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テンプル・オブ・エレメンタル・イーヴィル
邪悪寺院の戦士たち
(その3)


 
 
●2007年8月23日(木)・雪辱戦(Return Match)

 対立する元素寺院との駆け引きの中で、邪神ザグトモイの復活に関わる力の宝珠<ゴールデン・デス・オーブ>を入手した邪悪パーティー。
 果たして、彼らはその力を用いて、何をなすつもりか?

ナイト「そんな危険な物は、破壊してしまえないのか?」

キラー「つまらないことを言うじゃないか、秋山。せっかく手に入れた力の鍵を、わざわざ破壊するぐらいだったら、最初から冒険を始めた意味がないだろう」

ゾルダ「だったら、素直にこれを火のアルレムに渡して、俺たちはグレーターテンプルの一員になるのかい?」

キラー「それも一つの選択肢だが、組織の一員になるのは、俺の性には合わない。どうせなら、組織を作るか、乗っ取るかしたいところだな。すぐには渡さず、しばらくこのまま探索を続けて適当に立ち回りながら、宝珠の力について調べてみる。俺たちの手に負えないと判断した時点で、アルレムに渡すなり、廃棄するなり考えたらいい」

リジェ「ところで、ミコさま。ザグトモイって、どんな神さま? 邪神の格で言えば、デズモゾーリャ様やヴェクナ様と比べて、どちらが上になるのかしら?」

キラー「ああ。いろいろ資料を調べてみると、菌類の女王という記述があるな」

リジェ「それって、ばい菌やウイルスみたいなもの?」

キラー「それは細菌類だな。厳密には、ウィルスは細菌とも違うんだが。菌類は簡単に言うと、カビやキノコの仲間だ。生物学の基本だから、テストに備えてしっかり覚えておくように」

ゾルダ「誰に向かって言っているんだか。とにかく、ザグトモイに帰依すると、カビビンガやキノコモルグになれる、と解釈していいんだね」

リジェ「ええ、そんなのイヤだ〜」

王蛇「マタンゴはどうだ? 喰ったら、うまいぞ」

ゾルダ「そして、だんだんキノコになって、バルタン星人みたいな笑い声を上げることになる、と。若き日の水野久美の妖艶な演技が忘れられんけどな」

キラー「みんなでキノコになって、悪疫を蔓延させる尖兵になるって結末も、 ホラー映画ならショッキングで面白いが、俺は自由に、ときめきを求め続けたい。残念ながら、キノコにときめきは感じないな」

王蛇「だったら、邪神を叩きつぶすか?」

ナイト「そういう話なら、オレは賛成だ。邪神のために働くよりも、ずっとやり甲斐のある仕事だ」

リジェ「あたしもデズモゾーリャ様を捨てて、キノコに帰依するつもりはないよ」

ゾルダ「仮に永遠に生きられたとしても、キノコじゃなあ」

キラー「決定だな。キノコに仕えるのはなしだ。宝珠は確保したまま、探索を続けて、神殿同士の状況を見極めることにする」

 当面の方針が定まったところで、一行は探索を続けます。
 魔術師ファルリンス
の隠し部屋を出て、彼の愛人(エルフの姿はしているけど、その正体はハーフオークの変装らしい)を倒した後、抜け道からダンジョンの外に出る通路を発見。
 通路の先のハシゴを登り、テンプル脇の塔にて番兵たちと一戦。連中を撃破したことで、パーティーはレベルアップします。

●王蛇(浅倉威):レベルバーバリアン。HP97
●ナイト(秋山蓮):レベルローグ/レベルファイター。HP53
●キラー(仲代壬琴):レベルバード/レベルレンジャー。HP47
●リジェ:レベルクレリック/レベル1ファイター。HP52
●ゾルダ(北岡秀一):レベルウィザード/レベル1ファイター。HP31

 レベルが8になると、魔法使いのゾルダ以外も2回攻撃が可能になります。つまり、ここに来て、パーティーの武器戦闘能力が格段に向上した、と言えましょう。
 また、レベル8の恩恵は、能力値がアップすること。この恩恵を一番受けたのはゾルダでして、それまで弱点にしていたCONの能力値のペナルティーを克服、HPが格段に向上しました。加えて、彼は新たに4レベル呪文「アイスフロスト」を使えるようにもなりました。

 さらに、塔の番兵の遺品の中から、魔法の剣も発見。
 一方で、魔術師ファルリンスの遺品のスクロールには「ライトニングボルト」もあって、NPC魔術師スプグノールもついに強力な攻撃呪文をGET。
 こうして一気に、戦力が高まった邪悪パーティーです。

王蛇「今だと、ワーウルフの連中を倒せるんじゃないか?」

キラー「やってみる価値はありそうだな」

 念のため、「キャッツ・グレイス」(ネコの優雅さ=敏捷性アップ)の呪文で、前衛の王蛇ナイトの防御力を強化。
 そして、雪辱戦に挑みます。
 武器攻撃が有効になったおかげで、およそ140のHPを2体分、削りきり、ワーウルフ撃退に成功。ただし、連中の持っていた宝箱からは、あまりいいアイテムをGETできず、期待外れ。

王蛇「紫激気も、もはや恐れるに足りず! このまま、水の神殿のジャガーノートも倒してやろう」

キラー「いや、それは危険だな」

 手元の資料「モンスター・マニュアルU」によると、巨大な石造ローラーとも言うべきジャガーノートの脅威度は12。+2以下の武器のダメージを20点分無効、魔法もほとんど通用しないなど、ワーウルフよりもさらに強そうです。

キラー「とにかく、奴を倒すには、+2の武器が必要らしい」
 
王蛇「チッ、まだまだ力不足ってことか」

キラー「そう焦るな。俺たちはいずれ、邪神とも戦わないといけないんだろう。十分、力を蓄えようじゃないか」

ゾルダ「雪辱戦だったら、他にもいい相手がいるよ」

王蛇「何だ、それは?」

ゾルダ「以前に、<エムリディ草原>で出会ったクマとジャイアントだよ。今なら、簡単に倒せるんじゃないか?」

 クマの脅威度は4で、ジャイアントの脅威度は7。
 確かに、レベル8になったパーティーなら、十分に倒せそうです。

 ……で、実際に倒すことができました。今となっては余裕でしたね。
 ただ、聖カスバート教会のタージョンが、<エムリディ草原>で紛失したという力の秘宝アレは、草原中、探し回っても見つけることができず。

キラー「そんな不確かな物は、もういらん。俺たちには宝珠があるんだからな」 

 宝珠を手に、邪神との戦いを決意した邪悪パーティー。「邪をもって邪を倒す究極の極悪伝説」を築き上げることができるでしょうか? (つづく)

 

●2007年8月27日(月)・地下3階 突破(Break Through the Third Floor)

 <エムリディ草原>
 やっぱり、もう一度、探索しました。
 「マップ中央付近の岩を、よく調べてみたら?」とアドバイスをもらいましたんで(感謝ですm0m)。

キラー「おお、こんなところに邪神の像があったぞ」

ナイト「それが、タージョンのなくしたという力の秘宝なのか?」

ゾルダ「一応、手紙もいっしょに付いているよ。タージョン聖カスバート教会のために尽くした栄誉を称えて、これを贈るってさ」

リジェ「聖カスバート教会って、影で邪神を崇めているってこと?」

キラー「まさかな。他にあるのは……つまらん。ただの銅製の星型ペンダントが一つあるだけか。こんな物が、力の秘宝なわけがない」

 実のところ、力の秘宝というのは、NOVAの解釈ミスです。
 元のセリフにあるのは「工芸品」。これをNOVAは「アーティファクト」と解釈してしまったわけです。「アーティファクト」ってのはD&D世界における「強力なマジックアイテム」。すなわち、NOVAの頭では「工芸品=力の秘宝」という脳内変換が起こってしまったんですね(苦笑)。
 実のところ、ただの銅製の星型ペンダントが、タージョンの求める「工芸品」でした。それを渡すと、タージョンは喜んで受け取りましたが、相変わらず、謝礼は何もありません。どうも、正義の人にとって、「人のために親切に仕事する」のは当たり前なので、それに対して謝礼を払うって感覚が身に付いていないのかも知れません。
 あと、邪神の像について問い詰めてみると……、

タージョン「私は、そんな物、知りません。大方、邪神の下僕の遺品が戦場跡に紛れ込んでいたのでしょう。持ち歩かずに、さっさと捨てた方がいいですよ」

 邪神の像を捨てるとクリアできないのはドラクエ2でしたが、別に本作では問題ないみたいです。まあ、ラスボス・ザグトモイの伏線みたいなものでしょう。

 で、結局、苦労の割にほとんど実入りがないとは言え、「タージョンの工芸品クエスト」が終了したので、改めて地下3階の探索を再開します。
 その間に、NPCのセレーナたんのレベルが6に上がって、HPも28になりました。当初はローグ(盗賊)でスタートした彼女は、どうも途中でファイターに転職したみたいです。5レベル時でHP20だったのが格段の向上を見せていますし、武器や防具もいい物が装備できるようになっています。「ショートボウ&レザーアーマー」から「ロングボウ&チェーンメール」にバージョンアップ。確か、「女戦士にはチェーンメール!」連盟ってのが、その昔、どこかで提唱されましたしね(笑)。

 そして、地下3階の探索内容としては、特筆することはありません。
 モンスターと遭遇して倒す「ハック&スラッシュ」の繰り返し。トロールとか、ブラックプディングとか、透明化能力を持ったソードシャドウ(剣影)とか、ヒルジャイアントとお付きのゴブリン軍団とか、種類は変われど、力で押し切って特に問題なく倒せる連中ばかり。
 結局、地下3階で特筆すべきイベントは、<ゴールデン・デス・オーブ>の入手だけでした。

 あと、戦闘自体が考えさせられたのは、「こげ茶色の図体のでかい男」との戦闘。
 ええと、これって「アンバー・ハルク(Umber Hulk)」の訳なんですが、D&Dファンなら「何じゃそりゃ?」とツッコミ入れたくなる超訳ですな。一応、モンスターマニュアルには「褐色巨獣」なんて訳もありました。
 なお、アンバーハルクを知らない人のために、その外見を説明しますと、「直立したクワガタムシ」です。6本足ではなく、4本足ですが。甲虫とゴリラの合成された姿とか、特撮ファンでしたら「筋肉質になったアリジゴク怪獣アントラー」と言えば、何となく分かってもらえるでしょうか? とても、とても「図体のでかい男」なんて訳が通るグラフィックじゃないんですね。
 念のため、本作の訳はD&Dの知識のない人が当たっているようで、時おり妙なものが見つかります。まあ、ちょっとした会話なら読み流せばいいのですが、「能力値(ステータス)を統計数値」と書いていたり、「魔法使いの使い魔のイタチ(ヴェッセル)を雪上車」としていたりするのは、キャラのデータを見る際、しょっちゅう目に止まるので、いつも、そこはかとないトホホ感を抱いております。

 さておき、アンバーハルクとの戦いの話ですね。
 こいつの厄介なのは、持ち前の怪力に加え、「混乱効果を与える凝視」です。それをまともに喰らってしまっては、パーティーの戦闘力がガタ落ちになってしまいます。
 しかも、その区画には3体のアンバーハルクが潜んでいますので、まともに戦うなら、どうしても戦力が分散されて、しかも混乱させられて、各個撃破されてしまう、と。
 幸い、敵3体の初期配置がそれなりに離れておりますので、1体ずつ始末できればいいわけで。

 ここで役に立ったのは、北岡先生ことゾルダ
 彼一人を近づかせて、アンバーハルク1体が範囲に入るように、ファイヤーボールを撃ち込みます。そして、敵が近づいてくる前に、もう一発。そうして怒ったアンバーハルクが1体だけ近づいてきたところを、待機していた戦士勢がゾルダをガードし、重傷の敵にとどめを刺すわけで。
 これを3回繰り返せば、比較的安全にハルクを全滅させることができました。
 こういう戦術の工夫は、バルダーズゲートでよくやってました。パーティー全員を突っ込ませて乱戦状態にすると、どうしても犠牲者が出てしまうので、強化した戦士1人を突っ込ませて、敵の厄介な奴を倒すとか。ちょっと、昔の記事なんかも、懐かしく読みふけったりしていました。

 さて、ここまで苦労して倒したアンバーハルクですが、得られるものは特にありません。

キラー「むなしいぜ」

 そして、いよいよパーティーは地下4階に突入します。 (つづく)

 

●2007年9月5日(水)・エンディング1・悪の勝利?(Evil Winning)

 地下4階。
 そこはグレーターテンプルの本拠でした。
 トロールやエティン、ヒルジャイアントといった大型モンスターを次々と撃退し、邪悪パーティーはその力を示していきます。

 そして、レベルもとうとう9になりました。

●王蛇(浅倉威):レベルバーバリアン。HP10
●ナイト(秋山蓮):レベルローグ/レベルファイター。HP61
●キラー(仲代壬琴):レベルバード/レベル2レンジャー。HP54
●リジェ:レベルクレリック/レベル1ファイター。HP55
●ゾルダ(北岡秀一):レベルウィザード/レベル1ファイター。HP34

キラー「しかし、これは意外とつまらんな。楽しいゲームも、そろそろ潮時か」

王蛇「水の寺院に対する雪辱戦はどうなった?」

キラー「まあ、それもいいが、下位寺院の権力争いで無駄な労力を使うよりも、ここは一気にグレーターテンプルの中核に潜り込むのが一興だろう」

 ……ということで、地下4階の構造を大体、把握した後で探索を終わらせ、一行は地下2階の火の寺院に向かいます。

キラー「これが、<ゴールデン・デス・オーブ>だ。使命は果たしたぜ」

火のアルレム「おお、素晴らしい。よし、有能な幹部候補として、グレーターテンプルの司令官ヘドラックに紹介してやろう」

 そして、ヘドラックの前に連れて来られた一行。

ヘドラック「ほう。我がグレーターテンプルの門下になりたいと申すか? なら、力を示すために、一つの仕事を託そう。地下3階で何やら騒動が起こっているらしい。それを解決してくるのだ」

キラー「たやすい仕事だ」

 こうして、一行は、地下3階で騒動を起こしているジャイアントを始末してきます。

ヘドラック「よくやった。では、グレーターテンプルに忠誠を誓うがいい。共に同志として、邪悪のために働き、正義の軍を打ち倒そうぞ」

キラー「……悪の同盟に万歳!」

 こうして、本ゲームの冒険は終わりを迎え、エンディングナレーションとして後日談が語られます。
 邪悪パーティーの参入によって、邪悪寺院は力をつけ、ホムレットの村は壊滅。ナルブが悪徳都市として栄えるわけですが……。

キラー「むなしいぜ」

 どうも、ゲームを終わらせた達成感がありません(苦笑)。
 やっぱり、正義だろうと悪だろうと、戦って強力なラスボスを倒してこそ、ゲームの華だなあ、と感じました。
 そこで、<ゴールデン・デス・オーブ>を手渡す前のデータを呼び起こし、打倒ザグトモイを目指して、プレイを続けることにします。

キラー「グレーターテンプルだろうが、邪神だろうが関係ない。強敵を倒して、めいっぱいときめきを追求するぜ」

王蛇「当然だ。このイライラを解消するには、強い奴を叩くしかない」

リジェ「キノコの神さまなんかには従えないわ。デズモゾーリャ様が一番よ」

ゾルダ「やれやれ。血の気の多い人たちだなあ。仕方ない、ゴチャゴチャしたのは一気に吹き飛ばすとしますか」

ナイト「結局、最後の目的は邪神退治に落ち着いたか。オレとしても一安心だ」

 ……ということで、「むなしい悪の勝利」を切り捨てて、改めて邪神討伐の意志を固めた一行でした。(つづく)

 

●2007年9月7日(金)・エンディング2・ザグトモイの下僕(Slave of the evil goddes)

 邪神ザグトモイを倒そうとする邪悪パーティー一行。しかし……

リジェ「ところで、ザグトモイってどこにいるの?」

ゾルダ「ダンジョンの奥……かな?」

王蛇「だったら、あのヘドラックという奴を倒して、奥に進めばいいわけだな」

 やってみました。しかし、玉砕。

 ヘドラックと、その周囲の手下どもは何とか倒せそうなんですが、このヘドラック、倒されそうになると、アイウーズ(ゲーム内表記はイウズ)という邪悪な半神を召喚するんですね。このアイウーズが強敵で、どうしようもありません。こちらの攻撃が通用せず、次々とパーティーのメンバーを葬っていきます。

キラー「ダメだ。アイウーズには勝てない。撤退だ」

 いろいろな情報から推測するに、ヘドラックは別にザグトモイに従っているわけではないようです。ザグトモイの力を利用して、自分が崇拝するアイウーズの力を高めるのが目的だとか。この辺、邪悪寺院といっても一枚岩ではなく、勢力争いが激しいことが改めて分かりました。

ナイト「さて、ヘドラックを倒すのが困難だと分かったんだ。どうする?」

キラー「こういう時は、<ゴールデン・デス・オーブ>のメッセージに従うとしよう。この宝珠を手にしたとき、寺院の玉座の間から地下への隠し通路が開く映像が、脳裏に浮かんだんだ。玉座の間に向かうぞ」

リジェ「それって、どこ?」

キラー「寺院の地上階の奥だ」

 ……ということで、もはやグレーターテンプルと関わるのをやめて、ザグトモイ一本に絞ることにします。
 玉座の間から、地下に降りると、左右のどちらかに向かえます。右に進んだ一行は、キノコとスライム系モンスターの猛襲を受けます。何とか撃退したのですが、

キラー「しまった。どうも、一方通行の通路を抜けてしまったらしい。戻れないぞ」

ゾルダ「それは困ったな。さっきのキノコ戦で、ファイヤーボールを使い尽くしてしまったよ」

キラー「イザという時には、俺のファイヤーボール・ワンドがある。このまま進むぞ」

 そして、出てきたところは、地下4階のグレーターテンプル。

ヘドラック「何だ、お前たちは?」

ゾルダ(うわあ、こんなところで、こいつに出くわしてしまうなんて。今、アイウーズを呼び出されたら、どうしようもないよ)

キラー(ここは、はったりで切り抜けるんだ!)「俺たちは、ザグトモイ様のところから来た。緊急の使命を帯びている。ここを素直に通してもらおう」

ヘドラック「む、ザグトモイ様の使いか。やむを得ん。見れば、お前たちも相当の修羅場をくぐった戦士のようだ。戦力の浪費をするほど、わしもバカではない。おとなしく通るがいい」

 正面から入ると、問答無用で攻撃してくるヘドラックも、背面から遭遇すると交渉で切り抜けることができたので、ホッとしたNOVAでした。本当に、パーティーがボロボロの状態でしたから、戦闘になったらリセットは必至だと思ってました。
 そのまま、安全な通路を通って、ナルブの村に引き返して回復。

キラー「次は、玉座下の左に向かおう」

ナイト「その前に、地下3階に行かないか? 一箇所、未発見の隠し扉があって、そこにスロメル王子という人物が幽閉されている、という情報を聞いたんだが」

 このスロメル王子、「エムリディ草原の戦い」における英雄らしいのですが、悪に捕らわれ行方不明になっていました。
 『グレイホーク・ワールドガイド』にも記述がある有名人なんですが、ここで助けないと、続編のTRPGシナリオ『邪悪寺院、再び』では、邪神の生贄にされて、悪の力を注がれた挙句、 ヴァンパイアと化してしまう、という後日譚があったりします。正義の王子が悪に転向……というのは、なかなかドキドキするシチュエーションなんですが、まあ、本作ではそこまで語られることもないので、とりあえず話のネタとして、会うだけ会っておくことにします。

ナイト「スロメル王子、助けに来ました」

スロメル王子「おお、かたじけない。恩に着るぞ。ここを無事に切り抜けた暁には、そなたたちを我が国の騎士に任じてやろう」

ゾルダ(おお、それはありがたい申し出だな。同じ正義の人でも、タージョンはもっとケチだった)

キラー(逆に言えば、スロメル王子は人を見る目がないというか、信じすぎるというか……。だから、裏切りにあって捕まってしまったんだな)

 この後、スロメル王子を護衛して(パーティーに入れて)脱出する、という選択もあったわけですが、パーティーのメンバーはすでにいっぱいだったので、王子には自力で脱出してもらうことにしました。

リジェ「それにしても惜しかったわね」

ナイト「何が?」

リジェ「あの人が将来、ヴァンパイア化して、あんたの血を吸ったりすれば、ここに晴れてヴァンパイア・ホストの完成じゃない?」

ナイト「また、そのネタか」

 すいません。吸血鬼ネタは結構、好きなので。
 本作でも、リジェの操るアンデッドは、「いいな〜」と思ってプレイしていた口なんですが、どうもグール以上のアンデッドが登場しないので、残念に思っています。地下3階や4階では、グールを連れて歩いても敵の強力な打撃で瞬殺されてしまいますし……。

キラー「よし、スロメル王子を助けて、正義の側にも有望なコネができたな。このまま、邪神を討伐すれば、俺たちも晴れて英雄だ」

ゾルダ「俺たちは邪悪パーティーじゃなかったのかい?」

キラー「もちろんだ。だから、自分たちの利益や楽しさにも敏感なんじゃないか。悪についても、つまらん結末だと分かったからな。より、自分たちが得して、ときめきを感じられる方につく。それが、俺の生き様だ」

ゾルダ「何だかんだ言って、あんた、最後はアバレンジャーの味方をしたからなあ。こういうラストになるのは、予想していたよ」

 個人的には、邪悪パーティーが悪の軍団を率いて、正義側と戦う展開も期待していたんですけどね。
 ただ、ゲームがそこまでフォローしておらず、「悪の勢力の一員になる」ところまでで終わってしまうものですから。
 その後の流れは、ゲーム終了後のナレーションで語られるのみなので、悪の醍醐味が得られない、と。悪の勢力を強化するために、善の勢力の側に侵入して、脅迫や誘惑などを駆使して、相手を屈服させる楽しみは本作では実行不能なわけです。残念。

 ともあれ、ザグトモイを倒すべく、玉座下の左へ向かいます。
 そこにいたのは、ザグトモイの司祭を務めている老婆。彼女は、ヘドラックに自分の地位を剥奪されたことを恨み、起死回生のために、<ゴールデン・デス・オーブ>の力を使おうとします。

ザグトモイの女司祭「おお、その宝珠じゃ。それを渡してくれ。それさえあれば、ヘドラックなんぞに……」

キラー「ごめんだね。俺たちは、ザグトモイを倒しに来たんだ」

ザグトモイ「(突然復活して)わらわを倒すじゃと! この愚か者が! そなたは、その宝珠をよこせばいいのじゃ。そうすれば、命だけは助けてやる」

キラー「うっ、何だ、この圧倒的な存在感は! だんだん意識が薄れてくる!」

ザグトモイ「ほう、まだ抵抗するか。なかなか強い精神力と見える。そなた、わらわに仕えてみる気はないか? そうすれば、力を授けようぞ」

キラー「……従います。貴女の栄光を、この地上に!」

リジェ「ミ、ミコさま?」

ナイト「お、おい、本気か」

キラー「(ニヤリ)お前たちも、この宝珠の魔力を受けるがいい(宝珠の光を仲間に浴びせる)」

リジェ「あ、あぁ……(トロンとした目つきになって)そ、そうね。あたしたち、邪悪パーティーなんだし、邪神だったらデズモゾーリャ様でも、ヴェクナ様でも、ザグトモイ様でも変わりないわ。それよりも今は、このトキメキをめいっぱい感じないと……カ・イ・カ・ン♪」

王蛇「……ふん。誰が上に立とうと、俺のすることは変わらない。イライラを吹き飛ばす戦いだ。さあ、命令してくれ。どいつをぶっ飛ばせばいい?」

ゾルダ「……考えてみれば、カビやキノコ類の繁殖力、生命力は人間以上だからな。その力を宿すのが、永遠の命には必要かもしれないなあ。吾郎ちゃん、どう思う?」

吾郎ちゃん「ゲコゲコ」

ゾルダ「……そうだね。吾郎ちゃんも、暗くて湿ったところが好きだよね。日の当たらない、そういう世界が実現するなら、それはまさに天国だよね」

ナイト「み、みんな……」

ザグトモイ「フフフ、これでわらわの意志に抵抗するのは、そなた一人。それも時間の問題じゃ」

ナイト「す、すまん……みんな」

 邪神の手に落ちた仲間を見捨て、ナイトは唯一人、逃走を図るのでした。(つづく)

 

●2007年9月10日(月)・邪悪寺院の最後(Collapse of the Evil Temple)
●シーン1:邪神降臨

 邪神ザグトモイの強力な意志の力に屈服した邪悪パーティー。
 ただ一人、邪悪の力に取り込まれなかった
ナイトは、その場から逃げ去りました。

キラー「……ふん。秋山は逃げたか。元々、悪に徹しきれなかった男だからな」

王蛇「……どうする? 追うか?」

キラー「放っておけ。あいつ、一人ぐらい、俺たちが悪をまとめ上げれば、いつでも始末できる」

ゾルダ「……一人ではないみたいだよ。NPCズも姿を消している」

キラー「秋山も、ファーノクも、セレーナも忍びの技術に長けていたな。逃げ足だけは早い連中だってことか」

リジェ「……スプグノールは?」

ゾルダ「……確か、あいつはインビジビリティ(透明化)の呪文を覚えていた。ちょっと、マズいんじゃないの? これで、4対4だよ。人数面では対等だ」

キラー「面白い。ゲームは対等でなければな。そして、資源や時間を効率的に使った方が勝つ。連中がこのまま遁走せずに、引き返してくるなら、その前に俺たちの方も準備を整えないとな」

リジェ「……準備って、どうするの?」

キラー「まずは、ザグトモイ様の降臨だ。菌類の女王よ、ご加減はいかがです?」

ザグトモイ「まだ、本調子ではない。現世で力を使うための依代(よりしろ)として、この年寄り巫女の体を使わせてもらったが、こうも肉体にガタが来ていてはな。本来の力であれば、逃げた連中もたやすく屈服させられたものを」

キラー「健康な肉体が必要ってことですね。すぐに調達してきますが?」

ザグトモイ「わざわざ調達せずとも、そこに手頃な巫女がいるではないか?」

リジェ「……って、あたし?」

ザグトモイ「そうとも。その娘の体からは、我らに匹敵する強力な神力の名残を感じるぞ。その娘に、わらわが憑依すれば、力も十分に使えよう。使徒キラーよ、その娘をわらわに差し出す覚悟はあるかえ?」

キラー「……必要とあらば」

リジェ「……ミコさまがそう言われるなら。でも……あまり痛くしないでね」

ザグトモイ「大丈夫。わらわの使う肉体じゃ。手荒なマネはせぬ」

 邪神ザグトモイの霊体から、緑色をした植物の蔓らしき触毛が伸び、リジェの体を包み込みます。

リジェ「くっ……うぅん……あぁ……カ…イ・カ・ン!」

ゾルダ(……やれやれ。これって、どこの十八禁ゲーム的展開だよ)

 当サイトは、健全な方向性を維持したいので、これ以上のねちっこいH描写は避けたいと思います(^^;)。
 そして、この場では書くのもはばかれる淫靡な儀式の後、

リジェ改めリジュエル「……見て、ミコト。これで、あなたにふさわしいナイスバディな女になれたわ」

キラー「……ああ。ザグトモイ様は中にいるのか?」

ザグトモイ「(リジュエルの口を通して)無論じゃ。娘の肉体は、わらわが使いやすいよう、調整させてもらった。元の肉体では、まだ小さすぎたからな。娘も今は元の意志を保っているが、いずれ、わらわと完全に同化しよう。それにつれ、娘の潜在力と、わらわの神力も融合し、並ぶものなきほど強大な魔力へと高まるであろうな」

リジュエル「ザグトモイ様、もしも、あたしの意志が完全に貴女と同化したら、あたしのミコトへの愛はどうなるのですか?」

ザグトモイ「使徒キラーには、わらわも惜しまぬ愛を捧げる所存じゃ。時が至れば、キラーの中に眠る力とも融合したいと思っているがの」

キラー「……お言葉ですが、俺の中にはデズモゾーリャという邪神の力が半分眠っているようです。その力が、リジュエルの力と結びついたとき、強大な邪の力が覚醒するらしいのですが、今のザグトモイ様の力では、それを制御できずに、デズモゾーリャの意志に飲み込まれてしまう危険性が高いか、と」

ザグトモイ「信じよう。確かに、覚醒したばかりのわらわは、少しずつ力を蓄えねばならん。先ずは、娘の中に眠るデズモゾーリャとやらの力を、完全に物にし、その後で、使徒キラーよ。汝との融合を果たそうぞ」

キラー「……分かりました。その時を楽しみに待っています」

リジュエル「……それなら、いずれミコトと一つになれるのね。今から待ち遠しいわ」

ゾルダ 「何だか、とんでもない展開になってきたなあ。アバレンジャーって、こういう話だったのか?」

 そういう話だったのです(笑)。
 ザグトモイ関連のことを除けば、ここまでの展開は、ほぼ原作に忠実だと思います。改めて、原則・幼児対象の戦隊シリーズの中では、凄い話だったんだなあ、と実感しております (アダルト的な雰囲気としては、ジェットマンに引けをとらない)。

キラー「さて、これでザグトモイ様の降臨は成った。次に、邪悪寺院をまとめ上げるときが来た。北岡浅倉、お前たちに指令を与える。すぐに、グレーターテンプルのヘドラック、火のアルレム、水のベルソーニヒ、大地のロマグのところへ行き、つまらぬ争いは中止し、ザグトモイ様の下に一致団結するよう伝えるのだ。北岡、おまえの弁護士としての交渉手段を駆使してくれ」

ゾルダ「やれやれ、完全に仕切られてしまったね。まあ、従うしかなさそうだな。それで、交渉失敗の暁には……」

王蛇「俺の出番ってことだな」

キラー「ああ、頼むぞ。こちらには、目覚めた邪神の力があるからな。恐れるものは何もない」

●シーン2:ナイトの決断

 一人だけ邪悪に染まりきれず、逃走したナイトこと秋山蓮
 彼に従うのは、雇われ人のNPCズでした。

ファーノク「それで、ナイトの旦那。オレたちは、どうするんだ?」

セレーナ「このままですと、邪悪寺院の勢力がホムレットを滅ぼしてしまいますわ」

スプグノール「いっそのこと、邪悪な勢力に従い、勝ち馬に乗るのも一つの手かもしれませんね」

 そういうエンディングもあるんですよ、確かに。そもそも、「エンディング2」って、パーティーがザグトモイに支配されて終わりってエンディング。ナイト一人だけ逃げ出す、なんて展開は、ゲームでは有り得ません。
 その記事を書き終わる直前までは、「最後まで抵抗したナイトも結局、ザグトモイの洗脳を受け……そして幕」という終わり方を想定していました。その後、キラーが「エンディング1」同様、「やっぱり、むなしいぜ」と言って、真のエンディングを目指す流れの予定で。
 それなのに、突然、作者の想定も、ゲームのルールも飛び越えて、一人だけ悪に屈せずに逃げ出してしまったナイト。一体どうする気なんだ? 

ナイト「オレは、仲代たちが邪神討伐を決めたとき、ホッと安心していたんだ。ああ、あいつらも何だかんだ言って、一線を踏み越えることはしないなって。たとえ、悪を名乗ろうと、人として野心を追求する連中の姿には、ちょっとした憧れも抱いていた。だが、今のあいつらは違う。邪神の気に冒されただけの傀儡に過ぎん。オレとしては、邪神の下僕でなく、本来の仲代たちに戻してやりたいんだ。そうして、邪神や邪悪寺院の思惑とは離れたところで、自由に冒険の旅を満喫できれば、それはそれで幸せかなって……」

ファーノク「旦那の気持ちは分かった。それで、どうやれば、みんなを解放できるんです?」

ナイト「分からん。だが、今のオレたちにできるのは、この状況をホムレットの人々に知らせることだけだ、と思う。あそこのタージョン司教にでも相談すれば、解決策を考えてくれるかもしれない」

 こうして、ホムレットに報告に戻ったナイトたち。すぐに、ありのままを懺悔します。

タージョン「なるほど。やはり、あなたのお仲間たちは、邪神に魂を売りましたか。最初から、信用できない連中だとは思っていたんですよ。こうなったら、至急、軍勢を募って、<第2次・エムリディ草原の戦い>を行なうしかありませんね。悪は完全に滅殺しなければなりません」

ナイト「そこまで、大規模に事を構えなければいけないのか? 目覚めた邪神を何とか封印できれば、解決できるのではないか?」

タージョン「そもそも、誰が邪神ザグトモイを目覚めさせたのです? あなたの邪悪なお仲間が、廃墟となった寺院に踏み込んで、邪神復活の手助けをしたのではありませんか? あなたは、それを止めることすらせずに、優柔不断に振る舞って、どうしようもなくなってから、助けてくれ、と泣きついてくる。そういう自分勝手な人に、聖カスバートの加護はありませんとも。これより、我が聖カスバート教会は、仇敵アイウーズとザグトモイの下僕に対して、聖戦を発動するつもりです。あなたも懺悔する気持ちがあるなら、聖戦の先頭に立って、剣を振るうのです。自らの罪を、邪悪の血を流すことで、洗い清めなさい」

ナイト「オレに仲間を斬れ、と言うのか?」

タージョン「邪悪な仲間なら斬りなさい。それが正義を証明する道です」

ナイト「正義も悪も関係ない。オレは、かけがえのない仲間を邪神の枷(くびき)から解き放ちたい。ただ、それだけだ!」

タージョン「……やはり、邪悪の仲間には、正義の教えは通じないようですね」

???「そう、捨てたものでもないだろう。少なくとも、その男と仲間は、一つの善行を為しているぞ」

タージョン「あなたは? 行方不明だったはずのスロメル王子? ご無事でしたか?」

スロメル王子「長年、邪悪寺院の暗い牢獄に捕らわれていてな。邪神復活の生贄にされそうだったところを、その男と仲間の探索によって、救出されたのだ。いいか、タージョン。邪悪寺院の邪神復活計画は、この数年、ずっと密やかに進められていたのだ。それは外から見ても、はっきりとは分からないぐらいにな。仮に、ナイトが寺院を探索していなければ、我々はその全貌も知らぬ間に、復活した邪神の奇襲を受け、攻め滅ばされたやもしれぬ。言わば、そのナイトは、邪悪の動向を探る斥候の任務を見事に果たした、と考えられなくはないか?」

タージョン「しかし、結局、邪神は復活してしまった。その報告に何の意味がある、と言うのです?」

スロメル王子「邪神の力の源が<ゴールデン・デス・オーブ>という宝珠にあることは分かっている。私の部下の魔術師ファルリンスがそれを持っていたんだが、どうやら、その宝珠は持ち主に邪悪な影響を与えるらしい。ファルリンスが私を裏切ったのも、そのせいだろう」

ナイト「確かにそうだ。オレの仲間も、宝珠の魔力によって操られたんだ、と思う。それさえ破壊できれば……」

スロメル王子「幸い、ファルリンスは宝珠の研究を続けていて、その成果を日誌に書き写していた。どうも、魔術文字で記されているらしく、私にはうまく解読できないのだが、寺院からの脱出の際、必要だろうと思って持ってきたのだ。タージョン、至急、これの解読作業を行なってもらえないか?」

タージョン「分かりました。村の魔術師バーンに話を通しておきます」

 こうして、<ゴールデン・デス・オーブ>を破壊するための手段が講じられます。
 その手段とは……「炎」「風」の元素力を、「大地」の象徴たる武器モールに込め、聖「水」で聖別して完成する「聖なる打撃棒(ホーリーバッシャー)」で宝珠を叩くこと。
 必要なアイテムは、「ファイヤー・ボールの巻き物」「ガスト・オブ・ウィンドの巻き物」「マスターワーク(高品質の)モール」、そして「聖水」。これらを何とか入手したナイトは、ついに「聖なる打撃棒」を入手します。そして……。

スロメル王子「一人で行くのか?」

ナイト「一人なら、仲間のところまで忍んで行ける」

スロメル王子「確かに。今、寺院には悪の軍勢が集結しつつある、と聞く。君の仲間は、軍事の才能も傑出しているらしいな。あのバラバラだった勢力を、短期間のうちに、よくまとめているようだ。改めて、敵に回すと恐ろしい連中だと感じるよ」

ファーノク「旦那。オレたちも連れて行ってくれないんですか?」

ナイト「これは、大勢いれば成功するって任務じゃないんだ。オレ一人が、<ゴールデン・デス・オーブ>のところに辿り着いて、オーブを破壊できれば勝ち。破壊できなければ負け。負けた場合は、戦争になるだろうな。そのときは、スロメル王子、後の戦いをお願いします」

セレーナ「お帰りをお待ちしています」

スプグノール「餞別です。最後に、インビジビリティ(透明化)の呪文をかけてあげますよ。これで、忍びも楽になるでしょう」

ナイト「すまない。では」

スロメル王子「必ず、生きて帰って来い。我が王国の騎士の地位を用意して待ってるぞ」

 そして、ナイトは、単身、邪悪寺院に向かうのでした。仲間の自由を取り戻すために。

●シーン3:決着

 バグベアやヒルジャイアント等から成る大勢の敵軍の目をうまくすり抜けて、寺院の中枢部に忍び込んだナイト
 そこでは、王の玉座に腰掛けたキラーと、その隣の女王の玉座に就いたリジュエルザグトモイ)。そして、宮廷魔術師や近衛騎士のような威厳を称えたゾルダ王蛇の姿がありました。

キラー「ほう。戻ってきたか、秋山。逃げたままだと思っていたが」

ゾルダ「たった一人とはねえ。責任感が強いというか、バカというか」

王蛇「(独特の肩をすくめ、首を回すポーズで)死にに来たか? アァン?」

リジュエル「それとも、今からでも仲間になりに来たのかしら? 吸血鬼の洗礼を受けて、死霊騎士団を従えてくれるなら、歓迎するわよ」

ナイト「オレは、仲間になりに来たんじゃない。仲間を取り戻しに来たんだ、ザグトモイ!」

ザグトモイ「(リジュエルの目が妖しく発光して)クククク。取り戻す仲間など、もはや存在しないわ。この者たちは皆、わらわに仕えることを心の底より受け入れておる。心だけではない。その肉体にまで、我が胞子を受け入れ、この菌類の女王の眷属として立派に育ちつつある。お前もそうおなり!」

 
そう言うと、リジュエルの口元から、青白く発光する粒子が吐息とともに放たれました。

ナイト「くっ」

 手にした小棒を念を込めて振るや、それは本来の姿、2メートルの巨大な鉄球棒に拡張します。魔力の霊光に縁取られた聖なる武器は、風の力で青白い胞子をたちまち吹き払います。

ザグトモイ「そ、その武器は……わらわの力を削ぐというのか?」

キラー「胞子が効かないか。なら、力任せと行くか。浅倉!」

 王蛇はすぐにナイトに切りかかろうとしますが、その場から一歩も動けないことに気付きます。聖なる武器の周りの輝きがだんだん強まっていき、その光はザグトモイの胞子に冒された肉体に重圧となって、のしかかってくるのでした。
 それは、ゾルダとて同じ。重圧に耐えるのに精神力を消耗させられ、呪文を唱える余裕すらありません。

キラー「チッ、あの武器の前では、ザグトモイの力は無力か。……なら、オーブの力で相殺してやる!」

ザグトモイ「よ、よせ。それが奴の狙いじゃ。オーブをあの武器にさらしてはならん!」

キラー「(ニヤリ)他に手はありませんので。行くぞ、秋山。その武器で、このオーブ、叩けるものなら叩いてみろ!」

 そう言って、キラーは片手に<ゴールデン・デス・オーブ>を掲げます。

ナイト「……?」

 呆れ返るほど無抵抗に宝珠をかざす姿を、一瞬、不審げに見取ったナイトですが、その瞬間、首を縦に振るキラーの身振りに気付き、その真意を悟ります。

ナイト「砕け散れ!」

 気合一閃、聖なる武器が宝珠を打ち、強烈な魔力のほとばしりが辺りを照らし出します。

ザグトモイ「クワーーーーーーッ。せっかく蓄えた力がーーーーー、こぼれ去っていく〜〜〜!」

キラー「ふう。ようやく、自由になれたぜ。秋山、ご苦労だったな」

ナイト「いつから、正気に戻っていたんだ?」

キラー「始めから……と言いたいが、たぶん、お前の武器の光を見てからだな。それまでは、潜在意識下で邪神の支配力に抵抗していたが……」

ゾルダ「ああ、イヤな目に合った。体の中の胞子も、光で浄化されたかな。まるで、DG細胞に冒された後で、シャッフル同盟の命の炎で浄化された気分だよ」

王蛇「また、マニアックなことを。とにかく、今回ほどイライラさせられたことはない。ザグトモイはどうなった?」

キラー「リジュエル、まだ、お前の中か?」

リジュエル→リジェ「う〜ん、ミコさま。もう出て行ったみたいだよ。あ〜あ、せっかくナイスバディーだったのに、元に戻っちゃうなんて、残念」

キラー「邪神の力で一気に成長するより、普通にゆっくり大きくなれ。その方が、見守る方も長く楽しめる」

リジェ「ホント、ミコさま? だったら、ゆっくり大きくなるよ。いつか本当に、ナイスバディーになってやるんだから」

ナイト「……油断するな。ザグトモイはあの柱のそばに現われたぞ」

ゾルダ「実体を失い、霊体と化したみたいだね。だが、その分、サイズは膨張し、存在感はなおも大きなものがある、と」

ザグトモイ「使徒キラーよ。何とか、わらわが力を取り戻す時間を稼ぐのじゃ〜」

キラー「バカか、おまえは。まだ状況の変化に気付かないのかよ。俺はもう、貴様の使徒なんかじゃない」

ザグトモイ「……わらわに誓った忠誠は偽りと申すのか?」

キラー「無理矢理に言わされた誓いに拘束力はないし、そもそも俺の忠誠は、俺自身にしか捧げない、と昔から決めているんだ!」

ザグトモイ「……おのれ、こうなったら、わらわの持てる限りの力で、そなたらを滅ぼしてやろう!」

キラー「最終決戦ってことか? だったら、ちょっと待て。それには作法がある」

ザグトモイ「何だと?」

キラー「ときめきの白眉。アバレキラー!」

ゾルダ「おっ、名乗りかい。喜んで付き合うよ。緑の光弾! アバレゾルダ!」

リジェ「それって、天空忍者だよ。だったら、あたしも。 桃色吐息! アバレリジェ!」

王蛇「やれやれ。バカバカしいが、言っておくか。無敵の囚人魂! アバレンオージャ!」

ナイト「深闇色の騎士(ミッドナイト・ライダー)! アバレナイト!」

キラー「荒ぶるダイノガッツ!」

ゾルダ「アンド・ライダースピリッツ!」

キラー「混成戦隊!アバ……」

ザグトモイ「え、ええい、ふざけるな!」

キラー「やれやれ。名乗りの途中で割って入るとは、作法を解しない三流の悪役が。滅びるのはお前の方だ。そもそも、お前、この俺さまがただ、お前の意志に従っていただけだった、と思うのか?」

ザグトモイ「何?」

キラー「お前が俺の意識に接している間、こちらからも、お前の心を探ることができたってことだ。お前を現世につなぎとめている物、それが玉座の中にある! 浅倉!」

王蛇「おお。このセンスのないデザインの椅子を壊せばいいんだな」

ザグトモイ「や、やめろ!」

王蛇「バキッ!」

ゾルダ「ああ、何だか派手な宝石の装飾品が出てきたよ」

ザグトモイ「そ、それに触るな」

ゾルダ「だったら、触らない。行け! マジックミサイル!」

 魔法の矢が、装飾品を貫きます。

ザグトモイ「ヒギャーーーーッ!」

キラー「奈落(アビス)で眠れ!」

 こうして、菌類の女王ザグトモイは、現世との接触を絶たれ、奈落の底で66年間の眠りを余儀なくされたのでした。

●最終シーン:終幕

 ザグトモイの束縛を失った邪悪寺院の勢力は、統率者のいない烏合の衆と成り果てました。
 ホムレットに集った善の軍隊は、大きな抵抗もなく、寺院を攻め滅ぼし、再度、建物の解体を行ないました。
 各テンプルの長たちは、命からがら逃げ落ち、ある者は再起のための邪悪な企ての準備を行い、ある者は狂人として各地をさすらい、ある者は策謀に明け暮れた末に小競り合いで命を落とすなどの末路を迎えました。

 その後、ホムレットは発展を続け、逆に悪の集う村ナルブは滅び、幽霊の巣食うゴーストビレッジと化しました。
 スロメル王子は、邪神の封印に貢献した冒険者の行方を探しましたが、彼らの消息は杳として不明のままでした。ただ、不確かな噂だけがまことしやかに囁かれるばかりです。

 ある者は、邪神とともに自らを封印し眠り続けているのだ、と語りました。
 ある者は、彼らの故郷である異世界に舞い戻ったのだ、と謳いました。
 ある者は、ナルブの海賊たちを率いて、自由な海に旅立ったのだ、と伝えました。

 真実はどうあれ、ホムレットの村は、その後、15年間の静穏さを享受しました。
 邪悪寺院に再び、悪の勢力の影が見られるのは、それからのことです。ザグトモイの影にいた狂気の神タリズダンの存在が顕在化し、新たな冒険が勃発するのは。

D&Dシナリオ「邪悪寺院、再び」につづく(?)

 

●2007年9月10日(月)・作者後書き

 「ウルティマ2」同様、2005年末に始めた、この記事もおかげさまでようやく終了しました。

 「POR」の時に比べて、途中、読者の反応が全くなく、ちょっぴり寂しい気持ちにもなっていましたが(^^;)、まあ、特撮ファンにして、かつTRPGファンでないと楽しめない読み物は、敷居が高すぎたかなあ、と思っています。
 しかも、2005年の段階で、「アバレンジャー&仮面ライダー龍騎」キャラってことは、開始時点で、時流にも全くかなっていない上、そこからさらに2年も経過してしまうと、時代は「ゲキレンジャー&電王」になってますからねえ。書いている本人の興味も、すでにズレてしまって、記事としては不幸この上ない作品かなあ、と。
 まあ、その分、書いていて、ミコさま&リジェが、リオさま&メレにかぶったり、浅倉がモモタロスっぽくなったり、北岡先生がウラタロスとかぶってしまうなど、いろいろキャラを使って遊べたんですけどね。

 そして、一番扱いに困ったのは、ナイト
 邪悪パーティーの暴走を止めるために中立サイドのキャラとして用意したんですが、全く個性を発揮してくれず、状況に流されるだけでした。今にしてみると、って城戸真司との関係を通じて光るキャラなので、仲代先生や、浅倉北岡先生みたいなアクの強いキャラの中では、存在感を発揮できるはずがありませんでしたね。
 それでも、最後の最後で、邪悪に墜ちたメンバーを止めて軌道に戻す役割を見事に果たしてくれたのは、当初の想定がハマッた瞬間です。

 仲代先生リジェ(リジュエル)については、原作アバレンジャーの要素の再現がうまくできて、自分では満足です。何せ、諸事情で追跡が中断してしまって、長年、気にしていましたから。これで、「戦隊ロボット発展史」も仕上げれば、アバレンジャーも自分の中では昇華OK、と思ってます。

 浅倉は、仲代先生に仕切られたせいで、少々暴れ足りなかったと思います。まあ、NOVA自身、バトルよりも交渉で解決するプレイスタイルだったため、仕方ないかなあ、と。ラスボスとの戦いも結局、イベント処理で終わらせてしまいましたし。
 北岡先生は、役者の人がガンダムオタクだったりしたので、マニアック発言を代弁してもらいました。

 ただ、やはりキャラが特撮出身ばかりになってしまうと、原作のイメージもありますから、自由に動かすことに困難さを感じましたね。しかも、いわゆる熱血漢がいないパーティー構成ですから。
 ナイトも、ゾルダも、王蛇も、個々の性格の差異はあれど、全て龍騎に対するクールな面を備えたキャラ。本記事では、王蛇の野蛮人属性をオーバーに描いていましたが、実際の王蛇は、もう少し機転を利かせた策士の性質を持っています。
 仲代先生は当然クールだし、リジェも冷めたツッコミ発言が多発。
 結局のところ、パーティーを動かす原動力は、仲代先生のゲーマー気質に頼るしかなかったということです。

 以上が、キャラを描く上での感想ですが、最後に、ゲームそれ自身の感想。
 ラストのマルチエンディングが思ったよりも、つまらなかった。
 邪悪寺院の探索も、各神殿の思惑が見え隠れしていた地下2階までは楽しかったですが、地下3階から単調化して、キャラの成長も上限が見えてしまうと(最大10レベルまでしかないので)、プレイ意欲を下げてしまいました。
 どちらかと言うと、プレイしながら、D&Dの『グレイホーク・ワールドガイド』やシナリオ『邪悪寺院、再び』を読んで、本作との関連情報をチェックしている方が楽しかったです。まあ、ゲームをプレイするよりも、攻略本を読んで想像を膨らませている時の方が、長く楽しめたりする奴なんで。
 操作性の面では「POR」よりも進化しているけど、ゲーム内ストーリーへの引きずり込まれ度は「POR」の方が上という評価かな。

 では、この次は、2004年末以来になる、D&Dではなく「AD&D」のBG2を再開する予定。