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バルダーズゲート2
シャドウ・オブ・アムン攻略記
(その4)


●2007年10月22日(月)・海賊の町ブリンロー(第4章その1)

 第2章、第3章は、アスカトラ市と、その周辺で多彩なクエストを解決する、自由度の高い展開でした。
 それが一転、第4章、そして第5章は、ほぼ1本道の物語になります。
 アスカトラ市でやり残したクエストは、第6章まで持ち越し、ということですね。
 そして、第7章で「シャドウ・オブ・アムン」の物語は幕。
 その後、物語はBGシリーズ完結編の「スロウン・オブ・バール」に続くのですが、そこまで終わるのはいつの日か? 

 とにかく、今日から第4章です。
 「シャドウ・オブ・アムン」の物語のちょうど半分、折り返し地点というところですね。
 つかまったイモエンの救出に至るのですが、物語が急展開を迎える章でもあります。

 アスカトラ市から、船でブリンロー島に旅立つ一行。
 船の旅は、BG1の追加シナリオ「TSC」で、バルダランの島に向かった時以来ですね。
 あの時は、嵐に巻き込まれて難破、という大変な目に合いましたが、
 今回は、優秀な船長さんのおかげで、難破することはありませんでした。
 船長さんの名前は、サエモン・ハヴァリアン。ヨシモと同じ東洋人です。漢字で書くと、「左衛門」になるのでしょうが、セカンドネームの方は、こちらに来てから付けた名前になるのかな? 漢字で無理矢理書くなら、「波巴里庵」? 
 まあ、そんなことを言うのなら、ヨシモを漢字で書くとどうなるかも気になるのですが。「義茂」? 「世志茂」? 案外、芸能プロの「吉本」にちなんだ名前かもしれません。

 名前談義はさておき、サエモンさんのおかげで航海は順調。
 お嬢さまのナリア「早く上陸して、風呂に入りたい」と言っていますが、
 ヨシモなんかは船員からカード賭博でお金を巻き上げて、上機嫌だったりします。
 総じて、楽しい船旅だったということでしょうな。

 ただし、第4章に入る前に流れたマスターシーン(プレイヤーキャラの知り得ない敵の暗躍シーン)で、スペルホールドの収容施設を占拠したイレニカスが、イモエンに対して怪しげな魔法実験を行なっている場面が示されましたので、のんびりバカンスを楽しんではいられません。

 さあ、スペルホールドに向かうぞ! と勇んで上陸すると、船長のサエモンさんが、「すまねえな」と言い出しました。
 そして、周囲を取り囲むヴァンパイアの一団! 

ヨシモ「陰謀アルね。これだから、東洋人は信用できないヨ」

 お前が言うな、とツッコミを入れたくなりますが、プレイヤーのNOVAも東洋人。東洋人が信用できないってのは、自虐ギャグになってしまいます(苦笑)。これだから、洋ゲーってのは……。
 待ち伏せヴァンパイアを撃退してから(この戦闘で、NOVAミンスクヨシモがレベルアップ)、サエモンさんを問い詰めようとしましたが、いち早く逃走していました。これで、帰りは別に船長さんを雇わないといけないなあ、と思いつつ、今はスペルホールドへ行くのが先決です。

 盗賊ギルドの付けてくれた案内役サイムさんの助言では、「酒場で待ち合わせているサニクという男が、スペルホールドへの入り方を知っている」とのこと。では、早速、酒場に向かいますか。
 上陸した港町ブリンローは、海賊がたむろしている物騒なところ。途中で絡まれたりしたので、返り討ちに。力の信奉者である荒くれ者には、こちらも力を示してやるのが流儀、といきなり染まっています(笑)。都会のアスカトラとは違って、物騒な田舎町ではケンカも日常茶飯事で、止めるような衛兵もおりません。

 酒場に入って、サニクに話しかけると、いきなり彼、暗殺されてしまいます。止める間もありませんでした(こんなのばっかり^^;)。
 情報知っている男を殺されたので、一瞬呆然としましたが、「うちの酒場で血を流しやがって」と文句を言いつつも、慌てず騒がず死体処理している酒場のマスターを見ているうちに、こちらも落ち着いてきて、彼から話を聞きます。

 何でも、サニクは、レディ・ガルヴィナの経営する風俗店に勤める女性クレアと恋仲になったらしく、クレアを足抜けさせようとしていたようです。そのため、ガルヴィナの怒りを買って、暗殺されたのだ、と。
 人の命って安いものだね、海賊たちの荒くれ町では。

 「サニクの持っている情報が欲しかったのに」とつぶやくと、

酒場のマスター「サニクはクレアに情報を話していたんじゃないか? クレアなら、ガルヴィナのところにいるぜ。早くしないと、あの娘も見せしめのため殺されるんじゃないか?」

NOVA「それは……何とか止めてみます」

酒場のマスター「おお、健闘を祈るぜ。それから、ガルヴィナの女(アマ)には言っておきな。今度からは暗殺者を送るときは、店の外でやるようにってな」

NOVA「……(暗殺劇が日常茶飯事なんだね、この町)」

 善は急げ! とばかりに、ガルヴィナの風俗店に踏み込みます。ええと、客の振りをして穏便に潜り込む……って選択肢もありましたが、どうも、この堅物主人公がとる行動ではないな、と(笑)。
 ラブコメなら、2枚目半の男主人公が、鼻の下を伸ばして風俗店で情報収集、仲間の女性陣からは「サイテー」と軽蔑の白い眼で見られるのがお約束だったりしますが、本記事では、そういう方向は目指しませんので。
 とにかく正面から堂々と……で、そうなると、実質的に殴りこみ状態になるわけですな(爆)。

 そして、店の奥でクレアを調教折檻している女王さまガルヴィナを、ムチよりも痛いフレイル(!)で殴り倒して、クレア救出。
 郷に入らば、郷に従え。荒くれ者の流儀が、完全に板に付いたようです。これまで悩んでいたのが、何だったんでしょう(苦笑)。

 結局のところ、クレアはスペルホールドへの侵入方法を知りませんでしたが、方法を知っているゴーリン船長を紹介してくれました。
 おお、船長さんと知り合いになれたってことは、帰りの心配もしなくて済みそうです。
 よし、このままスペルホールドへ向かって、イモエンを救出して帰るとしますか。まあ、そう簡単に進むはずもないのですが……。(つづく)

※久々のキャラ紹介まとめ

●主人公NOVA(HP117):人間のレベル11キャバリエ・男性。
 実は、ゲームを始めてから、3レベルしかアップしていなかったりします。やっぱり、高レベルだと、レベルアップも遅いですなあ。
 物語的には、相応に精神的成長を遂げていると思いますけどね。
 武器は、
ナリアの城で入手した「フレイル・オブ・エイジス+3」をずっと使い続けています。攻撃力もさることながら、追加効果で発動する「STなしスロー効果」が魅力です。これがあるため、1対1ではまず負けません。
 防具は、フルプレートを基本に、「シールド+2」と「プロテクションリング+2」で、AC−6という高防御力を実現。
 「ブーツ・オブ・スピード」によって、普段からヘイスト状態になっているのも、強くなっている理由。
 呪文も、2レベル呪文が使えるようになり、敵に気付かれない聖域呪文「サンクチュアリ」と、「ファインドトラップ」を駆使すれば、単独行動罠探知が実現できるようになりました。

●ミンスク(HP102):人間のレベル11レンジャー・男性。
 単純な英雄志向の野蛮人。時々、主人公が悩んでいたりすると、煽るように励ましてきます。
 武器は、サレヴォクの使っていた「混沌の大剣+2」でしたが、最近、アンデッドに対して有効な「メイス・オブ・ディスラプション+1」を入手し、ヴァンパイア退治にも活躍するようになっています。
 防具はあまり充実しておらず、AC−3。「プロテクションリング」を持たない分が、主人公との差かな。 

●ジャヘイラ(HP83):ハーフエルフのレベル9ファイター/レベル12ドルイド・女性。
 パーティーのメイン回復役。6レベル呪文は、完全回復の「ヒール」で決まりですね。
 ただ、現在、欲しいのは4レベル呪文の使用回数。このレベルには、使い勝手のいい防護呪文がいっぱいあるのに、使用回数が少なすぎて、前衛2人に掛けてあげるのがせいぜい。
 ともあれ、この人が行動不能になれば、パーティーの安心度が思いきり減るので、あまり前衛には出さず、飛び道具援護に回しています。メイン武器はスリング+3。

●ヨシモ(HP78):東洋人のレベル10ファイター(元レベル11バウンティハンター)・男性。
 さあ、あと2レベル上がれば、ファイター兼シーフとして大活躍できる……はず。
 でもね、そううまくいかないのが、本作だったりします(;;)。
 
イモエン復帰と同時に、パーティーから離脱する定めの彼。
 武器は、デアルニス城で手に入れた「弓+3」と、「カタナ+2」を使用。
 防具は、戦士に転職してプレートメールを着せていましたが、ウマル・ヒルで、それとほぼ同等の「レザー+5」を入手したので、そちらに着替えさせています。でも、そろそろ離脱に備えて、装備の回収をしないとなあ(笑)。

●ナリア(HP66):人間のレベル12メイジ(元レベル4シーフ)・女性。
 現パーティー唯一のシーフとして、貴重な存在。僧侶呪文でも罠は発見できますが、解除は彼女じゃないとできませんからねえ。鍵開けに失敗しても、「ノック(開錠)」の呪文で、自分で何とかできるのも魅力的。でも、完全にイモエンと役割がかぶっていますので、彼女の復帰によって、存在価値が危ぶまれそう。
 一応、6レベル呪文まで使えますが、戦闘は基本的にAIに任せているので、いまいち使い切れていないですね。AIなら、勝手にマジックミサイル連発してくれますので。
 武器は「ショートボウ+2」で、マジックミサイルが切れたときに、飛び道具撃ってます。
 ただ、NOVAのプレイスタイルは、小まめに休息とるので、呪文切れ状態が珍しかったりするので、なかなか矢が減らなかったりします。甘いプレイだとは思いますけどねえ(苦笑)。

●エアリー(HP49):アヴァリエルエルフのレベル9クレリック/レベル11メイジ・女性。
 魔術師でもあり、僧侶でもある、便利な存在の彼女。
 メインの魔術師としても、もっぱらこちらを使っています。曰く、「ヘイスト」による攻撃支援とか、「ディスペルマジック」による魅了や金縛りの解除とか。
 さらに、エナジードレイン治療の「レッサーレストレーション」とか、復活の「レイズデッド」とか、僧侶呪文でのパーティーサポートも任せています。
 ふだんも、メインの鑑定役とか、呪文の巻き物管理とか、に使用。まあ、そちらは将来的にイモエンに任せる予定ですが。

 

●2007年10月23日(火)・再会と離別(第4章その2)

 スペルホールド。
 それは、カウルド・ウィザードたちがブリンロー島に設けた収容施設です。アスカトラの街で魔法を乱発した者、および社会にとって危険と見なされた異常能力者を隔離するための場所。
 そこに捕らえられた幼なじみのイモエンを救出するために、主人公たちは度重なる冒険を重ねてきたわけですな。

 公権力の管理の枠外にある超法規集団であるカウルド・ウィザードたち。
 彼らに近づくためには、結局、合法的な組織では埒(らち)が明かず、裏稼業のシャドウ・シーフの手を借りることになりました。
 このことは、潔癖な主人公の心に影を残すことになります。
 その反動からか、ブリンロー島に着いた主人公は、荒くれ者ぞろいの島の流儀にたちまち馴染み、直接的な暴力で事態を解決することを辞さなくなりました(苦笑)。

 そして知り合ったゴーリン船長から、スペルホールドへの侵入方法を聞くことができました。

 1つ。町を仕切る海賊のボス、デシャリクと話して、「自分が異常者だと認めさせ、スペルホールド収容の手続きをとること」。すなわち、精神病院に入るには、精神病患者になったふりをしろ、ということですな。

 2つ。町に一人だけいるカウルド・ウィザードのバースと接触して、連れて行ってもらうこと
 こちらの方が、正攻法といった感じですな。

 今さら、策略を巡らせるのは主人公の流儀ではないので、後者を選択します。

 しかし……、

バース「ヒヒヒ、お前がNOVAだな。おとなしく、我に従え。ご主人さまがお待ちだ。お前を連れて来いとな。わしといっしょにスペルホールドに来るのだ、グヘヘヘヘ」

エアリー 「こ、この人、ちょっとおかしいよ。どうする?」

NOVA「おかしいのは確かだが、スペルホールドへ連れて行ってくれるのは、ありがたい。おとなしく従おう」

バース「何、逆らうだと? やはり、ご主人さまが言ったとおりだな。NOVAが逆らうかもしれないと」

NOVA「おい。人の話を聞いてくれ。おとなしく従うって言ったじゃないか」

バース「口答えをするとは、けしからん。わしの魔力で黙らして、連行してやるわ。全ては、ご主人さま、イレニカス様のために……」

NOVA「!」

 何だかイッちゃっている魔法使いとの話し合いもままならず、結局、力に頼ることになります。合掌。

ヨシモ「こいつ、通行証代わりのワードストーンを持っていたネ。これで、スペルホールドに行けるんじゃないカ?」

NOVA「ああ。こいつ、イレニカスがご主人さまだと言っていた。スペルホールドで何が起こっているんだ? 気になる、急ごう」

 町の外で、シャドウシーフの案内人サイム嬢と落ち合います。彼女は、バックアップを約束して、町に残ります。
 我々だけでスペルホールドへGO!

 おお、そこでスペルホールドの外観を描写したCG映像が流れます。何だか、緊迫感が漂ってきました。
 途中で立ちはだかるモンスターを一蹴して、それからヨシモの装備品から貴重なマジックアイテムを回収して(笑)、いよいよスペルホールドの収容施設に入ります。

 出迎えてくれたのは、コーディネーターという施設案内人。
 思わず、「青き清浄なる世界のために」とブルーコスモスっぽく、つぶやきたくなりますな(笑)。

 コーディネーターさん、「お待ちしていました」とにこやかに語りかけます。「お連れのイモエンさんの件ですな。それについて、あなたとじっくり話し合いたい、と思っていたのですよ。まあ、あなたのことですから、いずれ、ここにたどり着く、と確信していましたがね」

NOVA「こちらの状況に、ずいぶん詳しいようだな」

コーディネーター「それはもう。私どもにも、情報を得る手段はございます。そして、あなたの知らない事実についても、情報を提供したい、と思っているのですよ。まずは、この施設をご案内しますので、どうぞ、ついて来て下さい」

 こうして、いろいろ案内してくれるのですが、完全に精神病院になってますな、ここ。
 制御できない魔力の暴走で、精神的におかしくなった人たちが、いろいろいる中で……

イモエン「……からっぽ……あたしのなか、からっぽなの……」

NOVA「お、おい、イモエン。どうなっているんだ?」

イモエン「あなた、だれ? しらないわ」

NOVA「ぼくはNOVAだ。しっかりしろ!」

イモエン「いや、こないで。あたしに、さわらないで」

 せっかくの再会なのに、拒絶されてしまいました。シクシク。

NOVA「これはどういうことだ? 彼女に何をした?」

コーディネーター「おや、これは人聞きが悪い。彼女は、自分の魔力を制御できず、こうなったのですよ。私どもは、保護してあげているのです」

NOVA「下手な芝居はやめろ、イレニカス。ここが、お前に占拠されていることは、先刻承知の上だ。外道照身霊破光線を使うまでもない」

コーディネーター「ほう、そうですか。さすがは、バルダーズ・ゲートの危機を救った英雄と申し上げましょうか。それでは、私も正体を明かすとするか。しかし、そなたに情報を提供したい、というのは本心でな。いきなり、殴りかからないでもらいたいものだな」

NOVA「それは、お前の返事次第だ。イモエンを元に戻せ。そして、2度とぼくたちに構うな。望むことはそれだけだ」

イレニカス「こちらの用事が済めばな。私が、そなたの邪神の力に興味があることは、分かっているな」

NOVA「だったら、イモエンは関係ないだろう。ぼくに用事があるなら、彼女に手を出すべきじゃなかった」

イレニカス「いや、彼女の力も十分、私の目的にかなうものだったよ。そなたは知らなかったのか?」

NOVA「何がだ?」

イレニカス「彼女は、そなたの幼なじみだったな。そして、そなたと同様、出生の不確かな孤児だ。共にキャンドルキープに隔離され、ハーパーズのゴライオンの監視下にあった。ここまで言って、推測できないか?」

NOVA「ま、まさか……」

イレニカス「そのまさかさ。イモエンもまた、バールの子なのだよ。もっとも、神の力の精髄は、我が魔力で吸い尽くしたがね。そこにいるのは、魂の半分を奪われた抜け殻に過ぎない。もっとも、人としての意識はいずれ回復するだろうがね。時間の問題だ」

NOVA「イモエンが、バールの子だって? そんなバカな」

イレニカス「……本当に、疑いもしていなかった表情だな。確かに、そなたの影に隠れて、彼女の存在は目立つことがなかった。彼女本来の性格も、邪神の闇を寄せつけなかったようだしな。私も、あらゆる可能性を疑ってみなければ、彼女の力を見落とすところだったよ。つまりは……思いがけぬ収穫というところだな。そなたののおかげで、我が妹の魂も潤されることとなったわけだ。これも……一つの大いなる運命といったところかな」

NOVA「い、一体……お前は何をする気なんだ?」

イレニカス「そなたからも、バールの精髄をいただく。そうすれば、そなたの役割は終わりだ。あとは……望みどおり、解放してやろう。そなたは残り少なくなった余生を、人として静かに暮らすがいい。邪神の遺した力の玉座には、そなたに代わって、私が就くことになろう」

NOVA「バールの力など、ほしいならくれてやる! だが、お前はそれを使って、何をするつもりだ?」

イレニカス「邪神の死と破壊の力を使って、何をするか? か。面白い質問だな。そなただったら、どうする? 法と正義のため、と言うのかな? それもいいだろう。我が魔力と、神の力が合わされば、強大な帝国も築けような。さすれば、私が法を定め、正義を司り、理想の世界が実現する。神聖イレニカス帝国、とでも名付けようか? ハハハハハ」

NOVA「そんなことが実現すると思うのか?」

イレニカス「実現させるには、確かに邪魔者が多いな。アムンしかり。南のテシール、そしてカリムシャンしかり。北のバルダーズ・ゲート、そのさらに向こうのウォーターディープ。世界は広い。戦争は避けられないだろう。もちろん、そのためのバールの力だ。死と破壊の力をもって戦に勝利し、新たな法と正義の概念を確固たるものにする。壮大なロマンだよ、これは。個人の平穏だけを求める小物には理解できないほどのな。お前の兄サレヴォクも、それを望んだのではないか?」

NOVA「……お前がサレヴォクと同じで、野心のために多大な犠牲をともなう、戦いの道を進むというのなら……ぼくはそれを止めなければならない。呪われた邪神の力だろうと、くれてやるわけには行かないようだ」

イレニカス「そう言うと思ったよ。全ては計画どおりだ。そうだな、ヨシモよ」

ヨシモ「……イ、イエス、マスター・イレニカス。計画どおり、事は運びました」

NOVA「ど、どういうことだ、ヨシモ?」

ヨシモ「船の上でネ……みんなの食事に、遅効性の痺れ薬を仕込ませてもらったアルよ。そろそろ効いてくる時間のはずサ」

NOVA「そんな……」

ジャへイラ「裏切ったと言うの? ゆ、許せない! 今度会ったら……(意識を失って倒れる)」

エアリー 「う、ウソでしょう? あなたが裏切るだなんて……(同じく倒れる)」

ナリア「お、同じだわ。私が捨てた、汚い貴族どもの権謀術数と……(倒れる)」

ミンスク「ミンスクは裏切り者を許さない。ブゥも許さない。なあ、ブゥ(チューチュー) ほら、ブゥもそう言って……(ブゥを大きな手の平にそっと包み込みながら、倒れる)」

NOVA「く、どうしてだ、ヨシモ? 君を戦士に転職させたことを、まだ恨んでいるのか? あと、経験点を30万点ほど稼いだら、もう一度、盗賊の技を使えるようになるじゃないか?」

ヨシモ「そんなこと、関係ないアル。恨みつらみで殺す気なら、あんたが眠っているときにいつでも殺れたヨ。全てはマスターとの契約サ。あんたを、マスターの元に連れ帰るっていうネ」

NOVA「契約だって? どうして、イレニカスなんかと。冒険の間に生まれた絆があれば、そんな契約なんて……」

ヨシモ「ああ、お人好しな聖騎士といっしょの旅は、楽しかったヨ。でもネ、契約は果たさなければならない。いくら説明しても、あんたは納得してくれないだろうけど……(NOVAの背後に回り、短剣の柄で後頭部を打つ)オ・ヤ・ス・ミ」

NOVA「ヨ、ヨシ……(昏倒する)」

 イモエンとの再会もむなしく、こうして離別することとなったヨシモ
 彼の裏切りによって、NOVA一行は、イレニカスの虜囚となったのでした。

 急転直下の展開に、プレイヤーとしても非常に面白くプレイしている段階だったりします。じっさいのプレイでは、すでに相当、話を進めていて、リプレイ記事を書く時間がもどかしいぐらい(笑)。
 ともあれ、この第4章は、ストーリー密度がかなり高い章なので、記事も一気に書きなぐるのではなく、ゆっくり料理していければ、と思っています。(つづく)

 

●2007年10月24日(水)・悪夢の先に(第4章その3)

 イレニカスが、NOVAの中から邪神バールの精髄を奪い取ろうとしている間、昏睡したNOVAの意識は夢の世界にありました。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

NOVA「ここは? ぼくはどうなったんだ?」

イモエンの声「ここは、あなたの心の世界。お願い。あたしのところまで来て。そうすれば、解放される」

NOVA「イモエン? どこにいる?」

イモエンの声「城の中に、あたしは囚われている。あたしも、あなたも一人じゃ脱出できないけれど、二人で力を合わせれば……」

NOVA「分かった。城だな。すぐに行く」

 荒野の先に、城はありました。
 そして、城門には一体のデーモンの姿が。

デーモン「ここより先は、犠牲なしには進めぬものと知れ。汝は何を差し出すか? 力か、機敏さか、知性か、それとも知恵か?」

 ええと、このデーモンを突破するには、能力値1点を減らさなければならないみたいです(シクシク)。
 聖騎士にとって一番不要な能力値は、知性すなわちインテリジェンス。12点が、11点になります。

 城に入ると、そこにはイモエンがいました。

イモエン「来たわね。よく聞いて。城の外にバールの化身がいるわ。そいつをここまで連れて来てほしいの。外で戦ってはダメ。一人では勝てない。あなたと、あたしが協力しないと、あいつは倒せないのよ」

NOVA「ここまで、おびき寄せればいいんだな」

 城の外に出ると、恐ろしい姿をしたバールの化身が。
 すぐに、こちらを追いかけてきますので、急いで城の中に引き返します。イモエンのところまで連れてくると、

イモエン「あたしの魔力で、奴の防護は中和された。今よ、NOVA。戦って」

NOVA「任せてくれ。ウォォォオオオオオオ!」

 気合を込めて、バールの化身に挑みかかります。そして、化身を打ち倒すことで、現実世界で意識を取り戻したNOVA

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

イレニカス「バカな。施術の最中に意識を取り戻すだと? このような反応は初めてだぞ」

NOVA「む、イレニカス。お前のまやかしは打ち破ったぞ。観念しろ」

イレニカス「たかが意識を取り戻しただけで、何を勝ち誇っている? おまえの中の魂の精髄は、すでにあらかた奪い尽くしたわ。もう一度、眠るがいい」

 イレニカスの魔法実験室。
 謎のカプセルの中に囚われたまま、何もできないNOVAは再び意識を失い、視界が暗転します。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
 
 やがて、意識を取り戻したNOVA
 そこは謎のダンジョンの中。
 仲間……そしてイモエンの姿もあります。

NOVA「イモエン! 大丈夫か? 記憶は取り戻したのか?」

イモエン「ああ、NOVA。来てくれたのね。あたしは……あまり大丈夫とは言えない。気分がボーっとして、意識を保つのが大変なの。イレニカスが、あたしの中の何かを奪ったせいね。体がどんどん弱まっていくような感じだわ」

NOVA「しっかりしろ。夢の中と同じだ。二人で協力すれば、どんな邪悪にだって打ち勝てる」

イモエン「夢の中? 何の話? あなた……イレニカスの実験で、あたしと違うものを見たのね。体は大丈夫? イレニカスはあなたからも奪ったはずよ」

NOVA「あ、ああ、そう言えば、何かを失ったような気が……」

 ええと、主人公の特殊能力がいろいろ使えなくなっていますなあ。
 回復呪文とか、自己増強呪文の「ドロウ・アポン・ホーリーマイト」とか。
 もっとも、パラディンとして成長しており、1、2レベルの僧侶呪文なら使えるようになっているので、さほど問題ないんですけどね。

NOVA「大したことはない。冒険の支障にはならないさ」

イモエン「そう? あたしも何とか、がんばってみるわ。もう一度、いっしょに連れて行ってくれる?」

 「仲間はもういっぱいだ。お前は一人で状況を乗り越えるんだな」……なんて無体な選択肢もありますが(苦笑)、ヨシモが離脱した以上、イモエンが加入してくれないと困ります。喜んで、仲間に迎えますよ。

●イモエン(HP67):人間のレベル11メイジ(元レベル7シーフ)・女性。

 別れたときのレベルが9だったので、少しは成長しているようですね。
 ただ、経験点は50万点弱。
 自分たちが、ほぼ100万点近くあるので、少し弱いってところでしょうか。
 同じメイジのナリアがレベル12だったりするので、やや未熟。その分は、より優れた盗賊技能で、パーティーに貢献してもらうとしましょう。
 それから、入手したスクロールなんかは、今後、イモエンに最優先に与えて、呪文をしっかり覚えてもらわないといけません。

NOVA「他のみんなは無事なのか?」

ジャへイラ「ええ。イレニカスは私たちを監禁していただけ。あの裏切り者以外は、全員ここにいるわ」

ミンスク「ブゥも無事だ。エアリーも、ナリアも無事。今度はミンスク、魔女を失わなかった」

ナリア「あなたがイモエンね。NOVAの幼なじみと聞いているわ。それとも、妹になるのかしら? あの邪悪な魔法使いは、そう言っていたわね、確か」

イモエン「あなたは?」

ナリア「ナリア。元デアルニス侯爵令嬢よ。NOVAの冒険に興味惹かれて、城を捨てて、ついて来たの」

エアリー「私はエアリー。クァイルおじさんの勧めで、NOVAの旅に同行している」

イモエン「え、ええと、よろしく。(NOVAに)しばらく会わない間に、手広く交際を広げたわね」

NOVA「ああ。彼女たちには、いろいろ助けられたよ」

イモエン「新しい仲間が、女の子だらけって、どういうことよ?」

NOVA「どういうこと……って、もいたさ。裏切られたけどさ」

 ミンスク以外は、娘だらけのハーレムパーティー(苦笑)。
 いや、いっそのことミンスクもお払い箱にして、マジーを入れれば、真ハーレムパーティーが完成しますね。女性キャラだと、ドロウのクレリック・ヴィコニアを入れるって選択肢もあるけど、彼女、性格が邪悪なもんで、主人公とは相容れない、と思いつつ。
 まあ、第6章までは、パーティーキャラの変更ができないので、当面はこのパーティーで続けるしかないんだけど。

 ともあれ、この後、深刻なストーリーが続くので、少しはラブコメ要素も投入したくなっているプレイヤーNOVAです。(つづく)

 

●2007年10月24日(水)・スペルホールドのダンジョン(第4章その4)

 イレニカスに邪神バールの精髄を奪われたNOVA
 しかし、監禁状態からは解放され、正気を取り戻したイモエンも含め、仲間たちとの再会を果たすことはできました。

 そのとき、ダンジョン内に聞き覚えのある声が響き渡ります。

女の声「全員、意識を取り戻したようね」

NOVA「その声は……女吸血鬼のボーディ。やはり、イレニカスの手下だったんだな」

ボーディ「お兄さまの手下になった覚えはないわ。同盟者と言ってもらいましょうか、力を失ったバールの息子さん

NOVA「そんな呼称はやめろ。ぼくの父は、亡きゴライオンだ」

ナリア「……つまり、ボーディ、あなたがイレニカスの妹ってことね。私たちを牢から出してくれるなんて、どういうつもり?」

ボーディ「お兄さまからは、すぐに殺せ、と言われたんだけどね。それじゃ、面白くないじゃない? だから、ちょっとしたゲームをしてみたくなったのよ」

NOVA「イレニカスは、ぼくから力を奪えば、解放すると言っていたぞ。その約束はどうなるんだ?」

ボーディ「バカね。お兄さまが約束なんて、守るはず、ないでしょう? そんな風に、すぐに人を信じてしまうから、あっさり捕まってしまうのよ」

NOVA「くっ……」

ジャへイラ「……なかなか痛いところを突いて来るわね」

イモエン「それで、ゲームって何をするの?」

ボーディ「……ああ、あなたがバールの娘ね。あなたの魂の精髄は、堪能させてもらっているわ。すごく力が満ちあふれて、最高の気分よ。あなたさえ良ければ、お礼をしてあげましょうか? あたしの口付けを受けて、闇の世界に身を堕とすつもりはあるかしら?」

イモエン「断るわ。あたしは……あなたの下僕の吸血鬼になんて、なりたくない」

ボーディ「フフ、冗談よ。冗談。……もっとも、あなたがゲームに生き残れば、冗談じゃなくなるかも。強い娘には、興味があるしね。ゲームのルールは簡単。このスペルホールドのダンジョンから無事に脱出すること。もっとも、その可能性は低いけど。無事に出られたら、その時、会いましょう。じゃあね」

 こうして、ボーディに仕組まれたゲーム「スペルホールド・ダンジョン脱出行」が始まるのでした。

 さて、このダンジョン、いろいろ仕掛けが施されていて、なかなか面白いゲームだったんですが、ダンジョン攻略をじっくり解説していても、ストーリーが進みません。
 攻略サイトなら、リドル(謎々)の答えとか、仕掛けとか、一通り書くところなのでしょうが、その辺はいろいろ割愛して、大まかな感想のみ。

 まず、リドル(なぞなぞ)が多すぎ。
 数えてみると、28問もありましたよ。
 それらを解いてみると、アイテムが手に入るので嬉しいです。
 アイテムいっぱい手に入れて、キャラ強化がしっかりできるわけですから、このゲームを用意してくれたボーディ様々ですな。悪の与えた試練を乗り越えることで、正義の味方が成長する話ってのは、よくありますが、このダンジョンは正にそう。

 とりわけ、ミンスク
 ドゥーム・プレート+3という鎧を手に入れて、主人公と同じAC−6になった他、「ブーツ・オブ・スピード」をもう一つGETできたので、主人公同様、常時加速状態で、ますます頼れるツートップ・パートナーになりました。

 他にも、「麻痺避けの指輪」とか、「呪文反射のマント」とか、アイテムが100個収納できる「ホールディング・バッグ」とか、冒険を楽にさせるアイテムの宝庫です。
 何て、ありがたいダンジョンなんだ(笑)。

 もちろん、ハイリターンってことは、それだけハイリスクだったりもして、仕掛けられたトラップの中には巧妙なものもありました。印象的なのは、2つ。

 1つ。吊り天井の罠。
 この罠に引っ掛かると、即死します。
 まあ、どれほど致命的な罠でも、見つけて解除すれば無害な物になります。おまけに罠解除によって経験点も入りますから、罠があるって分かっていたら、盗賊に調べさせればOKってことですね。
 吊り天井の罠だって、発見は容易です。たちどころに、あ、罠、発見♪ となるのです。
 問題は、解除の方。
 発見したら、解除したくなるのが、盗賊の本能、あるいはゲームプレイヤーの心理ってやつです。
 そこで、罠解除のコマンドを入力すると……罠のところまでノコノコ歩いて行って、吊り天井でグシャ(;;)。
 ……ええと、罠解除のために、その通路に入ると即、罠が発動しますので、実質、解除できないッポイです。
 どうも正解は、その通路を使わずに回り道をすれば良い、みたいですな。
 でも、発見だけできて、解除できない罠ってイライラします。
 もしかすると、巧みな解除の方法がないか、とあれこれ模索して、時間を浪費しましたよ。
 そのたび、罠を外しに行ったイモエンがグシャっとペチャンコに。ごめんよ、イモエン。結局、あきらめるまでに、5回は殺しちゃったかな(苦笑)。

 もう1つ。アンバーハルクの奇襲。
 一見、空っぽの部屋。しかし、部屋の中ほどに足を踏み入れると、突然、鉄格子が落ちて、パーティーが分断されます。そして、いつの間にか、アンバーハルクに囲まれた状態に! 
 ええと、NOVA1人に対して、アンバーハルクが3体がかりでタコ殴りにして来ましたよ。何てひどい、DM(ダンジョンマスター)なんだ〜、と文句を言いたくなりました(^^;)。
 リセットして対策を練ります。
 その結果、モンスターサモニングで召喚したモンスターを先行させることで、パーティーの分断を避け、現われたアンバーハルクを半数ずつ各個撃破することに成功しました。

 ……といった感じで、一部、イヤらしい仕掛けもございましたが、クイックセーブ&ロードの駆使できるコンピューターゲームなので、その難関をどう切り抜けるか、知恵を巡らせるのが楽しかったりします。

 登場するモンスターも、マインドフレイヤーやビホルダーといった強敵も含めて、多彩なメンツ。まあ、さすがにビホルダー軍団といった厳しい状況ではありませんでしたので、労せず撃退できました。

 そうして、3階層あるダンジョンの出口近くで。

ボーディ「ここまで来られるとは、思ったよりもやるじゃない?」

NOVA「自ら、おでましとはな。無事に脱出できたら、見逃してくれるんじゃなかったのか?」

ボーディ「そんな約束はしていないわ。それに……むざむざ逃げられちゃ、お兄さまに申し訳が立たないしね。ここで死んでもらうわ」

NOVA「死ぬのはお前だ!」

 その瞬間、NOVAの心に、突如として激しい怒りの衝動が湧き上がった。
 その怒りはたちまち、NOVAの意識を深い闇に塗り替え、肉体をも邪悪な姿に変貌させていった。

 破壊の権化スレイヤーの誕生である。
 スレイヤーと化したNOVAは、一声、凶暴な咆哮を上げると、ボーディと彼女の配下のヴァンパイア群団に襲い掛かった。
 その力は圧倒的で、たちどころにしてアンデッドどもの呪われた生を駆逐していった。

ボーディ「これはどういうこと? バールの力はお兄さまに奪われたはず。それなのに……この力は一体? 急いでお兄さまに報告に行かないと……」

 配下の者が全滅し、自らも傷ついて、アンデッドには稀な恐怖心に駆られたボーディは、ガス状体に姿を変えて、その場を撤退しました。
 後に残ったのは、異形のモンスターと化したNOVAと、そして、その変貌に動転した仲間たち。
 殺戮の本能に支配されたNOVAは、仲間をそれと認識することなく、次なる犠牲者を求めて、襲い掛かったのです。(つづく)

 

●2007年10月25日(木)・暴走と苦悩(第4章その5)

 エヴァンゲリオンの暴走か、はたまた原作版デビルマン? をも思わせる、
 殺戮魔獣形態スレイヤーと化した主人公NOVA

 イレニカスの妹で吸血鬼のボーディは撤退させたものの、そのまま勢いあまって味方にまで攻撃を仕掛けてくる始末。

 しかし、このスレイヤーにも欠点がありました。
 それは……、

 扉が開けられない! 

 よって、部屋の扉を閉めて、中に引きこもれば、パーティーは安全だ、と(笑)。
 これがホラー映画なんかだと、扉をガンガン打ち破って、逃げ道を失った者たちが絶体絶命のピンチに! ってサスペンス溢れる展開になるんですけどねえ。まあ、ゲーム版『バイオハザード』のゾンビでも、扉を閉めさえすれば、大体、安全は確保できるわけですが。

 じきに変身時間が切れて、元に戻る主人公

NOVA「一体、今のは何だったんだ? まったく抑えることができなかった……」

 主人公が平静になったのを察して、部屋から出てくる仲間たち。

ジャへイラ「さっきのは何? イレニカスの魔術実験の副作用?」

ミンスク「あれほど凶悪な怪物を見たのは初めてだ。(チューチュー) ブゥも知らない、と言っている」

イモエン「あれは……バールの化身スレイヤーよ」

NOVA「知っているのか?」

イモエン「イレニカスに見せられた幻影の中に登場したの。あんな物が自分の中に潜んでいるなんて……恐ろしかったわ」

NOVA「しかし、バールの精髄はすでに奪われたはずだ。どうして……?」

イモエン「……分からないわ。でも、NOVAがああなった以上、あたしもいつ、ああなるか……」

ナリア「NOVA。あなたは正義感あふれる高潔な騎士のはずだった。でも、あんな化け物になるなんて……これから、どう付き合っていいのか、分からなくなったわ」

NOVA「ナリア……」

エアリー「正直、私も怖い。でも……悪いのは、イレニカスでしょう? あいつを倒せば元どおりに戻るはず。そうじゃないかしら?」

NOVA「そうだろうか? あれがバールの化身なら、あれはぼくの中にあるもので、イレニカスとは関係ないと思う」

イモエン「……そうね。ボーディにも予想外の出来事だったみたいだし。イレニカスの実験は、NOVAには何か、思いがけない副作用をもたらしたのかもしれない」

ジャへイラ「考えたくはないけど……ガルバリーが、NOVAを拘束しようとしたこと、正しかったのかも知れないわね。あんな化け物が世に放たれることは、阻止しないといけないわ」

ミンスク「ジャへイラ、何てことを! NOVAを閉じ込めておけ、と言うのか?」

ジャへイラ「NOVAがあれを抑制できないなら、ね。それと、イレニカス。あいつもNOVAから力を奪ったなら、スレイヤーになる力を受け継いでも、おかしくない」

NOVA「そうだな。ぼくたちは、イレニカスを止めなければならない。そして、ぼく自身も……。ナリア、今夜、寝るときは、ぼくだけ別の部屋にする。君は外から、魔法の鍵で封鎖してくれ。眠っている際は、抑制のたがが外れるかもしれないんだ。気が付けば、仲間を殺していた、なんてことにはなって欲しくない……」

ナリア「分かったわ。……イモエンはどうするの?」

イモエン「あたしもNOVAといっしょに……」

NOVA「いや、それは危険だ。ぼくはスレイヤーになったが、イモエンはなっていない。イモエンが殺される危険は十分にある。ぼくは一人だけにしてくれ」

ナリア「それなら、イモエンのために、もう一部屋ね」

ミンスク「……仲間に対して、ちょっと冷たくないか?」

ジャへイラ「それでも、賢明な処置だわ。バールの力は、思っていたよりも恐ろしいんだから」

エアリー「……みんな、どうしたのよ? ヨシモは裏切るし……、NOVAは怪物になるし……、そのうえ、みんながみんな、疑心暗鬼に陥っている。こんなのイヤだよ。NOVAクァイルおじさんの言葉を思い出して」

NOVA「……確か、『自分の中の光を信じ、誘惑する闇を貫き、心の戦いに打ち勝つ』だったな。なるほど、今が、本当にその時かもしれない」

 その夜。
 悪夢の中で、自分を制御できなくなったNOVAは再び、スレイヤーに変身。
 幸い、監禁されていたため、犠牲は出さずに済みましたが、自己嫌悪の想いにさいなまれます。

ミンスク「大丈夫か、NOVA?」

NOVA「ああ、今は大丈夫だ。おかげで、スレイヤーの出てくる前兆は分かった気がする。今後、危険な状態になったら、警告ぐらいはできるだろう」

ジャへイラ「それは一歩成長ね。少なくとも、不意討ちだけはされなくて済みそうだわ」

イモエン「あたしの方は、何もなかったわ。ただ、胸の奥にポッカリ空いた穴みたいなのは、埋まらないけど……」

NOVA「穴……というのとは、ちょっと違うな。むき出しになった闇……と言うのかな。それが力を蓄えて、吹き出そうとしている感じだ。今は静まっているけどね。前は、そんな闇を感じたとしても、ほんのささやかな物で、大して気にも留めていなかったんだが……」

ミンスク「ああ……何を言っているか、よく分からん。ブゥ、分かるか? (チューチュー) うむ、なるほど、そうか。ブゥが言うには、闇の暴走を抑える制御能力がイレニカスに奪われたのでは? だそうだ」

NOVA「! 本当に、ブゥがそんなことを言ったのか? いや……信じていないわけではないんだけど。つまり、イレニカスがバールの精髄を奪った際、そこに秘められた力の制御機能まで奪ったとするなら……それをイレニカスから奪い返せば、事態は解決するな」

イモエン「それって……信じていいの?」

ミンスク「もちろんだ。ブゥはいつだって正しい。何しろ、偉大なミニチュア・ジャイアント・スペース・ハムスターだからな」

ジャへイラ「……とにかく、イレニカスを倒すことが、状況解決の糸口ってことは間違いなさそうね。望むところだわ」

ナリア「あいつを倒せばいいのね。そこまでは、付き合うわ。他に、することもないしね」

エアリー「NOVAクァイルおじさんの言葉を大切にするなら、私もNOVAを助けるよ」

 ということで、ブゥのおかげで(笑)、崩れかけた結束を取り戻したパーティー。
 いやあ、自分で書いていて、どうなるかと思いましたよ。それだけ、主人公のスレイヤー化ってインパクトのあるイベントでしたから。

 次回、スペルホールドにおけるイレニカスとの決戦です。(つづく)

 

●2007年10月29日(月)・スペルホールドの決戦(第4章その6)

 主人公が暴走してバールの化身スレイヤーと化す、というアクシデントはあったものの、スペルホールドのダンジョンからは何とか脱出を果たした一行。

 暴走を止めるキーがイレニカスにあると考え、先を急ごうとしますが、

サエモン船長「よう。先達(せんだ)っては、悪いことをしたなあ」

ジャへイラ「あんた、裏切り者! 何しに来たわけ?」

サエモン船長「裏切り者とは、人聞きの悪いことを言わないでくれよ。俺さまの仕事は、あんたらをこの島に無事、届けること。そこまでは、きちんと果たしたぜ。文句を言われる筋合いはないと思うが」

ジャへイラ「何を、いけしゃあしゃあと。吸血鬼どもに、私らを待ち伏せさせていたくせに……」

サエモン船長「それはよう。島に着いてからの仕事は、別件ってことだ。仕事は一つ一つ、きちんと片付けないとなあ」

NOVA「それで、今回はどんな仕事をするつもりなんだ?」

サエモン船長「ああ……俺さまにボーディが命じたのは、『あんたらを止めろ』ってことだがな」

ジャへイラ「止められるものなら、止めてみなさい!」

サエモン船長「いや。止められるわけがないから、止めないさ」

ナリア「何よ、それ? あなたはボーディの手下じゃないわけ?」

サエモン船長「俺さまは誰の手下でもないぜ。ただ、生き残るために、優勢な方につく。それだけだ」

ナリア「呆れた。忠義心とか、誠実さとかは持ち合わせていないのかしら?」

サエモン船長「俺は騎士でも、サムライでもないからな。ただの冒険商人(マーチャント・アドベンチャラー)、そして熟練の船乗りにすぎない男に、忠義心なんてものを期待されてもなあ。おっと、戦いもゴメンだぜ。ボーディは、俺に本来の仕事外の用件を押し付けやがった。よっぽど、慌てていたんだろうさ。いつも冷静な、人を小バカにしたようなあの女が、顔面蒼白になっていたのは、おどろきだよ。おっと、吸血鬼だから青白いのは当たり前って言うなよ、ありゃあ、恐怖で血相が変わっていたんだ。間違いねえ。あんたら、一体、何をしでかしたんだ?」

NOVA「……何でもいい。ぼくたちは、イレニカスに用事がある。長話で時間稼ぎをするつもりなら、とっとと消えてくれ。付き合うつもりはない」

サエモン船長「へへ。イレニカスかよ。やめておいた方がいい。あいつの魔法に挑むには、ちょっとした軍隊でも連れて来ないとなあ」

NOVA「警告なら、ムダだ。ぼくたちは、どうしてもイレニカスを止めないといけないからな」

サエモン船長「俺さまのは警告じゃなくって、忠告だ。このまま連中に従っていても、使い捨てられるだけしな。あんたらを応援した方が、生き残る目がありそうだ。イレニカスを倒すには……そうだな、軍隊でなくても、大勢の強力な魔術師の力とか……?」

ジャへイラ「そんなに大勢の魔術師がどこにいるって言うの?」

サエモン船長「ここは、スペルホールドだぜ。魔術師たちの隔離場だ」

イモエン「監禁されている魔術師がいっぱいいるわ」

サエモン船長「狂人たちを一致団結させられるかは、知れたもんじゃないがな」

 そう言って、サエモンはその場を立ち去ります。いつも、神出鬼没な男ですな。
 彼の助言に従い、イレニカスの実験室に行く前に、スペルホールドに監禁された多くの魔術師を牢から解放し、イレニカス打倒作戦を提案する主人公。虐待を受けていた囚人たちは、作戦参加を承諾してくれます。

 これを行なわなければ戦うことすらできず、イレニカスに会った途端にゲームオーバーになってしまいます。
 囚人たちを扇動して、ようやく決戦に持ち込めるわけで。
 そして、イレニカスの実験室にて。

イレニカス「一体、これはどういうことだ? 狂人どもをまとめて、私に刃向かわせるとは!」

NOVA「イレニカス、お前は多くの者の恨みを買っているんだ。その報いがこれだ」

ミンスク「そうだ。これは復讐のための戦いだ。ダイナヘールの仇、今こそ果たすときだ!」

ジャへイラ「復讐……そうね、復讐よ。夫カリードの恨み、晴らしてみせるわ」

イレニカス「ハハハハハ。人々を殺戮に駆り立てる、まさにバールの子にふさわしい所業じゃないか。法と正義の聖騎士を気取っていても、そなたの本質は、しょせん血塗られた道なのだ」

NOVA「それは……違う。殺戮の元凶は、お前の方だろう、イレニカス

イレニカス「それはそうだ。お前から、バールの精髄は奪ったからな。元より、殺戮は望むところよ。……しかしな、NOVAよ、ボーディから聞いたぞ。バールの力を奪われたはずのお前が、暴走してバールの化身になったそうだな。バールの本質は、それだけ深く、お前の中に根付いているのではないか?」

NOVA「だ・ま・れ!」

イレニカス「ほう、怒りの衝動に駆られるか? ここでも、変身を見せてくれるか? バールの化身の力がどれほどの物か、私にも見せてくれないか?」

イモエン「ダメよ、NOVA。衝動に身を任せては。戻れなくなるわ」

NOVA「ハアハア……。大丈夫だ、イモエン

イレニカス「変身しないか? それとも、自分で変身をコントロールできないのか? なら、これならどうだ!(魔法を使い、周囲で戦う魔法使い群に大ダメージを与える) ハハハ、やはりバールの力は素晴らしい。魔力もいつもより充実している」

 その後、冒険者パーティー、およびスペルホールドの囚人だった魔法使いたちは、イレニカスに集中攻撃を浴びせます。

イレニカス「く、さすがに長期戦は、こちらの分が悪いか。なら、これで!(強力な魔法を放ち、魔法使い群を一気に全滅させる) ……おっと、ここまでするつもりはなかったがな。私も、まだ力のコントロールができないようだ」

NOVA「イレニカス、貴様〜!」

イレニカス「お前は、まだ立てるようだな。しかし、お前の仲間たちは、限界が近いようだぞ」

ジャへイラ「ま、まだよ。ここで倒れるわけには行かない」

ミンスク「ブゥが言っている。まだ、戦える、と!」

ナリア「でも……正直、きついわね。魔力でシールドを張っていなければ、とっくの昔に倒れていたわ」

エアリー「魔力も、治癒力も、そろそろ打ち止めだよ」

イモエン「……」

イレニカス「最初に倒れたのは、イモエンか。当然だな。魂の半分を奪われて、すでに弱っていたんだからな。さあ、どうする? これでも、変身しようとしないのか? 私を失望させないでくれよ」

NOVA「ぼ、ぼくは……変身に耐えてみせる」

イレニカス「強がりを。しょせんは、最後まで、力を求めぬ弱者でしかなかったか。イモエンともども、遠からず力尽きて倒れる定め。私が手を下すのも、バカバカしい。後の始末は、元の仲間の手でつけさせるとしよう。ヨシモNOVAの始末は任せたぞ」

 そして、イレニカスは魔法の呪文を唱えるとともに、その場から消え失せます。
 代わって現われたのは、一行を裏切ったヨシモの率いる暗殺者部隊。

ヨシモ「やれやれ、マスターも相変わらず人が悪いヨ。NOVA、あんたも頑張ったみたいだけど、これで終わりみたいネ。心残りがなくもない……けど、契約は何よりも優先されるからネ」

 NOVAの前に立ちはだかるヨシモ。果たして、仲間を裏切った彼の真意は? (つづく)

 

●2007年10月30日(火)・ヨシモの死(第4章その7)

 スペルホールドの囚人魔術師の力を結集して、イレニカスに決戦を挑んだ一行。
 しかし、敵の力は強大で、魔術師たちは全滅してしまう。
 満身創痍になった一行の力を見切ったイレニカスは、後の始末をヨシモ率いる暗殺者部隊に任せ、スペルホールドから撤退する。

 そして、大勢の暗殺者に包囲され、窮地の一行。

NOVA「みんな……イモエンを連れて、この場を脱出してくれ」

ミンスク「お前はどうするんだ?」

NOVA「一人で、この場を切り抜けるつもりだ」

ミンスク「お前だけ残して、逃げられるか!」

NOVA「いや、逃げてくれ! そろそろ……衝動が抑え……られなくなってきた」

ミンスク「!」

ジャへイラ「……暴走したら、全滅は免れないわね。包囲網を突破して、脱出するわ」

ミンスク「そんな……」

NOVA「ミンスク……イモエンを頼む」

ミンスク「……分かった。外で待っている。お前も、早く済ませて、必ず帰って来い」

 NOVAが相手の目を引き付け、他の仲間の脱出をサポートします。

ナリア「マジック・ロック! ふう、これで扉は封印したわ。敵に魔術師がいなければ、開けることはできない。当面は、これで安心ね」

エアリー「NOVAはどうなるの?」

ジャへイラ「スレイヤーになって、敵を全滅させるか、先に力尽きるか……いい結果になるのを祈るしかないわね」

 そして、部屋の中。

ヨシモ「仲間を助けるため、自らを犠牲にする……まさに聖騎士の鏡アルね」

NOVA「ヨシモ……イレニカスは去った。君は……手を引くことはできないのか?」

ヨシモ「イレニカスは、『NOVAの始末』を命じた。その契約はくつがえせないヨ」

NOVA「どうしてだ! この戦い、本気でやれば、ぼくか君のどちらかが死ぬ。イレニカスの命令は、そんなに大切なのか! あいつは部下を平気で使い捨てる男だぞ」

ヨシモ「そんなことは分かっているアル。奴に対する忠義なんて、これっぽちもないネ」

NOVA「だったら、どうして……?」

ヨシモ「奴は、強力な魔法使いアル。強力なギアス(契約)の呪文を、この心臓に施しているのヨ。奴の命令に背けば、この心臓が止まる。生きるためには、奴の命令に従うしかないアルね」

NOVA「そんなことが……」

ヨシモ「どうして、ダンジョンから脱出してきたアルか? 脱出したなら、どうして、もっと早く、イレニカスを倒さなかったアルか? やることが中途半端なのネ。奴が『NOVAの始末』を命じた以上、もう取り返しがつかない。ヨシモが生き残るためには、NOVAが死ななければ、ならないのヨ!」

 勢いづいたヨシモの一撃が、呆然としているNOVAの武器を弾き飛ばす。

ヨシモ「死ぬアルね」

 その瞬間、NOVAの心は何も考えることができなかった。
 今にもとどめを刺そうと突き込んで来るヨシモの刀を目にし、生存本能が働いた。
 刀の刃先は、鎧の装甲でうまく受け流した。これは鍛えられた戦士の勘の為せる技だった。

 しかし、右腕の動きには、戦士以上の何かの力が働いていた。
 魔獣の鉤爪と化した右手は、まっすぐにヨシモの左胸を貫き、心臓を抉り取っていたのだ。

ヨシモ「グハッ!」

 一体何が……? というヨシモの想いは、言葉になることはなかった。
 思いがけず、恐ろしい魔物の爪が、自分の胸から心臓を抉り出しているのを、ヨシモは知覚した。
 痛みはない。
 それを感じる前に、ヨシモは絶命していた。
 その表情は、まさに目の前に起こったことが信じられない、といったものだった。

 信じられないのは、NOVAも同じだった。
 右腕だけが、殺戮の化身スレイヤーの物と化し、かつての仲間の命を奪った事実。
 それを目の当たりにしたNOVAの心は打ちのめされた。

 これまで、スレイヤーと化している間、NOVAには意識がなかった。
 暴走の悲劇を感じるのは、全てが終わった後のことだった。
 しかし、今回だけは、スレイヤーのもたらした物を、NOVAは直接、見てしまった。
 自分に意識があろうと、なかろうと、スレイヤーの力は発動してしまうのだ。

 ヨシモの殺害を自覚したとき、NOVAはもはや、抵抗できなかった。
 すべての意識を闇にゆだね、スレイヤーに変身する自分自身を、ただ感じるがままになった。

 幸い、まだ周囲には殺戮の対象たる者が大勢いた。
 NOVAは生えそろった牙をむきだして、ニヤリと笑い、周囲を威圧的に取り囲んではいるものの、自分に怯えた視線を向ける暗殺者部隊に、襲い掛かった。

 殺戮の宴が開始された。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 そこは見覚えのある、夢の世界。

イモエン「どうやら、あなたは受け入れる気になったみたいね」

NOVA「何のことだ?」

イモエン「あなたの持つ大いなる力よ。あなたは今まで、拒み続けてきた。抑えつけるだけだった。それは愚かなことよ。受け入れて、使いこなせば、あなたの望みはかなうのに……」

NOVA「君は……イモエンじゃないな」

イモエン「ええ、ちがうわ。私はイモエンのイメージをとった影よ。あなたの心が受け入れやすいようにね。お望みなら、こういう姿を示すこともできる」

サレヴォク「久しいな、我が弟よ」

NOVA「兄さん?」

サレヴォク「お前は、私を地獄に落とし、邪神の玉座に一歩、近づいた。それなのに、何をやっているのだ? イレニカスという輩に、ずいぶん苦戦しているではないか。そんなことでは、何も守れないぞ」

NOVA「放っておいてくれ。ぼくは、邪神の力には頼らない」

ダイナヘール「そんなことを言っているから、犠牲者を出すのよ。私たちみたいな、ね」

カリード「俺たちの仇討ちも、力がなければ、かなわない夢だな」

NOVA「君たちまで……ぼくに、邪神の力を使え、と言うのか?」

ヨシモ「やれやれ。力があるなら、どうして、もっと早く、イレニカスを倒さなかったアルか? そうすれば、ムダに命を落とすことはなかったアルよ。弱い仲間のせいで、死んでも心臓の呪いは解けないまま、苦しみ続けているのよネ」

NOVA「……ヨシモ、ぼくに何ができたって言うんだ?」

ヨシモ「使える力を使い、生き延びること。望むべくは、イレニカスが施した契約の呪いを解いてほしいヨ。そうすれば、安らかに死後の世界に旅立てる」

NOVA「しかし……邪神の力は危険だ」

イモエン「でも……あなたが力を使わなければ、イレニカスが勝つわ。そして、魂を失ったあたしも、あなたも、遠からず弱って死ぬ。力を受け入れれば、イレニカスを倒せるかもしれない。その力をどう使うかは……あなた次第よ。あなたは、まず受け入れる選択をしなければならない」

NOVA「本当の……イモエンなら……そんなことは言わないはずだ。彼女は……邪神の力を恐れていた」

イモエン「そう? なら、あたしは消えるしかないわね」(言った瞬間、絶命する)

サレヴォク「地獄で待っているぞ」(言い残して、絶命する)

ダイナヘール「イレニカスを必ず、倒しなさいよ」(言って、絶命する)

カリード「力を恐れるな。使いこなせばいい」(助言して、絶命する)

ヨシモ「……さよなら……アルね」(つぶやいて、絶命する。その左胸から心臓が飛び出し、NOVAの手の平に収まる)

NOVA「うわあ……」(悲鳴をあげて、絶命する)

 全てが死に絶えた夢の世界。そして、NOVAは覚醒する。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 気が付けば、周囲には、虐殺された暗殺者の無惨な死体が散らばっていた。
 夢の世界でも、現実でも、死だけが満ちていた。
 五体満足な物は少なく、ちぎれた四肢や、生首が散乱する中を、
 陰鬱な顔をした聖騎士は黙々と歩み、ヨシモの遺体を探し当てた。

 その傍らに落ちている心臓。呪われたそれは、黒々とした光を放ち、今だ不気味に脈打っている。

 「ティール神よ」

 NOVAが崇拝する神に祈りを捧げると、一つの啓示が得られた。

 「呪いの解除には、イルメイター神殿の力を頼るべし」

 啓示を受け取ったNOVAは、ヨシモの心臓を丁重に布で包み込むと、亡き友の遺体に向かって、解呪を約束するのだった。
 それだけが、自分の無力さのもたらした罪滅ぼしと思って。(つづく)

 

●番外編・死者との対談(2007.10.31)

ヨシモ「死んでしまったアル」

 ああ、頭の上に「天使の輪」が乗っているな。

ヨシモ「だったら、どうして、そっとしておかないアルか? 今さら、死者の霊を呼び起こして、何をするつもりネ?」

 いや、今夜はハロウィーンだからねえ。死者の霊を迎えても、何の不都合もない日だからさ。

ヨシモ「そんな理由で呼び出したなら、愚痴と呪いの言葉を浴びせてあげるヨ。心臓を抉り出して殺すなんて、惨い描写をするなんて……」

 まあ、ゲーム描写では、「スレイヤーが心臓を抉り出す」なんて描写はなかったさ。単に、暗殺者たちのリーダーとして、乱戦の中で殺されるだけ。淡白なものだったね。

ヨシモ「それをスプラッター描写にするなんて、ひどい趣味アル!」

 う〜ん、フィクションのスプラッターは嫌いじゃないんだけどな。現実のスプラッターは勘弁だけど。
 ドラマとかホラー映画だと全く問題ないんだが、ドキュメント番組で手術の映像が見せられたりすると、途端に食欲を亡くしてしまう。あと、子供の怪我とか病気の映像は、見たくないよなあ。最近は、食事時間の夜9時半ごろに、そういうドキュメント番組が多く放送されているみたいで、しかも、家族がそういう番組を好んで見るものだから、困ってしまう。
 曰く、「こういう可哀想な子供の番組を見て、社会のことを学ばないと、感受性の足りない冷たい人間になってしまう」そうだ。
 いや、ぼくに言わせれば、「そういう可哀想な子供をネタにしている番組を見る方が、よほど無神経」に思えるんだがね。

ヨシモ「あんたの家族の話なんか、どうでもいいヨ。ムダ話に付き合っている暇はないアルね」

 あ、そうだった。ついつい、話が横道にそれてしまうのは、悪い癖だ(苦笑)。
 で、「ヨシモの心臓」の話だったな。スレイヤーに抉り出されるのは創作だけど、死んだ「ヨシモの心臓」を取り出して、所持アイテムにするのは、ゲームでも使われている。
 最初に、それを見たときは、BG2って何てブラッディーなゲームだ! と思ったよ。

ヨシモ「シクシク。東洋人だからって、虐待するなんて……。裏切って、惨殺された挙句、心臓を取り出されるなんて……。こんな酷い仕打ちを用意した、ゲーム製作者を恨んでやるヨ」

 ……何だか、悪霊っぽくなってるよなあ。
 どちらにせよ、心臓を浄化しないと、君は成仏できない。そういうクエストが用意されているようだね。
 ただ、浄化のための寺院は、アスカトラ市にあるので、そこまで戻らないと。

ヨシモ「一刻も早く、成仏させてほしいアル」

 現在、プレイは第5章に入っている。第6章まで待ってくれ。

ヨシモ「いつになったら、そこまでプレイが進むカ?」

 さあ?
 とりあえず、イモエンも助けたし、そろそろ物語も重くなっていて、プレイに疲れてきているしなあ(苦笑)。

ヨシモ「このまま3年放置……ってのは、勘弁してほしいヨ」

 う、そこまで遅れることは……ないと思う。
 理想を言えば、年内に本作を終わらせたいけど……他のゲームもしたいしなあ。
 あ、良かったら、ヨシモ、そっちにスピンオフさせるか? 以前も、BG1で別れたカイヴァンを、アイスウィンドにスピンオフさせたし。

ヨシモ「アイスウィンド2に出られるアルか?」

 ああ、何だかんだ言って、君はお気に入りキャラクターになっちゃったからな。
 正直、BG2のキャラで、君ぐらい「世知に長けて、ユーモアセンスに溢れ、ツッコミ役に最適なキャラ」はいないんじゃないかな? 君が欠けると、何だか真面目キャラばかりで、物語が突然、陰鬱になってしまった気がするよ。正直、書いていて、ツライものがある(苦笑)。

ヨシモ「ずいぶん、誉めてくれるネ。何を企んでいるカ?」

 企んでいるなんて、人聞きが悪い。
 事実、そう思っているんだって! まあ、君を生き返らせる、というか殺さない裏技もいくつかあるらしいけど。

ヨシモ「そ……それは是非、聞かせてほしいアル」

 いや、君が裏切る前に、死んだ状態や石化状態にしておく、らしいんだが。
 これだと裏切りイベントが発動せず、その後の死亡イベントにもつながらない、と聞いている。その後で、復活させれば、一応、君を最後まで連れて行ける……との噂だ。
 ただ、それはあくまで裏技なんで、その後、君は何も喋らない空気みたいな存在と化すし、続編の「スローン・オブ・バール」にも(たぶん)出られない、と思う。
 まあ、実際に試していないから、事実かどうか分からないけどね。

 それに、そういう裏技で、本来のストーリーを歪めるプレイには、あまり興味はない。
 やはり、「ヨシモの死」こそ、BG2のストーリーの王道だろう。「裏切らないカイン」(FF4)や「死なないエアリス」(FF7)なんてのは、邪道だと思う。まあ、「オルテガ」(DQ3)とか「デスピサロ&ロザリー」(DQ4)の復活を、ゲームクリア後の隠し特典にするってのも、アリなのかもしれないけど……。

ヨシモ「ま、まあ、今さら復活するのも無理ッポイので、アイスウィンド2へのスピンオフを考えてほしいヨ」

 うむ。
 それには、2つの条件がある。

ヨシモ「それは、何アルか?」

 1つは時間軸の問題だ。
 BGシリーズは、1368年を起点としているが、アイスウィンドは1281年だ。
 一応、アイスウィンド2は、その30年後らしいけど、それでも1311年。やはり、BGシリーズとは、時間のズレがある。

 BG2で死んだ君が、どうして50年ほど遡って転生するのか、納得のできる理由がほしいところだね。
 カイヴァンの時は、次元転送と種族変化の理由を、物語中のエルフ魔法ミサルとうまく絡めて、後付け設定にできたけど。同じネタの使い回しはしたくない。

ヨシモ「うう、デンライナーに乗って、時空間移動した影響で、うまく救い上げられた……ってのはナシよネ?」

 AD&D世界には、たぶんデンライナーはない、と思う。
 まあ、次元移動物サプリメントの「スペルジャマー」なんかをあされば、似たような乗り物はあるのかもしれないけど(笑)。

ヨシモ「うう、設定は後で考えるアル。もう一つの条件は何アルか?」

 うん。
 せっかくなので、君の復活は、うちのサイトのネタにしてみようと思う(笑)。
 そもそも、この記事がどれほどの人に読まれているか、いまいち掲示板などでの反応が薄いので、自分でもよく分からなかったりする。ごく稀に、感想書き込みがあると、非常に嬉しいんだけどね。
 あと、2chのBGスレにも、攻略記事の一つに、うちの名前が挙がっているのを見つけたときとか(^0^)。

 もっとも……特撮ネタとか多くて、ゲーム攻略の役にはあまり立たないんだろうけどね(苦笑)。2chで交わされている話の方が、よほど濃くて面白かったりして。

ヨシモ「2chの話なんか、どうでもいいヨ。サイトのネタって、どういうことカ?」

 ああ、サイトと言うか、掲示板ネタだね。
 SFファンタジー幻夢界で、「BG2のヨシモを、アイスウィンド2で復活させて欲しい」要望を、誰か1人でも書き込んでくれたら、君をアイスウィンド2のプレイヤーキャラとして採用することにする。

 つまり、この記事を読んでいる人の中で、ヨシモファンが1人でもいてくれれば、君の復活はかなうわけだ。

ヨシモ「もし、そういう書き込みがなければ?」

 この話はなかったことに……。

ヨシモ「みんな、ヨシモをよろしくお願いするアル。このままだと、侑斗と同じで、時間の復元作用から取りこぼされてしまいそうで……」

 ……ということで、期限は、次の電王放送日の11月11日までね(駅伝で1週飛ぶので)。
 たぶん、侑斗は復活できると思うけど、ヨシモの方は果たしてどうなるかな? (つづく)

 

●2007年11月2日(金)・コントロール(第4章その8)

 殺戮の跡と化したイレニカスの実験室。
 この部屋では、多くの命が失われていった。

 殺戮神バールの力を、イモエンNOVAから奪うまでに、多くの魔法実験をイレニカスは行なっていた。
 亡者(アンデッド)の行なう生命力吸収(エナジードレイン)の能力に等しい、生命そのものへの冒涜を、イレニカスは魔術の力で繰り返していた。
 犠牲者の多くは、アスカトラ周辺で彼が拉致した一般人、あるいは妹ボーディの協力で誘い込んだ盗賊どもだった。
 命そのものを奪う、堕落した魔力の残滓は部屋全体にこびりつき、この後、何世紀もの間、消えることはないだろう。

 しかし、イレニカスは血を流すことはしなかった。
 彼の行なった実験は、魂や生命力と呼ばれるものを直接、操作することだけ。その過程で、精神を傷つけたり、肉体を干からびさせるなどの副作用は生じたかもしれないが、刃で肉体を傷つけたり、衝撃で骨を砕いたりするような物理作用はもたらしていない。

 今ある、それらの惨たらしい死骸は、全てスレイヤーのもたらしたもの。すなわち、聖騎士NOVAの所業である。

(それでも、ティール神は応えてくれた)

 打ちのめされたNOVAの心には、ささやかながら安堵の思いがあった。
 少なくとも、自分はまだ神の声に触れられる、聖騎士である、と。

 しかし、償いは果たされなければならない。
 まず、何をすればいい? 

 1つは、イレニカスの呪いのために、仲間を裏切り、殺されることとなった哀れなヨシモの霊を、邪悪から解放する。それには、アスカトラに戻ることだ。
 もう1つは、これ以上の犠牲を出さないためにも、イレニカスを止めること。そのための力を、自分は得なければならない。力をコントロールできない、不安定な現状では、イレニカスを倒すなんてとても不可能だ。邪悪に翻弄されるだけで、終わってしまう。

 邪神の力を受け入れて、使いこなす? 
 そんなことが本当にできるのか?
 それこそ、邪神の誘惑ではないのか?

 NOVAは、心の中を探ってみた。
 「むき出しの闇」……と表現した何かが感じ取られる。
 今は静まっている、それは、ちょっとした衝動で膨れ上がり、NOVAの心を飲み込んで、邪悪なスレイヤーへと変貌させることだろう。このに、自分の心が完全に支配されてしまったとき、もはや人間性を完全に消失した殺戮魔獣として、一生を過ごさなければならない。

 自分の心を失わず、純粋に力の根源として、を操作できるのか? 
 膨れ上がったの力を適度に発散させ、制御可能な段階にまで常に安定させておくことはできるのか? 
 の力を水に例えるなら、氾濫した河の流れを食い止めることはできない。氾濫する前に、水の流れをある方向に誘導して、人里への被害が及ばぬように、心がければいい。
 力には、抵抗しても、反発を生むだけである。むしろ、受け流すことで、力の方向を変えてやる……NOVAは、キャンドルキープで読んできた様々な書物の知識を、頭の中で組み合わせてみた。

 一通りの思考、検討を済ませてから、次の手順を意識する。
 すなわち、「実験」である。
 己の意志で、スレイヤーに変身して、何かを破壊させる。その上で、変身を自分で解除できれば……コントロールできる力なら、恐れる必要はない。

 NOVAは、改めて室内を見渡した。
 まさに、地獄の惨状だ。全ては破壊されていて、これ以上、壊すべきものはないように見える。
 よく、自分は正気を保っていられる、と内心、苦笑を浮かべる。
 感覚が麻痺しているのか、それとも、すでに狂気に陥りかけているのか。

 いずれにせよ、この部屋にこれ以上、いる意味はない。外の空気でも吸えば、暗い気分も、幾らかマシになるだろう。

 外に出ようと、NOVAは大扉を開こうとした。
 そして気付く。
 魔法で閉ざされているようだ。
 解除する手段をNOVAは持っていない。外に出たければ、扉そのものを破壊するしかない。そして、それは人の力では不可能なほど頑丈な扉だ。

(試してみるか?)

 NOVAは自問した。
 答えはすぐに出た。
 NOVAは、心中のに、意識の手を伸ばした。

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 イモエンが意識を取り戻したのは、スペルホールドの牢獄の中だった。
 そこには、仲間たちの姿があった。ジャへイラミンスク、それから……2人の女。名前がとっさに出てこなかったけど、イモエンは気にしなかった。それよりも気になったのは……。

NOVAはどこ?」

 尋ねた声は、思っていたよりも弱々しく、かすれていた。もう一度、息を吸って、繰り返す。

NOVAはどこ?」

「ああ、イモエン。良かった、気付いたのね」

 ジャへイラが安堵した声で、応じる。しかし、次の言葉は、イモエンの聞きたいものではなかった。

NOVAなら……心配いらないわ。それより、あなたの方よ。もう少し、休んでなさい。しっかり体力を回復させないと」

 その言葉には、気遣いが溢れていたが、ジャへイラらしくない欺瞞も感じられた。
 微かな言い淀みと、話題をそらすような言い回し。本来、ジャへイラは、はっきり物を言う女性なので、こういう曖昧な言い方をするときは、何かを隠そうとしているのが明白だった。

NOVAの身に何かあったのね。教えてちょうだい、ミンスク

 頑固な女ドルイドよりも、素朴な蛮人に話を向ける。ジャへイラに話すよう説得するよりも、ミンスクに話させる方が、はるかに早い。

「ああ、NOVAは……」

 話し始めようとするミンスクに、ジャへイラは黙るよう目配せするが、単純な蛮人はそんな動作には気付かない。

「一人で部屋に残り、俺たちを逃がした。あれこそ、勇者の振る舞いだ。なあ、ブゥ(チューチュー)」

一人で残った……って、イレニカス相手に?」

イレニカスは逃げたわ。配下の暗殺者どもを残してね」

 イモエンは口をはさんできた貴族の令嬢を睨みつけた。

「暗殺者ども……って、たった一人を残すなんて、どういうことよ!」

それが一番いい方法だって、あの時、NOVAが判断したの。どうやら……暴走しそうに……なっていて……」

 一見、冷静そうに打ち明けていた彼女は、そこまで言うと不意に身を震わせ、瞳に涙を浮かべた。

「私は……魔法で扉を封印したわ。暗殺者が怖かったんじゃない。あの化け物が……NOVAが怖かったのよ。閉じ込めておくしかないって思って……ひどいことを……してしまったわ」

 抑えてきた、その時の感情が急に吹き出したように、彼女は手で顔を覆った。

ナリア、あなたの判断は的確だったわ」

 NOVAのいないパーティーでは、ジャへイラがリーダーを務めるようだった。

「あの時の私たちは、イレニカスとの戦いでボロボロだった。態勢を立て直すまでは、どんな危険も排除しないといけなかったのよ」

でも、もう休んで、態勢の立て直しはできたよね?」

 口をはさんだのは、エルフの少女だった。

「今からでも、NOVAを助けに行くべきじゃないかな?」

「もう……遅いと思うわ。あれから何時間も経ったし……戦闘はとっくに終わっているはずよ」

「あまり、見たくない結果が待っているかも知れないわね」

「そんな! たった一人、部屋に閉じ込めて、置き去りにして、いつまでも放置しておくなんて、どういうつもりよ!」

イモエン、私が今、心配なのは、NOVAよりも、あなたよ。見たくない結果を見て、あなたがショックを受けたら……」

「あたしのことはどうだっていい。早く、閉じ込めた部屋から出してあげないと」

 言うなり、イモエンは、仲間が休息部屋として使っていた牢獄から飛び出した。

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 扉の破壊は簡単だった。
 スレイヤーの力は大型の獣、たとえばクマやライオンの力すら凌駕していた。

 NOVAは、その魔獣の力を冷静に観察していた。
 本能で動く怪物の力を制御することはできなかったが、意識を失わず、また飲み込まれず、距離を置いて見守ることはできたのである。
 それと、破壊の対象物として、魔法で閉ざされた扉を意識すること。

 スレイヤーの反応は、もっぱら生物に対する殺戮本能だけで動いており、生命を持たない物体を破壊することは関心外であった。よって、そういう物体を破壊するためには、変身前にNOVA自身が、示唆してやらないといけないのである。

 その後の、スレイヤーの行動は、NOVAの制御から完全に離れていた。
 獰猛な吠え声を挙げ、廊下を疾走する。目指すものはただ一つ、生きている物を見つけ出し、爪で切り裂いて、その血肉をすすること。
 その純粋な殺戮本能は、観察しているだけのNOVAの心にも影響し、震撼させた。
 生理的な嫌悪感と吐き気を覚えたが、その一方で、強力な力の行使に感嘆し、魅惑させられている自分もいるのを、NOVAは感じていた。
 あまりに長く、その本能にさらされていれば、冷静な自分を失い、飲み込まれてしまうのは明らかだった。

 NOVAは自制心を奮い起こしながら、スレイヤーの動きを見守り続けた。
 それは野生の荒馬にしがみついているのと同じだった。
 荒馬を止めることはできない。しかし、手を離せば、振り落とされ、馬に踏み潰され、意識を失ってしまうだろう。
 乗り手にできるのは、どれだけ気分が悪くなっても、しっかり目を開けて、馬の進路を冷静に見極めることだけだった。

 そして、荒馬は通路の先に、生命ある獲物を見出した。

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 イモエンは、獰猛な吠え声を耳にした。
 もっと早く、気付くべきだった。彼女が昔のように、危険察知に長けた盗賊なら、それほど明白な危険を聞き落とすことはなかったろう。
 しかし、イモエンは、ここしばらく魔法の訓練に時間をかけていた。魔法とは、自分の内面の力に集中することを要する。盗賊の集中力が外界に向けられるのとは対照的である。気持ちと体力に余裕があるなら、集中力の向けるべき方向を切り替えることも容易だったろう。
 しかし、今のイモエンは弱っていた。内面の考え事、心配や焦りに捕らわれすぎたため、外への警戒が完全におろそかになってしまっていた。

 その吠え声を聞いたとき、彼女の感情は麻痺し、吠え声の主が視界に入るまで、呆然と立ち尽くすしかできなかった。

 そして、イモエンはスレイヤーと化したNOVAと遭遇した。
 彼女の理性は吹き消された。

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(止まれ!)

 NOVAは強く念じた。
 スレイヤーが本能のままに、イモエンに襲い掛かろうとした瞬間である。

 意識を失って倒れる少女の体を強引につかんで、抱きかかえる。

 本能は困惑していた。
 何かの力が、少女を殺してはいけない、と押し留めていた。
 一瞬の葛藤の末、本能は制止命令に従った。

 変身が解除され、聖騎士NOVAイモエンの体をそっと抱きしめた。スレイヤーの鉤爪が傷つけてしまったようで、血が滴り落ちている。
 癒しのために、NOVAはティール神に祈った。
 神は応じてくれ、すぐに傷口は塞がった。
 ホッと一息ついた後、NOVAは駆けつけてくる鎧の音を聞いた。

 イモエンの後を追ってきた、心配そうな仲間の面持ちを見て、NOVAはようやく「死の世界」から解放された気分になった。
 わずかなりとも、NOVAはスレイヤーの力のコントロールに成功したのだった。(つづく)

 

●2007年11月2日(金)・ブリンロー島からの船出(第4章その9)

 ……ということで、スレイヤー化イベントから、ヨシモの死、そして主人公が自分の意志でスレイヤーに変身可能になるまでの流れは、ゲームよりもストーリー性に満ちた描写で展開してきました。
 書いているときの心境としては、TSCの「バルダランの島編」を書いたときと同じです。

 ともあれ、ここまでで強烈な感情移入シーンも一段落したので、後はゲーム的に、ポイントをしぼって記事書きしていこうと思います。
 まず、レベルアップの状況ですが、

●主人公NOVA(HP120):人間のレベル12キャバリエ・男性。

●ミンスク(HP105):人間のレベル12レンジャー・男性。

●ジャヘイラ(HP84):ハーフエルフのレベル10ファイター/レベル12ドルイド・女性。

●イモエン(HP67):人間のレベル11メイジ(元レベル7シーフ)・女性。

●ナリア(HP67):人間のレベル13メイジ(元レベル4シーフ)・女性。

●エアリー(HP50):アヴァリエルエルフのレベル10クレリック/レベル11メイジ・女性。

 大体、経験点が120万点ぐらいですね。イモエンだけ、70万点ぐらいで、出遅れていますが。
 もしも、ヨシモが外れていなければ、今ごろ、優秀なファイター/シーフなのになあ、と思うと、残念です。まあ、ヨシモが復活できるか否かは、読者次第ってことで、今は忘れましょう(笑)。

 さて、次のストーリーですが、サエモン船長が情報をくれて、二つの選択肢を選ぶことになります。

 1つは、イレニカスが使ったと思われる転送装置を使って、後を追うこと。

 もう1つは、サエモン船長の船で、島を脱出すること。

 前者だと、地底世界アンダーダークに向かうことになり、第5章に突入です。
 後者だと、船が途中で沈むことになり(苦笑)、サハギンたちの海底都市シティー・オブ・カバーンに寄り道することになります。その後は、結局、海底→地底に入って、第5章に突入することになるわけですが。

 NOVAの選択は、後者。
 理由は、そちらの方が、いっぱい冒険できて、経験点およびアイテムを稼げるから(笑)。もちろん、ゲーム的な理由だけでなく、ストーリー的な理由もありますけどね。だって、イレニカスの後を追うよりも、アスカトラ市に戻る方を優先したいじゃないですか。

 そして、サエモン以外の情報源として、イレニカスの私室にある日記の存在が挙げられます。
 それによると、主人公からバールの力を奪った後の目的として、「エルフの都市サルダネッセラーへの復讐」を目論んでいるようです。
 と言っても、その辺がストーリーに絡むのは第6章から7章にかけてです。現時点では、ただの伏線ってことで。

 それよりも早く、サエモン船長の船に乗って……って、船ありませんけど?

サエモン「いや、実はな。ここの島主デシャリクとケンカして、船を沈められてしまったんだ。おっと、そんな顔をするなよ。対策は考えてあるさ。俺さまの船を沈めやがったお返しに、奴の船を盗んでやろうと思ってな。大丈夫、お前さんたちが協力してくれれば、うまく行くさ」

ジャへイラ「あんた、最初から船がないのを承知で、私たちに『船で送ってやろう』って持ちかけたってわけ?」

 ジャへイラさんは、完全にサエモンさんを信じてませんなあ。NOVAも信じていないけど(笑)。
 要するに、サエモンさんって、鬼太郎のネズミ男みたいなものなんですよ。自分の利益には敏感で、正義や悪とは関係なしに、得する方に付く。子供のときは、鬼太郎を見ていて、つくづく思いました。

 「何で、鬼太郎は、裏切ってばかりのネズミ男を許してるんだろう?」って。

 まだ、ルパン三世が峰不二子を許す理由は分かるんです。スケベな男は、可愛い子ちゃんには甘いものだから。
 でも、ネズミ男は、ただの不潔なオッサンですからね〜。

 ですが、今だとよく分かります。
 鬼太郎の目的は「悪い妖怪退治」。そして、ネズミ男は、悪い妖怪を見つけ出す嗅覚はやたらと優れているんですね。
 つまり、ネズミ男が事件に絡んでくるので、鬼太郎は彼と付き合っていれば、妖怪退治がしやすくなる。ネズミ男が裏切ることによるリスクは、ネズミ男が事件を知らせてくれるメリットと相殺される、と。

 サエモンも同じです。
 我々の目的は「経験点になる冒険ネタ」。
 サエモンは、我々に厄介ごとを押し付けてくる人物ですが、それらのクエストを解決すれば、経験点につながります。

 そんなわけで、サエモンに協力して、島主にして海賊ボスのデシャリクの船を盗み出します。
 え、盗みはいけないって? 
 大丈夫、陰惨な殺戮劇に比べれば、盗みなんて小さい、小さい(笑)。それに、相手は悪党ですから、悪から盗んでも罪にはならない……って、本当か、オイ(爆)。

 ともかく、海賊船を盗むと、当然、海賊ボスのデシャリクにバレて、戦闘になります。
 うわ、こっそり盗むつもりが、強奪になってしまったよ。

 ますます、悪行を重ねていますなあ。

 そのため、罰が当たったのか、アスカトラ市への帰路の途中で、別の海賊の襲撃を受けて、船が沈んでしまいます。

 一行は、そのまま海の底に落ちて、新たな冒険に突入するのですな。(つづく)

 

●2007年11月7日(水)・サハギンの海底都市(第4章その10)

 祝・ヨシモ復活♪ 
 ……ということで、掲示板上での、Sinさんの復活要望書き込みを受けて、「アイスウィンド2」での復活が決定しました。

 どうせならサイト全体でも盛り上げたく思います。
 折りしもサイトの創立7周年記念日が近づいていることで、「ホビー館7周年記念ヨシモ復活祭」とでも、名付けようかな、と(笑)。
 主人公NOVAは、それまでに「ヨシモの心臓を、アスカトラ市のイルメイター寺院に納める」ことを課題とします。
 がんばれ、NOVA!(って他人事みたいに言うプレイヤーNOVA。いや、最近、暗い性格にシフトしつつある主人公に感情移入しすぎると、記事が重くなりすぎて……テンポ良く進めるには、人格を分裂させたほうがいいかなって^^;)

 ということで、前書き終わり。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

NOVA「がんばるのはいいんだけど、今、ぼくたちはどこにいるんだ?」

 うむ、君たちは海に落ちた後、半魚人種族サハギンの海底都市「シティー・オブ・カヴァーン」にいる(ゲームマスター口調)。
 どうやら、君たちはサハギン都市の苦境を救う「神の使い」として、半魚人の女司祭に認められたようだ。彼女の話によると、都市王国は「狂った王イクシルセトカル」と、それに対して反乱を起こした「ヴィリナティ王子」の間で、大混乱に陥っているようだ。
 君たちは、王の前に連れて来られ、反乱の鎮圧を求められるわけだが、女司祭はこっそり「反乱王子」に味方する方が都市のため、と打ち明ける。

ナリア「典型的な王侯貴族の政争ってわけね。どうして、こうも、ややこしい状況に巻き込まれるのかしら?」

ジャへイラ「『神の子』たるNOVAの宿命でしょう。いつも厄介事に巻き込まれる運命なのよ」

NOVA「ちょっと待ってくれ。何でもかんでも、ぼくのせいなのか?」

ミンスク「俺には、よく分からん。ブゥ、分かるか? (チューチュー) うむ、なるほど、そうか。ブゥが言うには、闇の暴走を抑える制御能力が失われ、あらゆる不幸な事態がNOVAに降りかかってくるそうだ。いわゆる特異点という奴だな」

NOVA「……ということは、今後は『俺、参上!』とか『最初から最後までクライマックスだぜ!』の世界に突入するわけか?」

ミンスク「うむ、ブゥによれば、その世界の続編が、この世界の要素を取り込むらしい。すなわち、吸血鬼とか狼人間とか、半魚人といったダークファンタジーのモンスターが、正義のヒーローに憑依して、悪のモンスターを倒す話になるらしい」

イモエン「……何の話か、ちっとも分からないんだけど……」

エアリー「……私には分かるような気がする。クァイルおじさんがよく話してくれたの。このフェイルーンとは違った世界の英雄譚を。その一つに、『仮面を着けて、機械の馬に乗った騎士』の伝説があるの。今までも、古代の魔物の力を宿す戦士や、神の力を受け継いだ戦士、竜の力で戦う戦士、狼男に変身する戦士、札に封印した魔物の力を全身に宿した戦士、鬼に変身する戦士、時間を操って超加速や過去を改変できる天の道を往く戦士がいたわ。そして、今は鬼やカメ、クマや竜の姿をした魔物に憑依された戦士の話が進行中とのことよ。おじさんは、天才だから何でも知っているらしいの」

NOVA「……それで来年は、吸血鬼か。本当なんだろうな」

ミンスク「もちろんだ。ブゥはいつだって正しい。何しろ、偉大なミニチュア・ジャイアント・スペース・ハムスターだからな」

ジャへイラ「……ええと、別世界の話はそれぐらいに置いておいて、今の問題を解決しましょう。NOVAは、王と王子のどちらに味方するつもり?」

NOVA「……話し合いで解決……が理想だけど、 無理みたいだね。だったら、王子を応援するよ」

イモエン「反乱に加勢するの? 騎士らしいとは思わないけど」

NOVA「王が狂っているなら、ここで鎮圧しても、反乱はまた起きるだろう? だったら、まともな人格の者が王になって、きちんと統治した方がいい」

 攻略情報を読む限りでは、王に協力した方が入手できるアイテムがいいそうです。一応、「ハルバード+4」なんて強い武器の部品が入手可能とのことですが、ハルバードなんて使わないですからね。
 だったら、ロールプレイ的には、狂人を応援するよりも、反乱支援の方が妥当だと判断。

 ただし、どちらにしても、街で暴れている軍勢はこっちを攻撃してくるので、それを成敗し、
 王子の潜伏拠点に入るためのキーを入手するために、インプやビホルダーの出すリドルを解決するまでは同じ。

 その後、王子に対面して、攻撃するか、和解して反乱に協力するかを選択するだけの違いです。

 結局、狂王を撃退して、王子に感謝されて、ご褒美のアイテムをもらった挙句、
 海底都市から地底世界アンダーダークに至る通路に潜入することができました。
 次回より、舞台はドロウや、その他の強敵の跋扈しているアンダーダークに移ります。(第4章、これにて完。第5章につづく)

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