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あの後、お通夜には 昔の知り合いが多く参列していた。 その中には俺の知りうる顔もあった。 皆それぞれに悲しみ、泣き崩れ・・・・ 中学の知り合いなどは互いに泣き崩れたままだった。 その中で俺は・・・ 涙も流さず ただ、俯いていた。 〜Lost〜 「気持ち」
「・・・・」 雲ひとつ無い夜空。星が輝いている。 「・・・何をやってるんだか。・・・」 既にお通夜は終わった。明日は葬儀だ。 葬儀が終わり、告別式・・・そして・・・永遠の別れ・・・ 「・・・これで・・・このままでいいのか・・・」 今更何を言っても始まらない。 彩音は・・・・もぅ居ないのだから。 「あっ、コウ。こんな所にいたんだ。」 後ろから声をかけられる。 中学の同級生だった、大地だ。 「・・・大地か。こんな所で何やっとん。はよ帰って寝とかんと明日もたんぞ」 後ろを見ずに言う。 「大丈夫だよ、それよりコウこそ寝なくて大丈夫なの?」 「・・・俺のことはいい。ほっとけ・・・」 尚も後ろを見ずに言うと 「コウ・・・何考えてんだよ。お前こそ何日も寝てないんだろ!」 少し強い口調で言ってくる大地。こんな口調を聞いたのは久しぶりだった。 だが俺は・・・ 「・・・おまえには関係ない。俺がどうしようがな・・・」 「関係あるさ!!お前が倒れたら彩音ちゃんもゆっくり休めないじゃないか!!」 「・・・うるせぇ・・・今、その名前を出すな・・・」 正直大地の言う事はもっともだった。 今の俺の様を見てあいつがゆっくり休めるわけ無いと思う。 あいつは昔っからお節介だからな。 「コウ・・・明日でお別れなんだよ。最後くらい・・・元気な姿で彩音ちゃんに会おうよ」 徐々に声のトーンが下がる。 「・・・わかってるよ。頭の中ではわかってるよ。」 あいつだから・・・ 彩音の事だからこそ俺は・・・ 今寝たら、起きられない気がするから・・・ 今寝たら、最後に会えない気がするから・・・ だから・・・ 「コウ・・・もっと正直になろうよ。辛いなら泣こうよ。思いっきり泣こうよ。 泣いたって誰も何にも言わないよ。今のコウ見てるほうが辛いよ・・・感情押し殺して 自分を押さえつけてちゃ駄目だよ・・・」 痛い所を突いてくる。 さすがだと心の中では苦笑しつつも それを顔には出さない。 「・・想像で物は言わない事だ。これ以上お前と話すことは無い。帰って寝ろ・・・」 冷たい口調で言うと 「もぅいいよ!コウの分からず屋!!」 走り去っていく大地 「・・・お前に何がわかる。・・・俺の何が・・・」 そして夜も更けていった。 その夜もまた、ずっと悩み続けていた。 次の朝 予定通りの葬儀が行われ、告別式、釘うちと終わり 今、火葬場に向かってる 向かってるバスの中でも、俺は何も言わず・・・ 隣に座っていた大地ももはや何も言ってこなかった。 そして、最後の時を迎える。 皆、最後の別れを言い、戻って行く。 中には棺から離れようとしない奴も居た。 その様子をじっと見ていた俺に 「・・・何も言わなくていいの・・・本当に最後だよ」 ずっと横に居た大地が小声で言ってくる。 「・・・あぁ・・・」 俺は少し躊躇しながら棺に歩み寄り、顔を見る。 綺麗な顔だった。真っ白で・・・ 手で触れてみても、冷たかった。 「・・・本当に・・・最後になっちまったな。 お前に貰ったリング、大切にするよ。」 「そして、このペンダント・・・・合わせたの一回きりだったな・・・」 ペンダントを外し・・・・・ 「・・・最後に一回だけな・・・・」 最後に顔に触れ、その唇に軽くキスをし、そして離れる。 その後、棺は火の中に入れられて、その間待つ事となった。 「・・・ふぅ・・・」 俺は火葬場の休憩所の椅子に座り、買ってきた珈琲を開けた。 「大丈夫?相当辛そうだけど・・・」 「・・・心配すんな。後、少しなんだ。後は気合いで持たせるさ」 弱い笑みを浮かべながら大地に言う。 「それでも、4日寝てないんでしょ?時間あるし、ちょっと寝たら? ちゃんと起こしてあげるからさ」 「・・・別にええよ。ホンマに大丈夫やから・・・」 珈琲を飲みながら、言う。 正直な所、今にも倒れそうだ。頭も痛いし、体調的には最悪だ。 「もぅ、こういう所は昔と変わって無いんだから・・・ もぅちょっと自分の体大事にしないと駄目だよ。コウも一人身じゃないんでしょ?」 「なっ!?何言うてんねん!」 「あはっ、やっぱりそっちで彼女作ったんだ〜。んで、名前は?」 ニヤケながら聞いてくる大地。当然の如く、素手でドツく。 「ぐぁ、痛てて・・・ますます威力上がってるよ・・・」 少し離れた所で頭を押さえて文句を言っている大地はほおって置いてゆっくりしていると 「梗耶君。ちょっといいかな?」 彩音のおじさんが話かけてくる。 「えっ、はい。いいですけど・・・」 俺は訳がわからないまま、外に連れ出された。 どうやら他の人に聞かれたくないらしい。 池の傍に来た頃 「・・・ありがとう、梗耶君。何日も・・・」 不意に言われるお礼の言葉に俺は動揺した。 「そ、そんな、俺何にもしてないですし・・・」 「君が来てくれた事で、彩音も笑って逝けたと思う。 現に、あいつは最後笑っていた。『梗耶の声が聞こえる』って言ってね」 俺は何も言えず、おじさんの言葉を聞いていた。 「彩音は梗耶君のことを本当に好きだったんだ。前にも話したが、君と会う日が近づくにつれ あいつは落ち着かなくなってきてね。前日も嬉しそうに言っていたよ。 『明日梗耶に会うんだよ』ってね。本当に嬉しそうだったよ。」 空を見上げながら言ってくるおじさん 「帰ってきたら帰ってきたで、『これ梗耶に貰ったんだよ!』って言ってペンダントを見せられてね 親としては娘のこんな顔を見れて嬉しかったんだ。 だから、色んな意味でありがとう」 こちらを向き、深い礼と共に言う 「・・・おじさん、そんな頭なんて下げないでください。俺のほうこそお礼を言いたいのに」 焦りながら頭を下げる。そして二人とも頭を上げ 「最後に一つだけ、彩音の事、忘れないでやってくれ。・・・」 「絶対に忘れません」 俺は力強く言うと、おじさんは微笑み 「そうか、話を聞いてくれてありがとう。梗耶君」 そう言ってその場を離れるおじさん 俺はその場に座りこんで 「・・・絶対に忘れませんよ・・・初恋の人だから・・・」 そのまま時間が経ち 遂に火葬が終わり、俺たちは火葬場に戻って骨箱に骨を入れ、全て終わった。 あの後、皆、家に帰っていった。そして、大地達中学の同級生らも帰ると言い 駅まで見送りに行った。 「じゃあね、コウ。また関西に戻ってきた時は連絡頂戴」 「あぁ、暇があったら行くわ。またな」 電車のドアが閉まり、大地達も帰り、残りは俺だけだった。 「さて・・・あんまゆっくりもしてられんし、俺も帰るか・・・」 彩音の家に泊めてもらっていたので、一度帰り 荷物を持ち、おじさんとおばさんに挨拶をして、帰ろうとした時 「梗耶君。本当に最後までありがとう。」 「いえ、こちらこそずっと泊めていただいて、ありがとう御座いました」 深くお礼をし、俺は彩音の家を去った。 その後、寮に戻った俺はあまりの疲れのあまりそのままベットに倒れこんで起きなかった。 夢を見た・・・・ 何時ぞやの夢を・・・・ (「ありがとう。大事にするよ。ずっと・・ずっと・・」) (「泣くなよ、お前らしくないぞ。」) (「私らしくって何よ・・少しくらいいいじゃない」) (「ったく・・・泣き止むまでやぞ」) 『これは・・・年末の・・・』 『・・・そぅ、私と梗耶が久々に会ったあの日の会話よ』 その声が本当に聞こえているのかもわからない。 だが、空耳というには違いすぎた・・・ 『・・・んで、コレになんの意味があんねん?』 何処から聞こえてくるのかも解らない声に問い 『・・そうね、走馬灯・・・とでも言えば解るかな?バカの梗耶でも』 その声はわずかに笑っていた。 『・・・走馬灯ね・・・・お前のか・・・彩音』 声の主は笑いながらソコに姿作る。 『さすがだね。すぐにわかるなんて・・・・でも、梗耶・・・大丈夫?』 『へん、お前に心配されんでも、自分の体調くらい自分で管理できるわい』 『そぅ、ならもぅ私が世話しなくても大丈夫だね』 微笑む彩音 『当たり前じゃ、そこまでガキやないちゅうねん』 笑いながら言う俺 『ありがとね』 『・・・気にするな。俺とお前の仲やんけ。』 『あぁ〜、今ちょっと間があった〜』 少し怒ったように殴りかかってくる。 『冗談やんけ。わかってるくせに』 『うん、何年あんたと付き合ってると思ってるのよ』 微笑みながら抱きついてくる彩音 俺は素直に抱きしめて 『・・・これが最後だから・・・もぅすぐ行かないといけないから・・・いいよね』 その言葉の意味をすぐに理解し 『・・・ホンマにこれで最後なんか・・・。』 俺自身自分の言葉が信じられなかった。 まさかこんな事を言うなんて・・・ 『ご免ね・・・でも、もぅ時間が無いの』 言葉どおりその時間は長いようで短かった 『・・・もぅ行かなきゃ・・・それじゃね・・・』 放れ間際、頬に軽くキスをして、その姿を消す。 『ま、待て!彩音!!俺は・・・』 『・・・いつも、傍にいるよ』 光の粒が俺を包む そして・・・・ 「・・・ん・・・」 俺は目を覚ます。まだあたりは暗かった。 「・・・6時・・・あれから2時間くらい寝てたんか・・・」 俺はベットに座りなおした時に気づく。 自分の頬が濡れている。 「・・俺が・・・涙・・・」 信じられなかった。 「・・・夢なのに・・・か・・・ったく・・・」 俺は立ち上がり、窓際に立ち、空を見上げた。 「・・・ホンマに終わったんやな・・・何もかも・・・」 「・・・・なぁ、彩音・・・これでよかったんかいの・・」 ポケットから取り出す片翼のペンダント・・・ あの時入れられなかった・・・ 彩音とのたった一つのつながり・・・ 「・・・なぁ・・・俺に答えをくれよ・・・彩音・・・」 俺はペンダントを握り締め、泣き崩れた。 人前では見せられなかった涙 それがとめどなく溢れてきた。 ・・・・・いいんだよ・・・・・ ・・・・それが答えなんだよ・・・・・ 「!?」 俺は顔を上げた。 しかし、其処には誰もいない。 だが 窓際に一枚の羽が・・・・ 「・・・・彩音!?」 俺は身を乗り出し、辺りをみるが人影は無い。 「・・・・何だったんだ・・・・」 ・・・・いつもそばにいるよ・・・・ 「・・・へっ、最後までお節介なヤロウだな・・・」 その言葉を思い出し、思わず笑う。 「っと、そろそろ明るくなってきたか、今日も学校か〜、ええ一日が送れるかの〜」 夢の中 でも、はっきりと憶えている。 微笑んで消えていった彩音の姿を 忘れる事の出来ない笑顔だった。 また来年行くよ。 それまでお別れだ。 初恋の人 日向 彩音に捧ぐ (机の上に置かれた写真立てとペンダント、其処には笑う二人の男女がいた・・・) Fin □後書き□ はい、ダークサイドストーリー終結。いや〜、彩音さんは神城君の初恋の相手だったのですねぇ〜(マテ とりあえず、勘違いされてる方がおりますので、一つ。これはあくまで可能性の一つです。 ゆえに本当にあった話ではありませんので・・・。 だから、実際は彩音さんは死んでおりませんので・・・ えっ?何で生かしてるかって?そりゃ・・・・うひゃひゃ・・(壊 まぁそういうことです。(何 よければ、感想など聞かせてもらえると作家意欲がわくかもしれませんので・・。 よろしくです。 最後に、これを読んでいただきありがとうございました。(ペコ) |