◆ 30 ◆
直江の唇が高耶の唇にやさしく触れた。
今の高耶にとって、それははじめてのキスだった。 (うわぁ……直江とキスしてるんだオレ……) 直江から与えられるキスは、温かくてやわらかかった。筋肉質の男の体に、こんなにやわらかな部分があるとは驚きだった。 静かな部屋に響く唇の触れ合う音。小降りになった雨は、その微かな音すら隠してはくれなかった。耳まで真っ赤に染めた高耶は、キスの数だけ天気を恨む。 「そんなに緊張しないで……」 ぎゅっと目を瞑り堅く引き結んだ高耶の唇に、直江は角度を変えながら何度もあやすようなキスを贈る。体を硬直させ、与えられるキスひとつひとつに瞼を震わせて反応する高耶が初々しくて愛しくて、直江はたまらない気分になる。 「……っ……んっ……!」 直江の舌が高耶の口内に浸入してきた。高耶は思わず目を開く。その怯えを含んだ瞳に直江は煽られる。 後頭部を掴んで高耶を仰け反らせると、上から圧し掛かるように深く深く口内を犯しにかかる。歯列をなぞり下顎も上顎の裏も隈なく舌を這わせ、奥へと逃げる高耶の舌を絡み捕った。 「ん……はぁっ……」 高耶に息継ぎを与えながら、何度も何度も境界線が分からないような深い口づけを重ねる。 ぐちゅぐちゅと音を立てる唇の間から、溢れた唾液が流れ落ちる。舌の注入を繰り返す性交のような交わりに高耶は立っていられなくなった。 力の抜けた高耶の腰を直江は引き寄せて支える。熱く猛った直江のオスが高耶の下腹部に押し付けられた。 「あっ……」 直江は深い口づけを高耶に与えながら、その呼吸に合わせて腰を擦り合わせてくる。同時に形のいい双丘を両手でもみしだき、時折偶然のように狭間に指を滑り込ませた。 「なお……え……」 直江の手管に翻弄される高耶は、溺れた人間のように爪を立てて直江の腕に必死にしがみ付いた。直江の腕に巻かれた白い包帯に血がにじむ。 「高耶さん……いい?」 淫らな絡まりに頭が朦朧となるころ、耳元で妖しく囁かれた。なにを?と聞き返す間もなく高耶はベッドに押し倒されていた。 エアコンに冷やされたシーツの冷たさに、ハッと我に返った高耶は、これから直江にされるアレコレを想像して突然慌てふためき出す。 「で……電気消せよっ!」 キスを受け入れた時、このあと自分は直江に抱かれるんだと、高耶はなんとなくわかっていた。その覚悟もしたつもりだった。だけどこんな明るい部屋でそういうことをされるのは死にそうなくらいに恥ずかしい。 しかし、その願いは聞き入れてはもらえそうにない。 「どうして?」 「……」 高耶に覆い被さりながら、口に笑みを浮かべてそんなことを聞き返してくる直江を高耶は恨めしげに睨み上げた。 への字に曲げた高耶の唇に、直江は楽しげにキスをする。 「なんだか新鮮ですねぇ。高校の制服でも着せたい気分ですよ」 「何のプレイだこのエロ親父っ……あっ……!」 すでにシャツを剥ぎ取られた高耶の胸に直江は指を滑らせる。行き着いた胸の突起を摘むと、高耶は顎を仰のかせた。その首筋に直江は顔を埋めた。 「ふっ……」 首筋や鎖骨に触れる直江の唇や柔らかな髪がこそばゆくって、思わず高耶は笑ったような息をもらす。すると、顔を上げた直江がちょっと不満そうに言った。 「余裕ですね」 「んなわけねーだろ馬鹿!」 「せっかくなので、初々しいあなたを頂きたいんですが」 「てめこのっ!変態野郎!」 その怒号の語尾は、嬌声となって掠れた。 寝巻き代わりに来ていたハーフパンツの裾から直江の手が浸入し、すでに形を変えていた高耶のものを直に握りこまれていた。何かの生物を住まわせたように、もぞもぞと動く布が、中が見えない分よけいにいやらしい妄想を描きたてる。 「やめっ……」 直江の手の動きにあわせて、高耶の腰がビクリビクリと跳ね上がった。 「こんなことされて喜んでいるあなたに変態呼ばわりはされたくないですね。ほらもうこんなにお漏らししてますよ」 直江は白い蜜に濡らした指を高耶の下肢から抜き取ると、見せ付けるようにして舐め取りながら言った。 「っくしょう……!ぬ、脱がすながらさっさと脱がしやがれ!」 「じゃあ、自分で脱いで高耶さん」 高耶はぎょっと目を瞠る。 「あなたの言うとおりに、私は自分で脱いで見せたでしょう?」 今度はあなたの番だと言い張る直江に、高耶は真っ赤な顔をブンブン振って反抗する。 「これを脱ぐぐらい簡単なことでしょう?」 直江は、ハーフパンツのゴムを指で引っ張り、パチンと軽く。 「じゃああっち向けよ!」 「そんなもったいない」 「てめぇっ!」 「言う通りにしないと、酷いことをしてしまいますよ?」 直江は不穏な笑みを浮かべて意地悪く命令した。その笑みを、怯えたような目で高耶が見上げる。そんな彼の様子は、直江の嗜虐心を煽るばかりだった。 悪いと思いながらも、この高校生高耶の羞恥に染まった顔や涙を流して抵抗する顔を見たい衝動に、直江は激しく駆られていた。 「ほら、早くしないと。ココが窮屈そうですよ」 「あっ……」 盛り上がった頂の部分を突つかれて、高耶は足のつま先を突っ張り高い声を上げる。 直江はそんな高耶をじっと見つめるだけで手を出してはこない。高耶が自分で脱ぐまでそのまま待っているつもりのようだ。 「なおえ……」 この状態で放置されるのは拷問だった。高耶は覚悟を決めたように唾を飲み込むと、両手を下肢へと伸ばした。 「そう、いい子だ」 高耶はハーフパンツのゴムに指をかけ、起立したものにできるだけ擦らないように、下着と一緒にそろそろと下ろしてゆく。膝まで下ろすと、恥ずかしい部分が一番恥ずかしい状態で煌々とした蛍光灯の元に晒された。 「ちゃんと足から抜いて」 言われるがままに高耶は、足を折り曲げてそれらを抜き取ってゆく。しかし足首まできたところで、布が絡まって動かなくなってしまった。 「んっ……!!」 両足を上に折り曲げた格好で高耶はもがく。無理に引き抜こうとすればするほど、足首に絡まってどうにもならなくなる。 直江の目前に恥部を晒して泣きそうな顔であがいている高耶に、直江は生唾を飲み込んだ。 「絶景ですね」 「み、見るんじゃねぇ!」 「そのままでいいですよ」 そう言った直江は、高耶の足の間に潜り込むと、両股を左右に割って抑えつけ、腹を打ちそうなくらいに立ち上がった高耶のオスを握って、口に含んだ。 「あああっ……!!」 脳を溶かしそうな甘い喘ぎ声が漏れた。 拘束されて無防備なそこを、直江は思うがままにじゃぶる。 「あなたはココを口でされるのが好きですよね」 「知るかっ……んんっ!」 再び咥えられ、同時に後ろの穴に濡れた指先が浸入してきた。 「なおえ……やっ……!!」 その未知の感触に高耶は怯える。 「やめっ……だめだ直江!無理だ……!」 ここにきて、高耶は思わず静止の声を上げた。 だが、直江はそれを無視して更に愛撫を激しくしてゆき、執拗に高耶を追い立てる。 「やめっ……も……変になるっ!」 前を口で扱かれ、後ろには指を2本咥えさせらていた。前も後ろもぐちゅぐちゅになるまで攻め立てられる。 「あああっ!」 内壁で蠢く指に、ある一点を擦られた瞬間、信じられないような快感が高耶の体を突き抜けた。ベッドの上でしなやかな体が魚のように跳ね上がり、弾けた白い欲望が勢いよく飛び散る。 「ここ、気持ちいいでしょう?」 白液にまみれた高耶の下肢に舌をはわせながら、直江はなおも指を突きたて、そこを何度も擦り上げる。 「もう、ゆび、ぬいて………」 イッたばかりなのに、また体の奥から熱がもたげてくる。 「なおえ……やめっ……」 高耶は股に埋められた直江の頭をぐしゃぐしゃにかき乱し、半泣き状態で身をよじって抵抗する。 「もうっだめ……ああっ!!」 高耶は2度目の絶頂を迎えようとしていた。もう限界だった。そして目の前で繰り広げられる高耶の痴態に、直江の方も限界だった。 直江は高耶の後ろから指を引き抜き、足首に絡まった布を取り去るとその足を大きく開かせる。 高耶は息を呑む。蹂躪されて柔らかく熟れた蕾に、直江の太くて熱いものが当てられていた。 「なおえ……」 縋るように直江を見上げると、欲望を滾らせた熱い眼差しに射抜かれる。次の瞬間、高耶は一気に貫かれていた。喉の奥から掠れた悲鳴がもれる。 「痛っ……痛い!」 予想以上の痛みに高耶は震える手でシーツを握り締める。 「ちゃんと呼吸をして高耶さん」 直江はなだめるように高耶の尻を撫で、ショックで縮んだ高耶自身を指であやす。 慣れるまでじっと動かずに耐えていると、段々と高耶の息が落ち着いてきた。 「動いてもいい?」 記憶がないとはいえ、直江に慣らされた体だ。はじめは痛がって涙を流していた高耶だったが、やがてゆっくり腰を動かす直江の動きに合わせて、快感を追うようになまめかしく腰をくねらせはじめた。 唇からこぼれる喘ぎは熟れて甘く、直江の耳を蕩かせる。 「なおえ……なおっ……ああっ……」 「高耶さん、ちゃんと目を開けて見て」 素直に目を開けると、直江の肉棒を咥えこんだ自身の下半身が目に入った。高耶のものと、抽入を繰り返す直江のものから溢れ出た、ふたつの白い液が蕾をしとどに濡らし、熱い肉棒が出し入れされる度に卑猥な音を奏でる。 あまりの光景に、高耶は羞恥に赤く顔を染め、目を逸らした。 「あなたの中に私がいるのがわかる?」 「もっと感じて」と直江は、一旦先端まで引き抜き、そして一気に根元まで突き入れた。 「ああっ……!」 それを何度も繰り返される。ベッドが壊れそうな音を立てて軋む。 「なおえ……もうやめっ……嫌だっ」 高耶が拒絶の言葉を言うと、その口を直江の唇で塞がれた。舌を差し込まれ、再びディープなキスを仕掛けられる。 「ん……んっ……はぁっ……」 上も下も、同時に犯される。 今自分がどんな体勢をしているのか、どこからどこまでが自分の体なのか……天地すらもわからなくなる。 「高耶さんっ……!」 ひときわ強く穿たれ、直江の精が体の中に吐き出されたのを感じながら、高耶はベッドに失墜した。 |
高耶さんの初々しさをテーマに書いてみました。 あーはずかしい。 ここまで激しくするつもりじゃなかったんですが……高耶さんがかわいくてつい暴走。(しすぎたので修正しました。(笑) 実は2回ほど書き直しています。はじめよりはマシなものになったかと。 まだまだ初心者ですが、少しでも楽しんでもらえたら嬉しいです。 エロ表現とか、どこかの小説にもろかぶりしてませんように。 これって、どこかのミラ小説にあったフレーズだったかも?と、毎度ビクビクしながら書いてます。 2006.07.31 up |