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※性描写あり R18
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『・・・・攘夷を名乗ってはいる様ですが、所詮チンピラ同士の抗争です。一応五番隊を出しました・・・・・○○町公民館付近で火事が起
こっている模様です。
消防が出動しています。騒動との関係はまだ不明です・・・・』
フェンスの向こうで、南の夜空のそこだけが蝋燭を灯した様に浮かび上がっている。
夜風に散らされ空をばらばらに舞うサイレンの音。病院の屋上のベンチに腰掛けて、包帯を巻いた体に隊服の上着を肩にかけて羽織り、
土方は口元の煙草の先のそのまた先の朧気な赤い光を眺めながら、携帯電話の向こうから流れて来る隊士の声を聞いていた。
『えっとそれから・・・・・』
忙しなく紙を捲る音がした。
『桂小太郎が出没しているとの情報がありますが、恐らくこれは単なる偶然か、でなけりゃガセでしょう。こんなゴロツキの争いに彼が関わっ
ているとは考えにくいので・・・・・』
「・・・・・ふーん・・・・・」
吐き出した煙がもやもやと眼前の宙を舞い、彼方の炎に交って溶けて行く。
『え、何ですか?ザキが?あ、』
ガサガサと音がして急に沖田の声に変わった。
『土方さん、山崎と連絡が取れない。九時頃あんたの着替えの荷物を届けにそっちへ向かった筈なんだが、何か知らねえか』
「・・・・・ああ、荷物は確かに届いている。だが俺は詰所に預けられていたやつを受け取っただけだ」
『ちょ、お前らあっちへ行っておけ・・・・・ではあいつの行方については知らないんですね?』
人払いをしたらしく、さっきより声がはっきりした。
「知る訳ねえだろ」
しばらく沈黙があった。
『・・・・・土方さん、俺はザキの心配をしている訳じゃねえ。あいつは身を隠すのが上手いし、早々敵に捕まる様なタマじゃねえのは皆が
知っている事だ。
ただここしばらく、あんた達の間で色々あったみたいなんでね、てっきり何か知っているかと思ったんですが。・・・・・
あくまでも知らない、見当もつかないと?』
「そう言っただろ。あと、変な妄想をするのはやめろ」
『ではあいつが帰って来たら、尋問しようと拘束しようと、あんたが居ない間こちらの自由でやってもかまわないんですね?』
土方は口から煙草を離した。
「・・・・・尋問はともかく・・・・・・拘束とは?」
『・・・・・職務怠慢、機密流用、犯人隠匿、何とでも。要は組への背信行為の嫌疑でさあ。俺はね、土方さん、
面倒事はごめんですからノータッチで行くつもりだったんですよ。でもこれ以上火事を見過ごすのもなかなか難しくなって来たって所で。
早めに手を打てればそれだけ被害は少なくて済む。証拠?んなもんありません、ありませんよ。だからこうしてあんたに尋ねてる』
沖田は声を落として更に畳み掛けた。
『分かりますか土方さん、あんた次第なんです。悔しいけれど、背に腹は代えられねえ。組を潰す訳にはいかないんでさあ。
副長であるあんたに俺は精一杯譲歩をしているんですよ』
土方は上向きに短くふっと煙を吐き出した。
「それは総悟、お前だけの考えか」
『今はそうですが、でも、』
「ではお前の胸に秘めておくんだな。悪いが、無い物をあると言い続けられる程俺の面の皮は厚くないんでな」
『・・・・・・そうですか。・・・・・あいつの処断を何よりも望んでいるのはあんただと思っていましたが。だが土方さん、
忘れるな。火の無い所に煙は立ちゃしないって・・・・・その煙がのろしになっちまってからでは遅いんですぜ・・・・』
「馬鹿馬鹿しい」
ぷつりと電話は切れた。
土方は重たげに灰が落ちて短くなった煙草を一口吸った。
彼方の炎は静かに燃え続けている。柔らかい風が吹く度に、目に見えない火の粉がここまで飛んで来る。
ただ土方の乾いた指先、冷たい瞳の中と、ぐずぐずと疼く傷に落ちては消えをいつまでも繰り返す。灰にも燃え滓にもならない、
土方にしか見えない、赤い雪だった。
あの時もそうだった。あの昼下がり、俺はこうして彼を抱き締め溺れていた。長い髪はしっとりと手に重く、体は腕の中でか細く、
互いの震える睫毛が触れて縺れてしまいそうで、暗い路地裏はじめじめとして、涙に濡れた頬も絡めた舌も服の下の皮膚も粘膜も、
何もかもがじめじめと濡れていた。
足音が遠く消えて随分経ってから、ようやく山崎は彼の口の中から濡れた舌をゆっくりと引き抜いた。
糸を引いた唾液が落ちて光る唇、あの時と同じ様に不安定に揺れる瞳、カーテンの隙間から洩れる紺色の光のせいか、
どこか潤んで見える瞳。震えた瞬きに影を落とす長い睫毛。
山崎は髪に深く手を差し込んで、黙って桂の顔を深く覗き込んだ。
桂は顔を逸らせようとする。そうはさせまいと山崎はもう一度唇を強く吸った。
湿気た畳の部屋、湿気た狭い蒲団の上で二人は窮屈に息苦しく何もかもが熱っぽくせめぎ合っていた。
更に首筋、鎖骨へと唇を這わせると桂は苦しげに囁いた。
「山崎、もうこんな事は・・・・・」
「こうなる事を全く想像しなかったとは言わせませんよ」
項から唇を離し、山崎はわざと鋭い目で言葉を被せた。
「俺の望みをあなたは何よりも知ってる筈なんですから」
桂はふうっと息を吐いて、焦りの色を残しながらも精一杯冷静な調子で山崎を見つめ問い掛けた。
「・・・・貴様、男との経験は」
「・・・・ありませんよ・・・・」
「ではやはり此処までだ。これ以上、貴様に道を踏み外させる訳にはいかんからな」
妙にきっぱりとした声だった。
「さあ、もう落ち着いて・・・・」
桂は山崎の体を出来るだけ優しく押し返そうとした。
山崎は桂の手を勢いよく引っ掴み、自身のある場所に押し付けた。そこは熱く固く隆起し微かに湿っていた。びくっとして引っ込めようとす
るのを許さず、
山崎は益々強く触らせて、その大きさと感触を彼にじっくりと知らしめた。
「今夜、こうしてあなたと・・・・っ、居るのに・・・・俺はずっと・・・・こんな、・・・・」
彼の唇からごく微かな息が漏れた。その息は熱かった。少なくとも山崎はそう感じた。山崎はもどかしげにファスナーを降ろし、
今度は下着越しに握らせた。彼の手指の感触を強く感じて山崎は呻き、彼は更に息を零した。彼の手越しにゆっくり揺すると、
手からはみ出さんばかりに更に大きさを増した。唇から洩れる彼の呼吸が僅かに早くなった。その内手の動きは無理矢理では無くなっていた。
目元は潤んで揺れ、同時に彼の呼吸は確実に早く熱くなり、山崎の聞き間違いでさえなければ、声さえ交っていた。
この人は男の雄を握って感じている。
山崎は桂にむしゃぶりついた。
嵐の様に唇を奪い舌を絡め、既に緩んでいた襟元を引き裂かんばかりに押し広げた。
たちまち零れ出た乳首にちゅっと音をさせて吸いついた。
あ、と喘いで桂の整った顔が快感に歪んだ。山崎は夢中で舐め回し舌先を絡みつかせて吸い、もう一つは指で何度も撫で回して愛撫した。
駄目、駄目ぇっ・・・・強く吸い弱く突き、またわざとらしくちゅっと口から放し、素早くもう一つに吸いついた。
はあ・・・・ん・・・・ねっとり濡れて、白肌の上に赤くぷくりと綻んだ乳首、桂は泣きそうな顔で手を口に押し付けて耐えている。
きっと痛い程にじんじんと痺れて疼いている事だろう。
ああ・・・・桂さん・・・・
心の中で感極まった声は荒い息と共に無意識に口から漏れていた。
山崎は乱暴に隊服を脱ぎ捨てた。
そして彼の身につけている物も全て、取り憑かれた様に次々と剥ぎ取っていった。
もう・・・・や・・・・否応無しに全裸にされた桂は頭を振って身悶えた。
髪が敷布の上に乱れて緩い弧を描き、白い肌が暗がりの中で浮かんで影を作りながら揺れた。
まだ怖いのだろうか。逃げ出したいのだろうか。もう何もかも手遅れだと云うのに。
長い髪を唇で払いのけ、覗いた白い耳に押し付けて山崎は囁いた。
「愛しています・・・・・」
目の前の項が震えた気がした。
「・・・・あの夜、初めて会った時からずっと・・・・好き・・・・愛してます・・・・」
何度も何度も囁いて、彼の背中に手を回ししっかりと抱き締めた。汗ばんだ二人の裸の胸がひたと重なった。彼の唇が無防備に半開きになっ
たので、
山崎はもう一度舌を差し入れた。彼は、ん、と細い喉を鳴らして息を飲み込んだ
山崎の雄の先から透明な液が糸を引いて彼の白い腹にぽたりと滴り落ちた。
下帯を剥ぎ取られて剥き出しになった箇所を、帯が纏わりついた腿をこじ開けて、山崎は食い入るように凝視した。閉じようとするのを押さ
え、
指先で一番敏感な部分を揉みしだくと彼はびくんと大きく体を震わせて泣きそうな声を上げるのだった。
山崎は呻いてそこに顔を埋めた。桂は足指を敷布に擦り付けて、ずり上がって逃れようとしたが、山崎は腿を掴んでそれを許さなかった。
舌を絡ませて吸うと彼はたちまち仰け反って応えた。そこが熱く熱く充血する様子を山崎は口いっぱいに感じた。まさか男の雄を咥えて興奮す
る日が来ようとは、
嘗ての自分は夢にも思わなかった。
掠れた喉がひゅうひゅうと鳴る。山崎は気忙しく唾液で指を濡らし、息を殺して出来るだけそっと彼の後ろに侵入させた。
あっ・・・・・
桂の体が揺れた。
「い、痛いですか・・・・・」
壊れ物を扱う様に指先を動しながら山崎は恐る恐る尋ねた。桂は迷う様子を見せてから、たどたどしい言葉を漏らした。
・・・・指の腹で・・・・そう、押し広げる様に・・・・あ、ん、ゆっくりでいいから・・・・あ・・・・撫でて、
・・・・・・もっと奥・・・・
山崎は頭の中が溶けそうになりながら出来るだけ彼の言う通りに行った。
あ・・・・・指・・・・増やしてみて・・・・
やがてすぐに粘膜が柔らかく締まって甘く指を締めつけ始め、そっと抜き差ししてみるとまるで指を愛撫する様に収縮し始めた。
・・・・・あっ・・・・や・・・・あん・・・・
そこで急に山崎は腰をひくひくと震わせると、耐えきれずに射精してしまった。
「あ───っ・・・・あっ・・・・ああ・・・・あ・・・・」
彼の上にぽたぽたと零れて流れて落ちる精液。
山崎は恥入って謝った。
「ご・・・・ごめんなさい・・・・俺・・・・」
桂はふーっと息を吐いた。終わったと思ったのかもしれない。ぐったりと横たわって、所々唾液と男の精に濡れ、
暗がりで見えずとも朱に染まっているであろう裸の肢体を無防備に晒していた。
山崎は何度か呼吸を整えてから、力の無い桂の手を取った。
指に一度キスをして、そろりと足の間に導いていく。
あ・・・・一度達したくらいでは収まらず、直ぐに再び固くなっていたそこをしっかりと握らせた。
「熱い・・・・ですか・・・・」
桂は羞恥に視線を彷徨わせてから、小さく頷いた。山崎は添えていた手をそっと離した。桂の手はその儘だった。
ああそんな事して・・・・
再び桂の体に圧し掛かって山崎は目を閉じた。
「俺は・・・・あなたと・・・・」
うわ言の様な言葉。彼の足を抱え上げ、何度か模索してから足首に唇をつけ、ゆっくりと山崎は彼の中に体を沈めていった。
俺の物が彼を貫いている。二人の粘膜が密着している。
俺は彼を抱いている。
熱い。彼と作りだす熱はとても熱い。
白い首筋に顔を埋めて、山崎は何度も何度も突き入れた。引けば逃さぬとでも言う様に纏わりつき、押せばねっとり包み込んで根元まで咥え
込んだ。
あ・・・・あ・・・・そんなの、駄目で・・・・す・・・・
山崎の声は上擦り、歯ががちがちと鳴る。ゆっくりと動かしたいのに、自分の体がもっともっとと悲鳴をあげている。
彼は自然に腕を山崎の背中に廻して掴まった。山崎は無様に体を震わせ、骨が折れてしまいそうな程に彼を抱き締めた。
自分は今どんなに情けない顔をしている事だろうか。
どこか躊躇いがちな彼の喘ぎ声が心に痛い。
何かもが溶けて溢れてしまいそうで苦しい。
溢れればそれが大きな波となって押し寄せ、腕の中の彼がたちまち飲まれて消えてしまうのではないかと、山崎はそれがとても怖かった。
好きです・・・・桂さん・・・・凄く凄く・・・・好き・・・・愛して・・・・
噛み締める歯の隙間から途切れて迸る愛の言葉に、ともすれば自分自身が、崩れ落ちてしまいそうだった。