◆ 7 ◆「何すんだこの野郎!!!」
一気に眠気を吹っ飛ばした高耶は、怒鳴った。いや、怒鳴りたかった。
だが、唇を塞がれた状態では、それは声にならない。
「〜〜〜!!!!」
声を出そうと口を開けば、更に深く食らいつかれる。
舌で、男のそれを押し出そうと抵抗すれば、罠にかかったように絡みとられる。
「・・・・んっ・・・」
わずかに開いた唇の隙間から、高耶の意思とは無関係に甘い息が漏れた。
その自分の甘い声に驚いて目を開ければ、熱を帯びた鳶色の瞳とぶつかる。その瞳は一瞬笑みを浮かべた。
(この野郎〜笑いやがったな!オレがこんなに苦しんでるのに!!)
そんなズレたことを思いつつ、高耶は、その男の嬉しげな瞳をギリリと睨みつけ、右手の拳に力を込めた。
ペチッ。
その拳は、見事に直江の左頬に決まった。
だが、この拘束された状態では加速度に問題があり・・・なんとも気の抜けた音が部屋に響く。
直江は、一瞬驚いたように目を見開き、それからゆっくりと高耶に圧し掛かっていた身を起こした。
何はどうあれ、やっとその執拗なキスから開放された高耶は、ソファーからフラフラと起き上がった。
「・・・私のことが嫌いですか?」
酸素を求めて、ぜーはーと息をしていた高耶に男は、開口一番、そんなトンチンカンな問いを投げかけてくる。
「なっ・・・!!」
あまりの怒りと酸欠に言葉が出ず、高耶は、口をパクつかせる。
「こっの!変態やろう!!なにしやがるっ!!・・・オレの・・・オレの・・・ファーストキスを返しやがれ!!!」
なんとか息を整えつつ、まだキスの名残のある赤く潤んだ目で抗議した。
「え?初めてだったんですか?」
が、男の興味はそこだった。
「だったら何だ!」
家庭の経済事情もあり、中高時代からバイト一色だった高耶には、これまで色恋沙汰に割く時間も余裕もなかった。もっとも、同級生たちに比べて恋愛ごとに興味が薄かったというか、不得手だったせいもあるが。
「初めてで悪りぃかよ!」
「いえ、嬉しいです」
ふて腐れた高耶に男は即答した。その顔にはとろけそうな甘い笑みが浮いている。
「・・・・・・」
高耶の顔が引きつる。嫌な予感がした。
「あなたのことが」
(まさか・・・)
「好きなんです」
その予感は的中し、更にとどめのような次のセリフが続く。
「あなたが欲しい。・・・いいでしょう?サンタさん?」
「うわ〜〜!やめろ〜〜!!」
再び高耶をソファーに押し倒した直江は、彼の衣服に手をかける。
「この馬鹿!ふざけんな!!」
ジタバタと暴れ、警察を呼んでやる!と涙目で叫ぶ高耶にもお構い無しに、直江は、ほいほいと彼の衣類を剥いでゆく。
今日の高耶の服装はジーンズにパーカー。しかも、よりにもよってパーカーは、フロントファスナー付き。
(なぜオレは、トレーナーを選ばなかったんだ〜!)
激しく後悔する高耶。が、どっちにしても結果は同じだろう。
瞬く間に剥ぎ取られ、膝まで下ろされたジーンズと、腕まで捲り上げられたTシャツに手足の自由を奪われる。
もはやまな板の上の鯉だった。
(マジで・・・やばいかも・・・)
高耶の脳裏を、親友や、かわいい妹の顔が走馬灯のように駆け巡る。
(ごめん美弥・・・兄ちゃんはもう、清い身では帰れないかもしれない・・・)
そんな懺悔を心中でしながら、高耶は、自分を押し倒す男を見上げた。
思っていたよりも、真剣な瞳がそこにあった。
その熱い視線に少し怯む。思わず逸らした視線が今度は彼の唇を捕らえた。・・・なぜか鼓動が早くなった。
高耶は無意識に、ごくりと唾を飲み込む。
それに答えるように、男の熱い唇が降りてきた。
高耶は、何かの術にかかったかのように、ゆっくりと目を閉じ、それを受け止めた。
軽く触れ合い、ついばむような口づけだった。その優しい甘いキスに、高耶の思考は、段々ぼんやりと溶かされていった。
それを何度も繰り返したあと、キスは突然噛み付くような激しいものへと変化する。
「・・・は・・・ぁっ!」
仰け反るようにしてキスを受ける高耶の首筋を、大きな手が、くすぐるように優しく、行き来し、それはやがて胸へと移る。
「んんっ・・・!」
胸の突起を散々弄られる。そして腹部を、わき腹をくすぐりながら下へ下へと移って行き、高耶を快楽に染めていった。
深いキスと胸から下肢へと淫猥に撫でまわす男の手に、高耶は陥落していった。
>BACK >NOVEL TOP >NEXT(※裏へ。以下のコメント参照)
※NEXTは、このページにある裏の入り口からどうぞ。明らかに怪しげなところをクリック!さあどこでしょう!!(笑)