ここは、グロンギ怪人を個別に解説しちゃう部屋です。
グロンギ怪人は、人間体の役者がいる分、
過去のライダー怪人と比べても、個性的な連中です。
その魅力の一端でも、伝わればいいかな、と思っております。
ただ、「クウガ」という1作品の中で論じるだけでなく、
ライダー史を通じてのツッコミや、
NOVA的感想なんかも触れていきます。
長文覚悟!
記念すべきクウガ怪人第1号のクモ男。劇中登場怪人で、唯一、人間体
が描写されていないのも特徴。
最初に見たとき、「サングラスをかけて、緑色の肌をした、モヒカンの怪しいフンドシ男」にしか見えず、いわゆるライダー怪人というよりも、「現実の怪(しい)人」に思えた。
クウガ怪人は「独自の文化を持った異民族」なので、より人に近い形態ということだが、それまでのライダー史の中では、「BLACKのクモ怪人」や、「ZOのクモ女」など、より生物的なクモ型怪人が示されていたので、一番、最初の視聴時は、「何だか格好悪い」「にわかに受け入れがたい違和感」を感じた。
まあ、この第1話では、五代という軽すぎる主人公も受け入れがたかったし(一条の方が、よりライダーにふさわしいと感じてた)、ハイビジョン映像にも違和感あったし、いろいろと不安はあった。だが、まあ見続けてよかったと思います。
で、このクモ男ですが、クモらしく糸を出すのが特殊能力です。変身ベルトのアークルを狙って長野県警を襲撃。そのドサクサで、現場に居合わせた五代がアークルを身に付け、変身するわけですが、その時の激突で壁が破壊される映像がグッド。人間以上の怪力を視覚的に描写してます。で、一条の乗るヘリコプターにしがみついての空中戦なんかも行ったあげく、第1話では撤退。第2話で、クウガとゴオマの戦いに乱入。初のマイティーキックで倒されるわけですな。キックの際、焼印を押されたような紋章が浮かび上がったのが印象的。
ライダー史において、クモというのは、「元祖クモ男」以降、「アマゾンのクモ獣人」、「スカイライダー第2話のクモンジン」など、序盤の定番怪人です。原点回帰というと、必ずクモということですな。その流れにクウガも乗ったわけですが、その後、どんどん、原点をくつがえすようになってきます。
あと、補足ですが、クウガ第1話をいっしょに見た特撮ファンの友人の感想は、「古代に封印されていたアイテムで変身し、しかもカラーチェンジするなんて、ウルトラマンティガと同じやん」。確かに、そのとおりだと思いました。
コウモリ男。
クモの次は、コウモリというのもライダーシリーズの伝統ですな。
吸血鬼はNOVAも好きですが、こいつの吸血には伝染性がないので、あまりドキドキはしないかな。NOVAの好きなホラー映画のネタは、「人間の怪物化と、その感染・増殖テーマ」ですが、クウガ怪人には、そんな要素はないんですねえ。まあ、いいけど。
ゴオマのデザインは、グムンよりも格好いいです。とりわけ、翼の皮膜がね。
で、神父に化けた人間体も格好良かった……が、一度クウガに敗れて、生き延びてからは、どんどん、イジメられっ子になっていく。情けないながらも、不気味な演技が印象的です。で、バラ姐の腰巾着になったりもしながら、いつかのし上がってやるみたいな気迫を感じさせてくれます。
で、3クールが終わるころに、ダグバのベルトの破片を体内に埋め込んでパワーアップし、人間体も筋肉ムキムキなのを見せる。一番、多彩な演技を見せた役者さんですね、藤王みつるさんって。で、ザザルやガドルとも戦うなど、とにかく暴れまわって、とうとう39話で「強魔」というサブタイトルにまで登場。で、その回でクウガを圧倒。しかし、最後にはホラー描写たっぷりの演出で、ダグバに殺された死体として発見される。
とにかく、この39話は、クウガの中でもとりわけアクションが多く、最高傑作だと思います。
ヒョウ女。
クウガ初の女性怪人。足の速いのが特徴で、トライチェイサー登場の必然を作った。舞台が長野から東京に移り、一条と五代の関係が密接になるなど、重要な回に登場。ただし、怪人自体の個性は希薄かな(この回は、怪人1体の描写よりも、伝えるべき情報が多すぎたんですね)。
プライドが高い……というよりも短気で、すぐキレる。若者に絡まれ、タトゥに触られただけで、怒り狂って相手を惨殺。その後、警官隊の銃撃で右目を負傷、執拗に警官への殺戮を繰り返す。杉田刑事が彼女に殺されそうになったところをクウガが救うなど、名シーン演出を生み出した。
最後は、トライチェイサーに追いつめられ、マイティーキックに倒される。
これを見て、当初は「文明に順応できない異民族が衝動的に事件を繰り返す」のが、クウガの物語だと思っていました。
ヒョウ女って設定は、ライダーよりも、少女コミックの「闇のパープルアイ」を連想しました。
バッタ男1号。
優れたジャンプ力が特徴で、ドラゴンフォーム登場の必然を作った。で、ドラマ的には桜子さんが五代の応援を決意する話なんですが、そんなことは関係なしに、この怪人は個性的。
なんたって、バッタ男=偽ライダーですよ。後の赤マフラーの兄バダーよりは、地味な緑マフラーですが、それでも自在なジャンプ力で人々を惨殺し、クウガをも翻弄する、余裕に満ちた姿はカッコいい。グロンギ怪人が、ただの衝動的殺人鬼でないことを、印象づけました。
こいつのジャンプ力に太刀打ちできない赤クウガが、「バッタの跳躍力を持たない、クワガタ虫」であることも実感させてくれました。また、超変身が万能ではなく、各フォームごとに長所だけでなく、欠点もあることも描写。五代がだんだん、クウガの能力を身につけていく様子がドラマとともに描かれる、クウガ第1クールの楽しみが味わえる回です。
また、工場の煙に弱いことを警察が分析する過程は、非常にリアルな科学捜査を感じたし、緒戦で傷ついた五代が椿に診てもらうなど、クウガのドラマ面を構築するきっかけにもなった名怪人といえます。
ハチ男。
ハチ怪人といえば、女という印象がある「旧1号ファン」ですが、こいつは男です。人間体を演じたのは、「カクレンジャーのイエロー・セイカイ」役の人。でも、印象は大分変わってました。
この怪人の殺人方法は、毒針による高空からの精密射撃。これは恐いですよ。歴代ライダーでも、こいつに対抗できるのは、飛行能力か飛び道具をもった者だけですね。名指しするなら、X(クルーザー使用)、スカイライダー、スーパー1(レーダーハンドミサイル)、ZXやRXロボライダーくらいですか。
V3なら、ホッパーを武器代わりに使えたらいいんですが、そんな描写はなかったですからね。サイクロンやハリケーンなどバイクのジャンプ力でも、飛べるわけではないから届かないと思うし。
アマゾンなら、危険を察知する野生の勘で、毒針を回避できるだろうけど、攻撃手段がない。ジャングラーの翼に、飛行能力はないだろうし。
ストロンガーの電気技は、接触が必要だし、まさか落雷を呼ぶような大技を使いでもしないかぎり、対抗できないでしょう。もっとも、そんな大技を何の伏線もなく使うのが、ストロンガー本来の味ですが……(笑)。
そんな感じで、クウガ・ペガサスフォームの登場と相成ったわけですが、実際の戦闘時間は一瞬。時間のほとんどは、夏目実加ちゃんに割かれていた回でした。
「初のメ怪人」というトピックも、それほど掘り下げられなかったし。
イカ男。
最初見たとき、イカって気付かなかった。得意技は「火炎弾」……って、イカは墨を吐くけど、火は出さないだろう。火を放って、焼け炭にするとか?
過去のライダー怪人では、隕石落とすイカデビルとか、火を吐くイカファイヤーなんていたけどね。
でも、こいつの脅威は「火炎弾」だけでなく、「軟体質の体」なんです。キックでもロッドでも、打撃系の技は衝撃を吸収されちゃう。1発しか撃てないペガサスボウガンは、少々リスクが大きすぎる。よって、切断・貫通系の武器を持ったタイタンフォームの登場となるわけです。
あと、こいつの殺人描写では、制服着た女子学生が襲われたシーンがありましたが、それを見た友人の感想は「もったいない。この怪人は許せん」でした(苦笑)。
サイ男。
ゴオマを除いて、最後のズ怪人。
怪人体よりも、人間体のほうが強そうな稀有な方。それもそのはず、人間体の本職はプロレスラーだそうな。生身同士の戦いで、五代にスリーパーホールドをかける場面もあって、プロレスファンは必見です。
車のアイドリング音に激しく興奮する性質をもっており、当初の「都会に順応できないグロンギ怪人」の印象が強い。
でも、ライダーに特訓をさせた怪人という点で、印象深い活躍。
また、警察犬に匂いを覚えられ、アジトを警官隊に包囲されるなど、おっちょこちょいな面も持っており、非常に憎めない、味のある怪人でした。
ピラニア男。
鋭い歯による噛みつきで、船上の人々を虐殺した。
この時期の怪人は、水棲生物に偏ったのと、ゴウラムの出現と、人間ドラマ中心の作風の影響で、インパクトが薄い印象。
この怪人は、グロンギに憧れる若者、蝶野くんを「獲物呼ばわり」し、グロンギが基本的に話し合いの余地のない弱肉強食の世界に生きていることを示してくれました。
あとは、ザインとしばしば衝突していたことぐらいしか、書くことがない。
ヤドカリ男。
トラックで人をひき殺す。
トライゴウラムとの対決で、トラックごと倒される。
あっ、終わっちゃった。
トラ男。
でも、長いたてがみはどう見てもライオンっぽいけどなあ。
名前が、セガの某家庭用ゲーム機を思い出させる。
クウガの総集編の裏で、延々と戦いつづけた挙句、たった1話で倒される。
よって、インパクトは薄い。
キノコ男……というよりオカマ。
こいつの攻撃方法は、キスで毒胞子を吸わせる暗殺術。
おかげで、五代君も死にそうな目にあいました。が、それがきっかけで、ライジングフォームを会得したわけですから、結果オーライということで。
白いクウガに倒された怪人としても、記憶に残る怪人。
また、倒されてからも手首から「変異体」が再生するなど、とにかく久々にインパクト大な怪人でした。
カメレオン男。
元は、「ズ・ガルメ・レ」。つまり、「ズ」から「メ」に昇格したわけである。
当初から顔を見せている、こいつの人間体は、視聴者の友だった。何しろ、カメレオンらしく舌が達者で、一番早く日本語を覚えて話し、よく分からんグロンギ語に、多少とも解読の糸口を与え、また、グロンギの目的が「殺人ゲーム」であることまで知らせてくれたのだ。達者な口で、他の怪人にもしばしば皮肉を浴びせる。
カメレオンらしく姿を隠す能力を持っており、超感覚のペガサスフォーム登場以前は、クウガにも倒すことができなかった。その後、ペガサスボウガンでようやく撃退されるわけである。
こいつが倒されるエピソードの前編(第21話)から、バダーが現れ、また、ライジングフォームの登場など、クウガ中盤の山場に話が加速していく。
カマキリ女。「メ」で唯一の女性怪人にして、最終怪人。
「ゴ」には女性怪人が3人もいるし、ガリマも「ゴ」に昇格しそうだったわけだから、グロンギの社会が男尊女卑とは無縁の実力社会だということが、よく分かる。
彼女は、「ゴ」と同じやり方で、「ゲーム」を開始する。つまり、無差別な殺人ではなく、一定のルールに基づいた殺しであり、武器を用いるものだ。
彼女の場合、電車の車両にいっしょに乗り合わせた乗客にマーキングをつけ、その首を得物の大鎌で切断する。狙う相手の真横をすれ違ったあと、「振り向くな」とささやく。相手が振り向いた瞬間、首が切り落とされているわけだ。
彼女の狙う獲物の中には、桜子さんも含まれており、非常にサスペンスフルな展開を見せた。
大鎌の攻撃に対して、クウガはタイタンフォームで対抗。さらに、初のライジングフォームを披露。ライジングカラミティタイタンが決め技となった。
おまけ:TV未登場の怪人たち
クウガの未確認生命体は、TV本編に登場したものが全てでないことは、ファンならよくよく承知していること。例えば、「第6号のバヅー」の後は、「第14号のバヂス」まで番号が飛んでいるんですね。で、この飛んだ番号の怪人も、きちんと大まかな設定だけはあるのです。
それらの設定は、「こちらのリスト」にある通りなのですが、ほとんどはクウガのマイティーキックに倒されています。おそらくは、特筆するドラマのないエピソードなので、カットされたか、あるいは没脚本とか、いつかファンが外伝なんかを作りやすいためのネタの提供か、まあ、いろいろと想像がふくらみます。
ここでは、マイティーキック以外で倒された怪人について見ていきましょう。
まあ、そんな感じで、クウガにはまだはっきり語られていないエピソードも多い、と。ただし、ガリマ以降は、いずれも重要なエピソードらしく、欠番は皆無ですが。
それでも、ダグバに殺された、番号すら付けられていない未確認は、まだ100体以上もいますので、自分で自由に設定する余地は十二分にあります。