●2005年5月24日(火)・幕間(フィールドその1)
広がるオープンフィールド。
これまで、長らくダンジョン探索を続けてきた一行の目には、すこぶる新鮮な光景として映りました。
NOVA自身、これまでBG、そしてアイスウィンドをクリアしてきましたが、フィールドマップがこれほどまぶしく見えたのは初めてです。
D&D以外のゲームで言うなら、FF3で初めて浮遊大陸を飛び立ったときの海洋の広がり、あるいは、WIZ6で初めてダンジョンから3Dフィールドマップに出たとき、および、スパロボGCで初めて地球圏から外宇宙に旅立った際に、同種の感動を味わいました。これまでなじんで来た冒険の場が、急に広がりを得た瞬間。
D&Dに話を戻すと、BGは初めから自由に探索可能で、バルダーズ・ゲートの街に入ることで収束していく物語構造になっております(メインはフィールドおよびシティーアドベンチャー)。一方のアイスウィンドは、自由度の少ない一本道構造のストーリーで、お使い任務さながらに多彩なダンジョン探索を進めていきます(ドラクエ風)。
そして、このミス・ドラは、BGのような広がった世界を探索する自由さも、アイスウィンドのような変化に富んだ多彩なダンジョンもありません。ただ、ひたすら広大かつ単調なダンジョンを、自分で自由に探索していくゲームです。その意味で、初期のウィザードリィ(WIZ)と同じ、ダンジョン探索とキャラ成長のプリミティブ(原初的)な楽しみを追究する作品なのですが、WIZでは割と区分けされていた階層構造(一つの階をクリアしてから、次の階の探索が始まり、階層間をまたぐイベントは少ない)に対して、
ミス・ドラでは、階層構造すら高い自由性を備えています。すなわち、一つの階を完全にクリアする前に、次の階への階段が複数見つかり、ある階でのイベントを解決するために、別の階まで行ったり来たりを余儀なくさせられる、といった非常にややこしい構造となっています。これは、正直言って面倒くさいわけですが、ダンジョン内を自由に動き回って、好きな順番で探索を進められる(その過程で、強敵と出くわして撤退を繰り返したりも^^;)という意味では、非常に自由度が高く、奥が深いゲームと言うことができます。
そんな作業にも慣れて、快く探索を進められるようになった矢先、いきなり広がった世界なんです。新鮮な戸惑いと、期待感を味わっております。
前置きが長くなりましたが、キャラたちも、そうした気分を満喫している、と思います。
エオウィン「う〜ん、かび臭いダンジョンを抜け出して、新鮮な空気がいい感じ」
ジミー「近くに敵は……いないようだな。これだけ視界が広いと、不意討ちなんかに気を付ける心配もなさそうだ」
メリー「リーダー、提案。散歩がてら、周囲の偵察に行きたいんだけど」
ジミー「う〜ん、確かに、偵察は必要だな。でも、一人で大丈夫か?」
エオウィン「私が付き合うわ。少し、体のこりをほぐしたい、とも思っていたし」
ジミー「いいだろう。オレたちは、この付近で、野営の準備でもしながら、待機している」
そんなわけで、「指輪の亡者」撃退コンビで、周囲の探索に出るわけですが、
エオウィン「メリー、お願いがあるの。私に、急所攻撃の技を教えてちょうだい」
メリー「忍びの技だって? 一体、どうしてだよ? 君は戦士として、十分剣術を磨いているじゃないか」
エオウィン「それでも、エメリックに比べると、鍛え足りないと思うのよ。私には、彼のような打たれ強さは望めない。それなら、強敵に押し切られる前に倒す一撃必殺の剣が欲しい、と考えたわけ」
メリー「分かった。君の戦士の技は、ぼくも身に付けていきたいと思っているから、お互いに教え合いっこ、すればいいね。ついでに、忍びとしての体さばきの方法とか、鍵開けの仕方なんかも教えるよ」
エオウィン「……ええと、あんまり細かい作業とか、罠の仕掛けみたいな頭脳労働は、学んでも身に付かない、と思うんだけど」
メリー「何言ってるんだ。忍びの技は、いろいろ関連性があるんだから、急所攻撃だけ身に付けようと思っても無理だよ。急所攻撃のポイントは、鍵穴や罠の仕掛けを見抜くように、相手の体の急所となる部分を素早く見出し、そこに的確に針金を通す感覚で、刃を差し込むことにあるんだ。勢いだけで武器を振るっていても、うまく行かないさ。練習用の錠前を渡すよ。それをダガーで、こじ開けてみて。その手探りの感覚が、急所攻撃の第一歩につながるはずだよ」
エオウィン「……やってみる」
と言ったように、攻撃力強化のために、ローグのレベルを上げようと考えたエオウィン嬢でした。
そして、偵察中の、二人の話はもう少し続きます。
エオウィン「メリー、あなたはジミーのことを、どう思う?」
メリー「何だい、突然に?」
エオウィン「う〜ん、最近、あの人のことがよく分からなくなってきた、と言うか、リーダーらしくはなってきたとは思うんだけど……何か、まだすっきりしないのよね」
メリー「ジミーは、リーダーとしてはまだまだ未熟だけど、立派なリーダーを目指そうと努力している、と思うよ。行動よりも先に口が出るから、最初は偉そうなことを言っているだけかと思っていたけど、言った分の努力はしているんじゃないかな。でも、時々、勢いで突っ走る面があるから、抑え役は絶対にいるね」
エオウィン「そうね……でも、あの口数の多さが気に入らないの。何だか、蛇の舌グリマを思い出す感じで……」
メリー「ええと、グリマって、サルマンのスパイだった奴?」
エオウィン「そう。舌先三寸で、セオデン王をたぶらかして、ローハンを滅ぼそうとしたあいつよ」
メリー「……あんな奴といっしょにされたんじゃ、ジミーが気の毒だよ。ジミーはもっと誇り高くて、責任感があって、旅の仲間で言えば、そうだなあ、ボロミアに近いんじゃないかなあ」
エオウィン「ボロミア様って、ゴンドールの執政の子の?」
メリー「少なくとも、ボロミアは強烈にリーダーシップを執ろうとしていたよ。ガンダルフや、アラゴルンがいたから、一歩引いた立場で振る舞ってはいたけど、それでも、しきりに自己主張はしていたな。誇りと責任感の強さが、<一つの指輪>につけこまれて、過ちを犯してしまったけど、その過ちを償うために、ぼくやピピンを助けようとして、オークの集団と戦って……壮絶な討ち死にをした、と聞いている」
エオウィン「ボロミア様は勇者でいらしたのね」
メリー「勇気はあったし、仲間想いでもあったんだ。でもね、ただ一つ、足りなかったのは、誇りの強さから、他人に対して謙虚になるって点だった。ボロミアは、ガンダルフを年長者として尊敬し、礼儀を示していたけど、その能力を評価するような姿勢は見せなかったな。アラゴルンに対しても、ライバル意識をはっきり示していた、と思う。その意味で、ボロミアは指導者として育てられてきたけれど、他人の好意を当てにするよりも、他人を思い通りに動かすことを望むタイプだったんじゃないかな。弱い者への慈愛は示すけど、強い者に対しては、自らさらに、その上に立とうという姿勢で臨んでいた。そういう人だった、と、ぼくは思うよ」
エオウィン「それが、ジミーと同じというの?」
メリー「最初はね。もっとも、ジミーの方が、いくぶん口は軽かったけど。……で、最近は、ジミーも変わってきて、謙虚さを示すようになってきた、と思う。ジャリアルやエメリックに影響されて、いろいろ考えたんだろうね」
エオウィン「……」
本記事のエオウィンは、もちろん『指輪物語(ロード・オブ・ザ・リングズ)』が元ネタですが、時期的には、ファラミアと出会う前、アラゴルンに憧れていた頃を想定しています。男装してデルンヘルムと名乗り、メリーとコンビを組んでいた頃。
NOVA個人としては、エオウィンがジミーのリーダーシップを認め、その後、恋愛対象として意識し……という流れを意図しているのですが、その思惑通りに進むかどうかは、キャラ次第です。
まあ、ジミーが成長して、アラゴルンやファラミアのようになれば可能性はあるのですが、どうもジミーって、ボロミアタイプなんですよね(傲岸不遜というか、大言壮語って点が)。原作のエオウィンが望むのは、「王としての品格」と「自信に裏づけされた謙虚さ」そして「ここぞという時の英雄的振る舞い」と考えるわけですが、果たしてジミーの場合、そこまで成長できるかどうか……。
エオウィン(エメリックがもう少し、リーダーシップを発揮してくれたらいいんだけどね)
複雑な乙女心ですなあ。
エメリックは、どうも「謙虚な従者キャラ」になってしまったようで、「戦士の名誉」は持ち合わせているけど、他人を押しのけて、どうこう言うタイプではない、と思います(任務に忠実な一兵士的立場)。
でも、彼女の気持ちはさておき、今は、冒険の進行の方に気を回します。
メリー「今、帰ったよ」
ジミー「ご苦労。で、周囲の様子はどうだった?」
メリー「西の方が、建造物が多い感じだった。東の方は、荒野が続いていそうで、探索にも時間が掛かる、と思う」
ジミー「ならば、まずは西から回ってみる、とするか」
こうして、偵察行の果てに、フィールドの探索方針を定めた一行でした。(つづく)
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