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・・・午後の授業が始まっている・・・ ・・・そんな中俺は・・・ ・・・あの言葉が頭から離れなかった・・・ ・・・「転校」・・・ 〜3 years ago〜
俺は授業も受けず、座りながらぼ〜っと考えていた。今日の彩音の様子、急に作り始めた弁当 そして・・・・・大地の言葉・・・・・ 確かに今日の彩音の様子はいつもと違っていた。 だが、そういう日もあると、俺はあまり気にしなかった。 しかし、昼間の大地の言葉が本当なら・・・ 朝、呼ばれた事も、その後に見せた沈んだ顔も 大筋の話は通る。 それならば、何故俺に言わない? 人に話したくないのはわかる。だが、何故俺にも教えない? 俺が他人に話すとでも思っていたのか?そんなに信用が無いのか? わかんね〜、何でなんだ・・・ 「・・・・君、神城君?」 名を呼ばれはっと俺は顔を上げると 「神城君、考え事をするのはいいけど、授業は真面目に聞きなさいね?」 案の定国語の先生が目の前に立っていた。 「それじゃ、48ページから50ページまで読んでもらいましょうか」 「はっ?それちょっと多くないです・・か?」 「何度も呼んだのに返事をしなかった罰です。読みなさい」 「・・・・はい・・・・」 俺は諦め、2ページを読むことになった。 〜放課後〜 「ば〜か」 授業の終わった後に聞こえた第一声がそれだった。 「うっせ〜よ。お前も気がついたんなら教えろよ」 「何で私がそんなことしないといけないのよ。それより、珍しいわね、あんたが授業中に注意させるなんて。何考えてたの?」 俺は一応優等生で通っている。 だからこんな事は珍しかったので、周りの何人かは不思議そうに俺と彩音の会話に耳を傾けている。 「あのな、たまにはそういうこともあるやろうが」 俺は曖昧な返事で言葉を濁す。 「ふ〜ん、まっ、いいけどね」 じーっと俺の顔を見て考えた後に言った言葉がそれだった。 「それより、そろそろ帰るわよ。」 「ん、あぁ、ちょっと待ってろや」 俺と彩音は昔からの癖でほぼ毎日一緒に帰っている。 今日はそれがありがたかった。 〜帰り道〜 ・・・いつものようにいつもと同じ道を歩いている。・・・ ・・・俺の口数が少なかったことを除いては・・・ 「ねぇ、どうしたのよ?昼休み終わってから変だよ?」 彩音が俺の顔を覗き込んで聞いてくる。 「あん?別におかしくねぇよ」 俺は素っ気無く答える。それが返って怪しまれる結果となった。 「ん〜、何か嫌な事でもあったか?それとも・・・ショックなことでもあったね」 痛い所をついてくる。さすがは幼馴染と感心した。 これ以上隠すとハリセンが飛んできそうだったので、俺は聞くことにした。”あの”事を・・・ 「彩音、一つだけ答えろ」 「えっ?う、うん。私に答えられることなら・・」 俺の真剣な表情に驚いたようであったが、そう答えた。 「転校するのか?」 遠まわしに聞かず、ストレートに聞いてみる。 その言葉を聞いた彩音の顔色は途端に変わる。 「・・・何で知ってるの?・・・」 低く、沈んだ声で俺に問い掛ける。 「昼間、大地に聞いた。正直嘘だと思ってたが、どうやら本当のようだな。別にそれで責めるつもりも無い。親の事情なんだろうからな。」 俺は話を続ける。 「だが、何故俺にさえ教えなかった?何も言わず去るつもりだったのか?一言くらい言ってくれてもよかったじゃねぇか!」 俺は少し口調を荒げる。 「・・・ごめん・・・本当にごめん・・・」 俯いたまま謝り続ける彩音。俺はその姿を見て苦しかった。 「・・・言えなかったんだよ・・・言ったら・・・梗耶が・・・離れて行きそうで・・・言えなかったんだよ・・・」 瞳に涙を溜めながら言う彩音。こいつの涙を見るのは久しぶりだ。 「ったく・・・バカか、お前は・・・俺とお前の絆はこんなもんじゃ切れねえだろうが。何年一緒に育ってきてんだよ。」 ポケットからハンカチを出し、渡す。 「・・・うん、ごめんね。言わなくて・・・」 「そう思うなら涙拭いてから言えや」 「くすっ、女の涙に弱いところは変わってないね。」 涙を拭き取り、微笑みながら言ってくる。 「そんで、何時離れるんだ、ここから?」 「ん、2、3日中には・・・」 「そっか、寂しくなるな。」 「へぇ〜、嘘でも嬉しいよ。寂しいと思ってくれて。」 にっこり微笑みながら言ってくる彩音。 「しかし、朝の目覚ましがいなくなると遅刻する回数が増えるな。」 言った直後にハリセンが後頭部に直撃する。 「もぅ、感動させるか、怒らすかどっちかにしてよね!」 いつもの流れでハリセンが来たのがちょっと嬉しかった。 「あっ、そうだ。2つお願いがあるんだけど」 「あん?一つにせぇや」 「ダ〜メ。一つ、私が転校する事誰にも言わない。二つ、明日渡したい物があるから公園に来て下さい。」 「へいへい、お前に抗議するだけ無駄っちゅ〜のはわかっとるし、了解や。」 「よしっ!それでこそ梗耶だよっ。」 そんな約束を交わした後、俺たちは家に向かって歩き出した。 次の日も平和に過ごせた。 時折、大地から昨日の真偽について迫られたが、何とか追い払った。 それで、午後10時。夜の公園にて 「ふぁ〜、寒いのに彩音の奴は何しとんねん!!」 家が近いのだから何も公園で待ち合わせる必要も無かったのに、彩音が強く言うので、しばしば了解したのだが・・ 「言った本人が遅れるとはどういうこっちゃ!!」 叫びながら待つ事5分。ゆっくりと歩きながら来る彩音 「ごめ〜ん、ちょっと遅れちゃったかな?」 「アホか!!わしを凍え死にさせる気か!!」 「たかだか5分くらいでしょ?それくらいで死にはしないわよ」 俺の抗議にも耳を傾けず、紙袋から何かを取りだす。 「はい、これ。ちょっと早めのクリスマスプレゼント」 黒のマフラーと手袋を俺に手渡す。 「今年もちゃんとした時にあげたかったんだけど、無理そうだったから」 苦笑交じりに言ってくる。 「サンキュ、では、さっそく・・・」 俺はマフラーをまき、手袋をつける。 「ほぅほぅ、こりゃ暖かいわ〜。」 「そぅ?よかったよ。それと・・・」 そう言って、俺にハリセンを渡す。 「これ、あげるよ。もぅあっち行ったら使えそうに無いから・・・」 「・・・そうか・・・」 俺は彩音のハリセンを受け取り・・・ 「・・・悪いな、俺は何のプレゼントも用意してへんねん・・・」 「あはは、気にしなくていいよ。私が勝手にあげたんだから。」 いつものように笑いながら言ってくる彩音 「でも、一つだけお願いしていい?」 彩音の真剣な表情で言ってくる。 「あぁ、言ってくれ。俺に出来る事ならやってやる」 「じゃあさ・・・・3年後の12月30日・・・また、会ってくれないかな?」 「何で3年後やねん?」 「ん?別に意味無いよ。何となくキリが良さそうだったから」 俺たちは互いに爆笑した。 「はっはっは、お前らしいぜ。ホント・・お前らしいな、最後まで・・・」 「あっはっは、私らしいでしょ?でも、最後じゃ無いよ。まだまだ長い付き合いになるよ、きっとね」 笑顔でそう言ってくる彩音。夜の月明かりのせいか、その笑顔は輝いて見えた。 「よっしゃ、3年後の12月30日。お前のために空けといたろ。」 「うんっ!!ありがとう♪」 俺たちはその後少し話し・・・ 「それじゃ、今日は来てくれてありがと。私そろそろ帰るね」 「あぁ、もぅそんな時間か。」 時計を見ると、時間は11時を少し回った所だった。 「彩音、今までありがとう。あっち行ってもがんばれよ」 俺は手を差し出す。 「うん、梗耶もがんばってね。ちゃんと早起きしなさいよ」 少し照れたようにその手を握り返す。 「それじゃ、次に会う時まで、サヨナラだよ」 「あぁ、次は3年後ここで。」 そして、俺達は別々に帰っていった。 〜次の日〜 朝、俺は一人で起き、学校に行った。 マフラーと手袋をつけて・・・ 8時30分、ホームルームの時間になっても彩音はこなかった。 どうやら今日、行くみたいだな・・・ そんなことを考えていると担任が・・・ 「え〜、皆には黙っていたが、今日、日向が転校する。」 皆からどよめきの声が上がる。まぁ当然といえば当然だろう。 「先生!何で言ってくれなかったんですか!!!」 「それはな、日向の意思でもあるんだ。本当は言わないつもりだった。」 「そんな・・・何で・・・」 不満を漏らす少女、悔しそうにする人、泣きそうになる人など、様々だった。 「何時の電車で行くんですか?先生は知ってるんじゃないんですか!」 「いや、それは俺にもわからん。それだけは俺にも言わなかった」 「そんな・・・誰も知らないなんて・・・」 その場に泣き崩れる少女、そういえば彼女は彩音と仲がよかったな・・・ 「そうだ、神城君!!!貴方は?貴方は何か知らないの?幼馴染でしょ!お願いよ。教えてよ!!」 不意に俺の名を呼び、叫んでくる少女 「さぁな、知ってるも何も誰も知らなかったんだ。俺が知らなくても不思議じゃない」 平然と言う俺を睨んだ目で見据える少女 「最低!!何でそんなに平然としてられるの!!!彩音が居なくなっても平気なんだね!!」 「平気なわけ無いやろが!!何も知らんくせにふざけた事ぬかすな!!!」 叫んだ俺を見て、唖然とするクラスの連中。 「あいつのことはな、お前等よりずっと俺のほうが知ってるんじゃ!!あいつの気持ちもよぅわかってるんじゃ!!」 叫び終えると、俺はそのまま教室を飛び出し、屋上に向かって走り出した。 「・・・・」 静かに屋上で街を見ていると・・・ 「・・・コウ・・・」 いつの間にか大地が居た。 「大地か、あの後どうなった?」 「コウが出て行った後、先生がね・・」 (「お前等もな、いずれわかると思うが、日向と神城は幼馴染なのは知ってるな?あれはいわば兄弟みたいなもんだ。 その兄弟が離れると知って平然と居られると思うか?おそらく神城は転校の事を知っていただろう。だが、聞いたのは数日前だろうな。 それまでは誰にも言わなかったらしいからな。話さなかったのは神城が日向の思いに気づいていたからだな。まぁ俺もはっきりとはわからんがな。がっはっは とにかく、悲しいのはお前等だけじゃない。あいつも本当は悲しいんだ。心の中ではやり切れない思いで一杯なんだろう。 だから、何も言わずに。以上。ホームルームを終わる。」) 「・・・ったく、何馬鹿なこと言ってんだろうな、あの教師は・・」 苦笑いを浮かべていると 「コウも素直じゃないね。本当は知ってるんでしょ?」 「知らんさ。だが、あいつの考えてることなんてわかるさ。そのくらい同じ時を過ごしてきたんだからな」 その言葉を聞き、大地はにや〜としながら 「そっか、コウは別れの挨拶したんだね、って事は彩音ちゃんに「好き」って伝えたのかな?もしかしてその先も・・・」 「ごほっ!!な、何馬鹿なこと言ってんだ!!お前は!!」 少し赤くなる自分に気がつきながら叫ぶ 「あれ?言ってないの?な〜んだ、がっかり」 その場で肩を落とす大地 「てめぇはそんなふざけたことばっか言ってんな!!!!」 大地の頭にハリセン一閃 「痛って〜!!!何すんだよ!・・・ってそのハリセンは・・・」 再び、にや〜としながら言ってくる。 「あぁ、俺があいつから取ったもんだ。」 「ふ〜ん、ま、コウがそう言うんなら、そうなんだろうね」 「馬鹿言ってないで、さっさと教室に戻るぞ」 「あっ!!!予習忘れてた〜!!!」 走って教室に向かう大地 「ったく・・・・」 帰る前に、空を見上げ・・ 「・・・3年後・・・また会おうな・・・彩音・・・」 空に向かってそう言う。 きっと彩音は既にこの街を出ているだろう。あいつの性格なら、きっと早々に出て行くからな。 だが、今は不思議と悲しさは無い。きっと微笑んでいるのだろう。 友の旅立ちに・・・笑顔で見送ってやりたかったから・・・ そして、笑顔で迎えてやりたいから・・・ 「はっ!!!!!」 俺は目を覚ました。時間は・・・・午前3時・・・ 「あれからずっと寝てんのか、俺・・・」 激しいダルさを覚えながらもベットに座り・・・ 「そうか、今年が3年目か・・・」 壁に掛けてあるカレンダーに目をやる。12月30日 「あれから、もぅそんなに経ったんやな・・・」 立ち上がり、空を見つめる・・・ 「久しぶりにあいつに会えるんか、そっか。プレゼント・・・用意しとかんと・・・」 それから朝が明けるまで、そんなことを考えていた。 約束の日がくるまで・・・・ あと少し・・・ fin □後書き□ はい、分岐1、友情と取る場合完結です(汗 何か文句一杯出そうですけど、許してくだされ。私にはこれ以上は・・(爆 先に、突っ込みはなしの方向で(笑) |