◆ 31 ◆
小さなクシャミをひとつして、高耶はうっすらと目を開けた。
夜明け前の部屋は、闇に包まれていた。 「目が覚めてしまいましたか?高耶さん」 見知った低い声が、すぐ間近から聞こえた。 「ん……なおえ?」 冷えた肩に、大きくて温かい手がのせられた。何度か擦られたあと、ずり落ちていたタオルケットを肩まで引き上げられ、その布ごと腕の中に抱きこまれた。同時に額にやわらかなものが押し当てられる。 「…………!」 闇の中で高耶は目を見開いた。 (うっわぁ……オレ…………) ぼんやりとした頭が一気に目覚める。状況把握に五感がフル回転しはじめた。 高耶の体の下には熱くてごつい男の体があった。今寝ているのはベッドのスプリングの上ではなく直江の上であるようだ。ふたりとも全裸のままらしく、高耶の肌と直江の肌がしっとりと触れ合っている。 落ち着こうと深く息を吸い込めば、直江の匂いが胸に充満する。そして……意識を失う前に浴びるようにかいだ淫らな匂いが、ほのかに鼻をかすめた。 「高耶さん……」 その声音は、いつもの礼儀正しい臣下のものではない。 背中を妖しくなでる手も、保護者のものではない。 (オレ……マジで直江とやっちまったんだ……) 直江に散々突っ込まれた孔が充血してジンジンしているのがわかる。指や舌で弄られた胸の粒も痛い。何度も食われるように口づけされた唇もヒリヒリしている。 部屋の明かりが消えててよかったと高耶は心底思った。明かりが付いていたなら全身が真っ赤に染まっているのがバレるところだ。 「高耶さん。眠ってしまったの?」 「…………」 夜明け前に目覚めてしまった自分を高耶は恨んだ。こんな状態で眠れるわけがない。朝までどうやって過ごせというのか。 「高耶さん?」 「…………」 高耶は狸寝入りを決めこむことにした。 「高耶さん」 (しつこいぞ直江!オレは寝てるんだ!) 「高耶さんって」 「…………」 その声に、笑いを押し殺している気配を感じるのは気のせいだろうか。 (いや……) この密着した状態で、全身を硬直させている高耶に直江が気付いていない訳がない。壊れたように早鐘を打つ心臓の音が伝わっていない訳がない。 「っ!!」 高耶は息を呑む。背にあった手が下肢へと滑り下りたかと思うと、充血して疼く場所をつついてきた。 「起きているんでしょう?」 耳に低く囁きながら、直江はその指を更に蕾の奥へと差し込む。 「な、直江!!」 高耶は直江の胸に手を付き、上半身を起こして叫んだ。 「おはようございます高耶さん」 指を高耶の中に入れたまま、直江はにっこりと笑って言った。 「でも朝にはまだ早いですね。もう少し眠っていていいですよ」 「だったら起こすな!っていうか抜け!!」 「何を?どこから?」 「てめっ…………んっ…!!」 高耶が怒鳴ろうと開けた口から熱い息が漏れた。 「あ……やっ……そこやめっ!」 「寝たふりなんてするからですよ」 「こっ……のぉ!」 一発殴ってやろうと高耶は拳を固めた。とその直後、高耶は直江の胸に倒れこむ。背中に回った直江の両腕に、拳を固めた腕ごと抱きしめられていた。 「離せ!殴ってやる!」 「そんなこと言われて離す人はいません」 「ちくしょう!手がダメならこうするまで……だっ!」 高耶は足を振り上げ思い切り蹴飛ばしてやった。しかしその足も、直江の両足でがっしと挟まれ拘束されてしまう。 「さて、次はどうしますか?」 「……噛みついてやる」 「それはぜひ……ここにお願いします」 吐息とともに押し付けられた唇に高耶は望みどおり食らいついてやった。 子猫の甘噛みのように直江の唇や舌に何度も噛み付く。しばらく好きにさせていた直江は隙をついて反撃に出た。噛み付こうと大きく開かれた高耶の口に舌を浸入させ、口内を弄る。 「んっ……!!」 侵入者に噛み付こうとする高耶の攻撃をかわし、逆に彼の舌を吸い取って噛み付き返す。高耶も負けじと反撃してくる。 まるで指相撲でもするように、ふたりは舌と歯で合戦を交えた。 「ね……寝るんじゃなかったのかよ!」 先に白旗を上げた高耶は、唇を離すと荒い息をしながら言った。 「こんな状態で眠れると思いますか?」 「ば……ばか!」 ぐっと腹部に押し付けられた堅い感触に、高耶の頬が赤く染まる。 「そういうあなたのだって、ほら、だいぶ……」 「だだだ黙れ!つか触るな!」 「眠いのでしたらどうぞ眠ってください。私は私で好きにしますから」 そう言って、直江の手は高耶の体を弄り出す。 「好きにすんじゃねぇ!」 「気にせずどうぞ寝ててください」 「眠れるか!!」 高耶は逃れようと身をくねらせて暴れるが、直江の上に乗っかったこの体勢では、彼の体に自分の体を擦り付けることになるだけだった。 「あれだけじゃ足りない……もっとあなたが欲しいんです」 直江の足が高耶の足を間に入り、左右に開かされる。無防備な後ろの孔に再び指が潜ってきた。昨夜の名残が指をなめらかに奥へと運ぶ。 「あっ……ああっ!」 いいところを探ると高耶の腰が跳ねるように揺れた。その動きを利用して、直江は高ぶるふたつの雄を擦り合わせた。 「もうこんなにして……本当にいやらしい体ですね」 「このっ……あとで覚えてろ!」 「もちろん覚えておきます。この肌の感触も匂いも味も声も……あの時のいい顔も……」 「ヘンタイ野郎……んんっ」 なおも非難しようと開いた口はキスで塞がれた。 高耶が理性を保てたのはここまでだった。 海千山千の直江の手管に、頑なな体は瞬く間にどろどろに溶かされる。 昨夜のは初心者編だったとでもいうように、今度の直江は容赦なかった。 2度目の交わりは、高耶を四つんばいにさせて後ろからねじ込んだ。 3度目は、嫌がる高耶を無理やり自身の上に跨らせ、その腰を引き下ろして貫いた。 「あああっ!!」 「高耶さん……愛しています」 「なおえ……あっ……あっ……はぁっ……ああっ」 直江に跨り、突き上げられ、揺すぶられ、高耶は甘く掠れた声を上げ続けた。 その交わりは、鳥のさえずりが聞こえるまで続いた。 |
おかしい……イチャイチャ後朝編の予定だったのですが……なんかおっぱじめてしまいました。 上手く予定通りの展開にもっていけず行き詰まってたしまったので、たまには筆の流れるまま書いてみようと思って書いたらこうなりました。 直江がエロいのが悪いんだ!! しかもなんか尻切れとんぼですみません。気が向いたら加筆します。 裏にするには、物足りない気もしますが、一応裏で。(表に置きたくないので……) 2006.08.21 up |