川崎航空機工業ボディのダイハツライトバス (ダイハツ編_2)


昭和30年代、「三輪から四輪へ」の掛け声の元に
企業の体質改善を行ったダイハツ工業。

そんな中、多角化の一環として生まれたのがダイハツライトバスだ。

同社のマイクロバスは、昭和33年に発表した最初の四輪トラック「ベスタ」
を元にして昭和35年9月に発売されたDV200N型 小型マイクロバスに始まるが、
オート三輪の時代、既に後部を客室に改装した幼稚園車を販売していた。

以降、昭和37年にはリヤエンジンのNR251型など意欲的な製品を世に出すが、
その中で主力として生産されたのが、SV型ライトバスだ

ボディ架装はいすゞBL型マイクロバスやマツダライトバスAVEAの架装
で知られる川崎航空機工業が担当した。

タイヤを車輪に変えて国鉄の保線用モーターカーとして活躍した車もあったようだ。


1964 ダイハツ 
SV20N型 ライトバス試作車


第11回東京モーターショーに出品された
SV20Nライトバス。定員22名。

前年まではDV201Nが展示されていた。

発売は同年11月。
(1965年9月とも)

シャシーはV200トラックからの
流用で、エンジンは2種用意された。
型式 種類 エンジン 出力
SV20N ガソリン FB型1,861cc 80PS/4,600rpm
SV22N ディーゼル DE型2,270cc 63PS/3600rpm

出典:モーターファン1964-12別冊付録 11thモーターショー
1965 ダイハツ 
SV20N型 ライトバス


2tトラックのシャシーに
“川航製”ボデーを架装して登場。

凸型のグリルが特徴的だ。

長尺ボディのSV35Nは1965年7月発表。

後に、短尺車にFD型を積んだ
SV30N型が追加されている。


出典:ダイハツ工業広報写真
1967 ダイハツ 
SV20N型 ライトバス


全く同じと思いきや、見比べると
部分的な小変更を発見。

写真から伺えるのは

リヤのホイールアーチ拡大
サイドウインカー形状変更
乗降扉窓ゴムの白色化
ホイールの白塗装化

ホイールアーチの拡大は、
ダブルタイヤ車への対応と思われる。

出典:自動車ガイドブックVol.13 1966-67 
1967 ダイハツ 
SV35N型 ライトバス


定員25名の長尺版を示す。
型式はシングルタイヤがSV27N、ダブル
タイヤがSV35N?資料により食い違い有。

クラス最強のエンジン(95PS)を搭載。

マイクロバスエンジン比較(1966年現在)
車種名 型式 エンジン 種類 排気量・馬力
ダイハツライトバス SV35N FD G 2,433cc 95PS
日産エコー GC240 H20 G 1,982cc 92PS
三菱ローザ B22D KE63 D 3,520cc 92PS
プリンスライトコーチ B632 G2 G 1,862cc 91PS
マツダライトバス AVEA VA G 1,985cc 81PS
トヨタライトバス RK170 3R-B G 1,897cc 80PS
いすゞライトバス BLD20 C220 D 2,207cc 62PS

出典:自動車ガイドブックVol.13 1966-67 
1967 ダイハツ 
SV35N型 ライトバス


1966年10月の第13回東京モーターショー
での展示。

自動車の年式制は1964年に終わっているが、
それまでのイヤーモデルの切り替えが10月
だったため、ここでは1967年とした。

後ろにはV100マイクロバスの姿が見えるが、
この年の車種バリエーションは9種類に及ぶ。

(ダイハツ工業六十年史によるSV型バリエーション一覧)
登場年 型式 エンジン 種類 定員 後輪
S39.11.1 SV20N FB ガソリン 22名 シングルタイヤ
SV22N DE ディーゼル 22名
S40.3.1 SV30N FD ガソリン 22名
S40.7.1 SV35N FD ガソリン 25名 ダブルタイヤ
SV27N DE ディーゼル 25名 シングルタイヤ
S40.11.1 SV25N FB ガソリン 25名 シングルタイヤ

出典:モーターファン1966-12別冊付録 第13回東京モーターショー
1969 ダイハツ 
SV25N型 ライトバス


この年、マイナーチェンジが行われたようで、
グリル中央にダイハツのCIマークが付く。
この変更はV200トラックも同様だった。

よく見るとホイールキャップもセンターの
突き出しがないものに変わっている。

ディーゼル車のエンジンは初代デルタと
共通のDG型2,530cc 80馬力に変更。
25人乗りシングルタイヤ車はSV37Nとなる。
ガソリン車はFB型エンジンで変更なし。

(大阪ダイハツ50年史よりSV型追加車種)
登場年 型式 エンジン 種類 定員 後輪
S43.10.1 SV32N DG ディーゼル 22名 調査中
SV37N DG ディーゼル 25名 シングルタイヤ

出典:自動車ガイドブックVol.15 1968-69
1972 ダイハツ 
SV37N型 ライトバス



塗りわけパターンが更に変わったようだが、
ボディそのものに大きな違いは見られない。

自動車ガイドブックへの掲載は
この年で最後となる。
SV型の生産は昭和48年度上半期で終了。

『ダイハツ工業100年史』によると、ライトバスの
生産は1960〜1975年で計3,748台。

これはDV200N以降の全モデルを含めた累計だ。

1970年に三菱ローザの生産累計が1万台を達成
していることを思うと、残念ながらシェアは低い。

出典:自動車ガイドブックVol.19 1972-73
Unknown ダイハツ
ライトバス


以上の調査を踏まえて、現存車の判定を試みたが、
結局詳しい事が分からなかったのがこちらの個体。

メーカーがこだわった、サッシュレスの
スッキリした引き違い窓がよくわかる。

・座席がヘッドレスト付きのハイバックシート
・単尺車(22人乗)ながらダブルタイヤ採用
・更に拡大され円形になったリヤホイールアーチ
・吊り下げ式のバックミラーは後年の改造か?

日産エコーがハイバックシートになったのが、
1970年だが、グリルは旧タイプ。

なかなか謎が多い。

1969? ダイハツ
ライトバス

もう一つ別の現存車、こちらは長尺です。

緑とクリームの塗り分けはメーカー純正だと
思われますが、上で紹介した中に合致する
ものはありません。
(屋根は近年化粧直しされたようです)

資料にはないサイドモールの存在も良くわかりません。

ウインドシールドの刻印を確認したところ、69と
ありました。この時代だとガラスの製造年の可能性が
ありますが、藤原工業の米国運輸局許可番号が
DOT69という悩ましさ。やや決め手に欠けます。

藤原工業製のガラスを採用した自動車は
かなり珍しく、この刻印は初めて見ました。
大阪ローカルな感じがします。

後ろ姿を見ると窓ガラスは前後共通のような気がします。

テールライトはいわゆる『バス協テール』と良く似ていますが、よく見比べるとビスの位置が違い61〜64年のいすゞTX・TD用と酷似。

車体には「大人25人乗」と書いてありました。
G2500のバッジは搭載エンジンが2500ccのガソリン
(FD型)という意味でしょう。シングルタイヤなのでSV25N?

資料にはないサイドモールの存在も良くわかりません。

実はバリエーションが多いダイハツSVでした。


【参考資料】
『五十年史 ダイハツ工業株式会社』(1957)
『六十年史 ダイハツ工業株式会社』(1967)
『道を拓く ダイハツ工業100年史』(2007)
『大阪ダイハツ50年のあゆみ』(1981)
『荒川車体の40年』(1987)
日本自動車工業振興会 『自動車ガイドブック』 各号
『モーターファン』 各号

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