行かないと遅刻よ〜」
俺を置いて、さっさと学校の方に走りながら言ってくる。
「ま、待たんかい・・・痛てて・・・」
顔を押さえながら彩音の後を追っていった。

「う〜っす。」
俺と彩音はぎりぎりで間に合い、教室に入った。
「あっ、コウ〜。おっはよ〜」
俺の名を呼びながら、そのまま突っ込んでくる。正確にはタックルだろうが、俺はそれを軽く受け止める。
「おはよう、大地君」
笑顔で挨拶する彩音
「こらっ!大地!!いいかげん毎朝タックルかましてくるのは止めろ!!」
「おはよう、彩音ちゃん」
俺の言葉を無視して、同じく笑顔で返す大地
本名、風凪大地(かざなぎ だいち)俺と同級生だが、見た目小学生だ。身長120cmと小さく、容姿も女っぽい。
そして、皆に好かれるタイプの奴である。しかし、こいつの裏を知る人物はそういないだろう。
実はこいつは、様々な情報をもっていやがる情報屋なのだ。元々、人懐っこいせいか
男女問わず、よく話している。その実、それは情報収集の為らしいが・・・
その為、生年月日から男女の恋愛事情まで、隅から隅まで知っている男だ。こう言う奴は仲間にするに限るな・・・
「コウ〜?何考えてんの?」
俺が一人唸っていたせいか、心配そうにこちらを見上げてくる。
「ん?いや、何でもない。それよか・・・離れろや・・・」
今気づいたが、こいつ・・・さっきからずっとくっついてやがったのか・・・
「え〜、もぅちょっといいじゃん〜」
きゅ〜っと抱きついてくる。・・・こいつ・・何考えてんねん・・
「あらあら、お熱いのは結構ですけど、早く席に座らないと、先生見てるわよ」
「「えっ?」」
声がはもる
「こほん・・・えー、神城と風凪・・・そういうことは授業が始まるまでにしてくれ」
周りから大爆笑がもれる
「アホッ!お前のせいで妙な誤解受けたやんけ!!」
「え〜、でも、僕コウのこと好きだよ〜。」
周りの笑いが更に大きくなる。
「バカタレ!!時と場所を考えろや!!」
俺は大地の頭をグーで殴る
「痛った〜!!コウが殴った〜」
頭を押さえながら、自分の席に戻って行く。席につくと目の前の女子に頭を撫でて貰ってやがったが・・
「梗耶も早く座りなさいよ。」
彩音の声で正気に戻り、席につく。
担任は一言二言言った後、ホームルームは終わった。
「あっ、日向。ちょっと」
「はい・・・」
担任が彩音を呼ぶ。
「あれ〜、彩音ちゃん、何かあったの〜?」
ホームルームが終わり、大地が俺の席にやって来て俺に言う。
「さぁな、俺の知ったことやあらへん」
「そぅ?ならいいけど・・あっ、コウ、今日の1時間目の英語当たるんだ〜。ノート見せて〜」
「あん?あれくらいやってこいや。ったく・・・」
しぶしぶノートを貸すと、急いで席に行って写し始めた。
「よぉ、何の話やったん?」
俺は暇つぶしに後ろの席の彩音に話し掛けた。
「ん、なんでも無い・・・」
あまり顔色が冴えない
「そうか、ならええねんけどな・・・」
「あら、心配してくれてんの?」
「けっ、バカ言うな。面白半分で聞いただけや」
さっきの表情が嘘のように笑って話していた。そして、授業が始まった。

昼休み

「ん〜、やっと昼飯か〜。長かったな〜」
う〜んと背伸びをしていると
「あっ、梗耶、今日も食堂?」
「当たり前やん。いつもの事やし」
食堂に向かおうと立ち上がる。
「それじゃあさ、これ食べて」
彩音が俺に弁当箱を手渡す。
「・・・・何やこれ?」
一応一通り見てみたが、普通の弁当箱だった。
「失礼ね、練習のために作ってみたのよ。そんなに言うんならあげない」
「あぁ、すまんすまん。有難く頂きます」
俺は弁当箱を開け、弁当の王道の卵焼きに手をつける
「初めから素直に言っとけばいいの。で美味しい?」
真剣な表情で彩音が聞いてくる。
モグ・・・モグ・・・モグ・・・
「うん、ちょっと甘いが、美味い」
俺は素直に言った。いや、本当に美味かったんだ。お世辞ではなく・・
「ホント!?よかった〜」
安堵の息をもらす彩音。俺はその間にも食べ続けていた。
しばらくして・・・
「ふぅ〜、美味かった。ごちになりました〜」
弁当の蓋を閉め
「はい、お粗末様でした」
笑顔で応える彩音。
「お前、料理できたんやな〜、ちょっと見直したで」
「当たり前でしょ、私に不可能な事なんて無いのよ」
こうして教室ではこんな笑いの耐えない会話が繰り広げられる中・・

・・・・一階廊下・・・職員室前にて・・・
「もぅ、コウったら、「後で来る〜」なんて言って〜来なかったじゃんか〜」
ブツブツと文句をいいながら歩いていると
「そうですか・・・日向が・・・・」
「ん?」
いつもの衝動に駆られ、聞き耳を立てる
「ええ、何でも親の事情だそうで・・・」
「しかし、この時期に転校ですか・・・ちょっと可愛そうな気もしますがね・・」
転校・・・日向・・・・彩音ちゃんが・・・
「しかも、誰にも言わずに行くらしいですから・・・・・」
その後の会話は覚えていない・・・
「こ、これは大変だ〜、コウに知らせないと!!」
大地は足早に教室に向かった。

・・・・その頃教室では・・・・
「んで、何で急にに弁当なんて作り始めたんだ?」
「えっ?何でもいいでしょ?理由なんて・・・」
慌てて弁当箱を仕舞うために、席に戻る
それとほぼ同時に
「コウ〜〜〜〜!!!!!!」
大地が勢いよく俺にタックルを決めてきた。
「ぐはっ・・・・て、てめぇ・・・何しやがる!!!」
「それより大変だよ。大変!!」
「あん?何が大変なんだよ」
こいつのこの慌てよう、ただ事ではないことはわかる。
「そ、それが〜」
チラリと彩音の方を見て、またこちらを向く
「あん?彩音がどうかしたのか?」
「コウ・・・ちょっと教室でよ」
俺の腕を引っ張って連れ出す。
「お、おいっ、大地、何だよ」
「いいから!!!」
俺はそのまま屋上まで行く羽目になった。
「んで、何だよ、こんなとこまで人連れ出して、くだらない事だったら殴るぜ?」
「・・・・落ち着いて聞いてよ・・・コウ・・・」
今までに無いくらいの真剣な表情の大地
「彩音ちゃんがね・・・・」
「彩音が?どうかしたか?」
「・・・・もぅすぐ転校するみたいなんだ・・・」
「・・・・・はぁ?何言ってんだ?大地・・・」
俺は耳を疑った。彩音が転校?何バカなこと言ってんだ、こいつ・・
「・・・・でも、先生たちが・・・・」
「彩音はそんなこと一言も言ってないぞ?」
「・・・だから・・・何も言わず、行くらしい・・・」
「はんっ、信頼性に欠けるな。第一、日向なんて名前何処にでもある」
「・・・・でも・・・・あれは担任の声だったよ・・・」
「似た様な声の奴なんざ、一杯いるさ」
「・・・・でも・・・彩音ちゃん・・・様子おかしかったし・・・」
「うるせぇ!!!!そんな訳あるかっ!!」
俺はそのまま屋上を去った。

・・・やがて知る事になる事実を・・・

・・・俺は否定して・・・

・・・受け入れられなくて・・・

・・・受け入れないといけないのに・・・

・・・悲しいのは俺だけじゃないのに・・・
←BACK  NEXT→