サンタが家にやってきた 8



 ◆      8      ◆
 
 
「ああんっ・・・やめっ!・・・ああっ!!」
快楽に身を任せていた高耶だったが、股間に顔を埋めてきた直江に流石に制止の声を上げた。視線を下げると、自分のものをしゃぶっている男の姿が目に入る。
見せ付けるように、赤い舌でゆっくり舐めまわし、耳を犯すように、卑猥な音を立てて吸い上げる。
「あっあっ!・・・ああんっ!!」
高耶の中で、理性が壊れた。
嫌がるようによじっていた腰は、男の律動に合わせて艶かしくゆらめく。快感に狂いそうだった。
「もっと足を開いて・・・」
直江は、高耶のわななく太ももを掴み、更に大きく開かせようとする。
「ん・・・やっ・・・できな・・・!!」
「開いて。あなたが欲しいんです。・・・サンタさん、プレゼントしてくれるでしょう?」
そう言って、男の腕にぐっと力が込められ、高耶はあられもなく足を開かされた。
片足をソファーの背もたれに架けられ、もう片方を直江の手で押さえつけられる。
「・・・やっ・・・!」
まどろっこしい愛撫を加えられながら、腰の下あたりにクッションを挟まれた。
自分が何をされようとしているのか、高耶にはわからなかった。
ありえない場所に、ありえない感触を感じる。
ぴちゃぴちゃと濡れた音をたてて、柔らかくて熱いものが、孔のふちを蠢いていた。
それはやがて、入り口への侵入をはかり、それと一緒に、細長いもの・・・そこへ入れるには太いものが入り込んできた。
「・・・んっ!!痛!!」
その高耶の声に、直江は入り口を弄っていた舌を引っ込め、掻きまわしていた指の動きを止める。
直江は、男を相手にするのは初めてだった。昔、悪友に冗談半分に聞かせられた、男同士のセックスの仕方を思い出しながらのぶっつけ本番だ。
だから慎重に、様子を見ながら・・・そう思うのに、この欲望の暴走は止められない。
ラストチャンス。
そう思うから、よけいに難しかった。
(ここで彼を落とせなかったら・・・こんなことをした俺を彼は許してはくれないだろう・・・)
体だけでも・・・快楽でいいから、彼を繋ぎとめるものが欲しかった。
彼が欲しかった。
直江はさらに、高耶にむしゃぶりついた。
「んっ・・・なお・・あっあっ・・・!!」
後ろに指を入れられたまま、前を弄られる。高耶の目はもはや焦点を結んでいない。
「あっ!・・・んっ・・・そこ・・・もっ・・と・・・ああっ!」
しっとりと濡れた唇の間から赤い舌をのぞかせ、脳を溶かすような甘い声でねだられる。
「なお・・・え・・・」
快楽に染まった黒い瞳が自分を見つめている。
少し前までピザを頬張っていた健全な青年と、とても同一人物とは思えない、妖しい色香を放っていた。
直江は感情のままに激しく口付け、乱暴なほどに高耶の身を弄った。
「あっ!・・・やぁ!・・・あああ!!!」
絶頂を迎えさせられた高耶の体がソファーに沈んだ。
直江は、脱力した高耶の顔を、そしてその髪を優しくなでる。
これからが本番だ。
(できるだけ辛くないようにしたいが・・・)
ここにきて、直江は少し躊躇する。その間に、虚ろだった高耶の瞳が焦点を結びはじめた。
そして、ぼんやりと直江を見つめたかと思うと、途端にポロポロと泣き出してしまった。
「た・・・高耶さん?!」
どうやら正気に戻ってしまったようだ。
嗚咽をあげ、大粒の涙をこぼす高耶。
・・・直江は降参するしかなかった。
「申し訳ありません・・・」
そう言って、全裸同様の高耶の体を抱きしめる。
その胸を高耶は、力の抜けた手でポカポカと叩いた。
それでも腕を緩めず、直江は未練がましくその濡れた頬に口付ける。
「あなたが好きなんです・・・」
「だからって・・・やり方ってもんがあるだろ!!」
「はい、その通りです」
「順序ってもんもあるだろ!!」
「はい、全くです」
「こんな・・・こんなことしやがって」
あれやこれやを思い出して、高耶は顔から火を噴きそうだった。
(でも・・・だけど・・・)
「・・・これで、プレゼントはちゃんとあげたな?・・・そういうことにしとけ」
「え?」
(まあ、気持ちよかったし・・・オレもその・・・煽ったし・・・)
「・・・帰る」
「高耶さん?!」
もっと責められて、詰られて、ひょっとしなくても警察に突き出されるかと覚悟していた直江は、心底驚いた。そして・・・消えたはずの『可能性』の3文字が急浮上する。
「おい、帰る前に気持ち悪いからシャワー使わせてもらうぞ」
そう言って、バスルームへ消える彼の後ろ姿に飛びつきたい衝動を抑えながら、直江は次なる手を考えていた。


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・・・・おそまつさまでした。これが今のいっぱいいっぱいです。次で完結予定。
はっきりいってこの直江、変態ですね。エロオヤジですね。
H、最後までやっちゃうと、ハッピーエンドにならなさそうなんで、思いとどまりました。
途中まで書いてたんですが・・・私が書くと、なんかすんごいシリアスになってしまい、
高耶さん本気で傷ついてしまったんで、やめました。・・・妙なとこで真面目なようです。


2005.2.11 up