新スーパーロボット大戦
作品解説
(その3・世界観編)
【その1・概観はこちら】
【その2・登場ロボット編はこちら】
【その4・ストーリー編はこちら】
●バルマー来訪による混乱(世界観編)
世界観が完全に仕切り直しとなった本作。
それでも、ガンダムを中心に、多くのスーパーロボットの設定を内包する世界観である以上、これまでと変わらない構造はあります。
第1に、ガンダムワールド特有の「腐敗した地球連邦と、スペースコロニー国家の対立」構造。
第2に、「地球を侵略する複数の異星人と、それを統合するオリジナルの巨大星間帝国」。
第3に、「地球内部で、戦闘ロボットを用いた破壊・侵略活動を行う悪の組織」。
そして、第4に、それらの勢力とは一見、無関係に行動しているかのような東方不敗とデビルガンダムの存在が挙げられます。
ただ、新の世界観においては、それら全ての勢力が2の星間帝国バルマーと、何らかの関連をもっており、三つ巴以上の展開はほとんど行われません。当初、バルマーと対立しているコロニー国家のザンスカール帝国も、中盤クーデターにより親バルマーに方針転換しますし、他の勢力はバルマーと提携。
そして、本作において、しばしば批判ネタにされている「実は宇宙人だった(!)東方不敗」。彼はバルマーと対立しているダグ星系の出身者で、バルマーの侵略目的である超エネルギー物質トロニウム奪取のために、デビルガンダムを利用していたという展開。そういうことだったら、バルマーとの決戦などで協力してくれればいいのに、自分の目的を果たしたら、とっととおさらばするという自己中ぶりを発揮。宇宙人がどうこう言うよりも、原作での「悲劇ながら清々しい幕切れの師弟対決」や、後のスパロボで見られる「燃える師弟共闘」でカタルシスを感じさせることもなく、文字どおりドモンおよびプレイヤーを置き去りに物語から姿を消したことに対して、脱力を覚えたものです(人によっては激怒か)。
東方不敗の例に限らず、本作では、それまでの設定を刷新しようとするあまり、原作ファン、および、それまでのスパロボファンの予想を外し、感性を逆なでする展開を示してしまった例がいくつかあります。
良く言えば、「意外性によるインパクト」は与えたのでしょうが、
その意外性を納得させるだけの丁寧なストーリー描写や、細かい齟齬を吹き飛ばすような勢いある演出を示し得なかった、と考えます。
現在の視点で、新の評価を試みるなら、「熟成期間の必要な新しいアイデアを性急に、むき出しのまま使った」ことで、消化不良を起こした作品と言えるでしょう。もちろん、そこで作られた設定・アイデアの数々は、α以降の作品において、十分熟成された形で日の目を見たわけですから、無駄にはなっていないのですが。
ここでは、各組織の設定や動向について振り返りながら、失敗したと思しき点を改めて批判しつつ、それらが後の作品において、どう昇華されたか見ていきたいと思います。
プレイヤー部隊 | (1)地球防衛軍・極東支部 |
(2)リガ・ミリティア | |
(3)ロンド・ベル | |
コロニー国家 | (4)シャアのネオジオン |
(5)ヒイロとゼクス | |
(6)ザンスカール帝国(ベスパ) | |
異星人たち | (7)バルマー帝国 |
(8)ボアザン帝国 | |
(9)暗黒ホラー軍団 | |
(10)グラドス軍 | |
地上の悪たち | (11)ドクターヘル |
(12)妖魔帝国 | |
その他 | (13)東方不敗 |
(14)古代ムー帝国 |
(1)地球防衛軍・極東支部
何だか、こういう呼称だと、ロボットアニメよりも、特撮物を連想してしまいます。伊福部昭のマーチとか、冬木透の挿入歌が流れてきそうです。後者の場合は、「スーパーヒーロー作戦」などの特撮ゲームで実現するわけですが、それは置いておいて。 これらの不満点を脳内補完するためには、やはりプレイヤーの見えないところで、地球防衛軍アメリカ支部がテキサスマックや、ガンダムマックスターなどの戦力で活躍していたり、岡長官や大文字博士が軍上層部との折衝に悩んでいたりするんだろうな、と想像するしかないのかも。 |
(2)リガ・ミリティア
ザンスカール帝国(ベスパ)のヨーロッパ侵攻に対して、立ち上がった民間ゲリラのレジスタンスです。 その後、リガ・ミリティアは、自前のVガンダムと、助っ人のマジンガー、ボルテスを主力に、原作さながらのカミオン(輸送トラック)逃避行を続けます。カミオンおよび輸送機護衛のシナリオだけで、全部で6シナリオ。やたらと護衛任務が多いのが、宇宙編の特徴といえます。 |
(3)ロンド・ベル
「第3次」や「第4次」そして「F」で、プレイヤー部隊の名称として採用され、スパロボファンには非常に馴染み深いチーム名となっています。今でも、プレイヤー部隊名に使いたくなりますし。 また、ロンド・ベルという名前からどうしても、「第3次」や「第4次」とのつながりを意識してしまうのですが、本作では「ロンド・ベルのエース」のアムロと兜甲児が初対面ということもわざわざ描写されています。 ともあれ、この新版ロンド・ベル。内実において、前作までのそれと全く代わっておりません。アムロもブライトも相変わらずで、リガ・ミリティアとの共同作戦においても、新参者を容易に受け入れる懐の深さを示します。 |
(4)シャアのネオジオン
本作において、微妙な位置付けにある組織その1。 しかし、どうも、本作では「初めにシャアが敵である」という前提があって、単純に侵略異星人に協力する構造だけを作り上げ、それ以降の細部はおざなりにされたようです。 最後に、ネオジオン所属の敵キャラについて、搭乗ユニットとともに列挙しておきます。他には巡洋艦のムサカが登場。 |
(5)ヒイロとゼクス
本作において、微妙な位置付けにある人々その2。 でも、地上編ではドモンとガンダムファイトしたぐらいで、あまり出番がありません。原作どおりヒイロと知り合ったリリーナ嬢も、本作ではいつの間にか退場。ゼクスとの兄妹関係についてもまったく言及なし、と。 なお、本作において登場するMSは、2人の乗機であるWガンダムとトールギスの他は、リーオーとエアリーズのみ。その少なさからも、やはり顔見せ的登場ってことが分かります。 |
(6)ザンスカール帝国(ベスパ)
敵味方という観点では純粋に敵役なんですが、やはり微妙な位置付けにある組織その3。 ザンスカールの立場「異星人に敵対しつつも、地球連邦に対して侵攻を図る」は、第3次のDC、および第4次のノイエDCを思い出します。ただ、指導者のフォンセ・カガチには、ギレンやデラーズ、ハマーンほどのカリスマを感じないので、ザンスカール自体も、どうしても小物的な印象を持ってしまうんですが。 結局のところ、ザンスカールが「異星人と敵対している」という初期設定そのものが、あまり機能していなかったんですね。それが証拠に、仕切り直しのαでは、ザンスカールは「木星圏のジュピトリアン」という設定で、当初から異星人に取り入っています。異星人に取り入っている組織としては、シャアよりもザンスカールの方がふさわしいと思います。 最後に、本作ではザンスカールに所属する敵キャラも大挙して登場していますが、その多くはドラマを持たずに、ただのコマ扱いで消えていきます。一応、五十音順に名前だけでも、列挙しておきます。( )内は搭乗機体。無名パイロットの量産機としては、オーバーヘッドホーク、戦闘バイク、ガルグイユなどが登場。 |
(7)バルマー帝国
本作におけるメイン敵役。 やっていることは壮大なのに、目的は非常に小さく思えます。 ともあれ、バルマーは軍事力だけ突出した戦闘国家という印象を与えましたが、その最終決戦において、あまりにも脱力する様相を呈します。 |
(8)ボアザン帝国 ボルテスVの敵である異星人。 |
(9)暗黒ホラー軍団 ガイキングの敵である異星人(母星はゼーラ星)。 暗黒四天王(東の王デスモント将軍、西の王アシモフ将軍、北の王キラー将軍、南の王ダンケル博士)の駆る4機の母艦グロテクター、戦闘ロボットの暗黒怪獣、そして小型戦闘機のレッドバロムを送り込んできます。 本作では、バルマー配下に付いていますが、上司のダリウス大帝の命令で独自の策謀を繰り広げているようです。一応、北欧方面の指揮官シャーキンの下に配属されているようですが、シュラク隊が極東支部に応援を求めた際、追跡任務に当たった縁で、デスモント以外の四天王が極東方面に赴任。やがて、ハイネルを陥れることとなります。 また、一人ヨーロッパに残ったデスモントは、リガ・ミリティアのカミオン追撃戦で猛威を振るうことに。 その後、地上で采配を取るようになったグラドスのル・カインに対しては、忠実な部下を演じ、地上編の序盤から終盤まで、存在感を示し続けます。最終決戦では、4機の四天王グロテクターが揃ったことにより、恐怖のマップ兵器「デスクロス」(ブラックホール現象)を披露する局面も。 本作に登場する悪の組織の中でも、最もキャラの原作再現度が高く、スパロボ世界にもなじんでいたのが、この暗黒ホラー軍団と言えるでしょう。前作まで、あしゅら男爵などが担っていたコミカルな悪役の要素を備え、しかも卑劣な面を備えており、ベスト悪役という位置付け。 グロテクターは、序盤の強敵ユニットながら、上手くプレイすれば撃墜可能という点も大きいです。基本的に、「ひらめき」を掛けたトライダーを楯にしつつ、射程7からのザウルガイザーで狙い撃つ、という戦法でOK。ボアザンのスカールークが、意外と落とせない(イベントで逃げ出す)ので、ゲーム的にもグロテクター落としの方がスカッとします。 ただし、単体では問題にならない彼らの言動も、バルマーの強大さを演出する点からは、マイナス要素になります。 序盤、彼らが何度か口にするセリフは、次のようなもの。 「地球にこのような強力なロボットがあったとは!」 「ええい、地球には一体何体のスーパーロボットがいるんだ!」 プレイヤーとしては、何体ものスーパーロボットを操る快感を刺激されるセリフですが、冷静に考えると非常にマヌケに聞こえるんですね。 「お前ら、侵略相手に対して、まともに情報収集ぐらいしておけよ」ってツッコミ。いや、暗黒四天王が自分たちだけで地球に来たなら、マヌケなのは彼らだけで済むのですが、彼らはバルマーの尖兵。そして、バルマーはシャアのネオジオンや、ドクターヘル、シャーキンら地球圏の勢力と手を結んでいるのです。 第3次のインスペクターや、第4次のゲストは、地球の兵器を流用、地球人についてよく調べたと思われますが、それに対し、バルマーは「何よりも情報が必要な探索任務」に来ていながら、地球のことをあまり調べておらず、せっかくの同盟者が持っているであろう情報も、部下たちにはフィードバックされていない、組織としてのお粗末さが露呈している、と。 結局のところ、本作での敵組織は、バルマーを中心とする強大な勢力という方向性を示しつつも、それを徹底できなかった点で、魅力を欠いたと言えます。 |
(10)グラドス軍
レイズナーの敵である異星人。 グラドス軍の扱いは、本作初登場の悪の中でも比較的良く、その後、早い時期に再登場した64では、ムゲ・ゾルバドス帝国(ダンクーガの敵)と共に、地球を支配しています。これは、本作ではキャラクターだけ登場した第2部の展開に準じた世界観で、主人公のエイジたちも本作よりたくましく成長した姿で描かれております。 最後に、本作に登場するグラドスの敵キャラを紹介。( )内は搭乗機体。無名パイロットの量産機としては、SPTブレイバー、無人SPTスカルガンナーなどが登場。 |
(11)ドクターヘル
言わずと知れたマジンガーZの敵で、機械獣を操ります。 なお、本作で登場する機械獣は以下のとおり。まあ、いつものレギュラーって感じですが、リアル等身ってところが注目かと。 |
(12)妖魔帝国
ライディーンの敵。 さて、そんな妖魔帝国ですが、本作では「ライディーンが対バルマーのために作られた」というオリジナル設定がありますので、対立する側も当然、バルマーとの関わりが推測できます。古代バルマー人の子孫が妖魔帝国を作った、との設定でもあれば、もう少し劇的になるのでしょうが、本作でははっきり明言されないので、ただ顔見せ的に出てきただけの悪役って扱い。 |
(13)東方不敗 本作で、最もプレイヤーの反響(反発)を受けたキャラ、それが宇宙人(ダグ星系人)の東方不敗マスターアジアです。 いや、Gガンダムファンとしては、本作は非常に楽しめる作品なんですよ。機体は強いし、戦闘シーンは迫力あるし、人間キャラとして戦えるドモン、マスター、シュバルツ、そしてアレンビーは楽しいし、デビルガンダム四天王はきちんと出るし……シャッフル同盟が出ないことを除けば、スパロボにおける「GガンのGガンたる要素」を、ことごとく備えています。 ただ……東方不敗マスターアジアを、無理矢理バルマーとの関わりの中に押し込めようとしたあまり、驚愕の設定を付け加えちゃった。 原作のマスターアジアは、「誰よりも地球を愛する漢」であり、その強すぎる思いが、「地球の環境を守るデビルガンダムを使って、地球を破壊する人類の抹殺をもくろむ」という行動に出た、と。その中でも、弟子のドモンに対する愛情やら、武闘家の師匠としての「負けられまい」という意地やら、いろいろと噴き出す思いを拳に乗せてぶつけていた。 ある意味、シャアと同じで「とても純粋なキャラ」なんですね。 そういう、原作設定を改編するに当たって、本作でやはり見せたかったのは、「地球だけにとどまらない広い視点と、将来の星間戦争に突入するに際しての設定的お膳立て」と思うんですが、そこまで示す前に、プレイヤーの拒否反応を受けてしまった、と。 自分としては、やはりマスターアジアについては、本作の最終決戦で汚名返上の機会を与えるべきだった、と思います。 ラスボスのズフィルードあるいはデビルゴステロにプレイヤーユニットが大苦戦する中に、突然出現して援護、大ダメージを与えてくれる、と(F完結編での再登場シーンは格好良かった!)。 その上で、バルマー大艦隊が地球に来るのを、単身、阻止しようと宇宙に旅立つ東方不敗、ついでにシャアが同行する……なんて展開だったら、まあOKかな。 いずれにせよ、「東方不敗が宇宙人だった」って追加設定それ自体は、面白い可能性だったと思います。問題は、追加設定を付け加えつつ、原作のキャラは崩さずに、どう演出するか、そこにあったのではないか、と。 |
(14)古代ムー帝国 厳密には、組織とは言いませんね。何しろ、古代に滅んでしまっていますから。 一応、ライディーンの背景にあり、地上編の中盤での山場で、古代ムーの海底遺跡を探索することになります。そこで分かった衝撃の事実は、「バルマー帝国の侵攻から逃れた異星人が、古代の地球でムー帝国を築き、また対バルマー用として戦闘ロボット・ライディーンを作った」という設定。これはまた、地球人の起源が宇宙にあることを示唆した内容にもなっており、ここでの設定を掘り下げるなら、「東方不敗が宇宙人だった」なんて、どうでもよくなってしまいます。 ただ、せっかくの大仕掛け的設定も、これ以降、トロニウム争奪戦とGガンシナリオが中心となって、あまり顧みられることがなかったのが、非常に残念です。 古代ムーの秘密を少女ミュウが美麗なCGで語る場面など、非常に手が込んでいるにも関わらず、ストーリーとして顧みられないなど、力の入れどころを明らかに間違えた、と思います。 なお、本場面は、ライディーンのみならず、古代遺跡探索のストーリーということでガイキングを、また南米クスコの遺跡に眠る「グラドスの刻印」という原作ネタからレイズナーを取り入れている、とも考えられます。その意味で、スパロボ特有のクロスオーバー感覚に満ちている、と。 素材としては非常に魅力的だったにも関わらず、それを上手に料理しきれなかった点など、つくづく惜しかった、と思います。 あと、古代ムーといえば(ラーゼフォンはともかく)、やはりゴッドマジンガーを連想しますし、ゴッドマーズにも広げていけそうですね。白い鯨は無理かなあ、とか、そう言えば忘れてはいけないアクロバンチ(COMPACT3)とか、いろいろとネタは広げていけそうなので、今後に期待ってことですね。 |
何をもって、「シャアらしい」と考えるかは、個人差も大きいのでしょうが、ここでは原作ではなく、スパロボ世界における「異星人侵略を初めとする地球の危機に際しての行動」というテーマに絞って、シャアを振り返ってみたいと思います。
まず、スパロボの歴史において、基本的に異星人は侵略者であり、親異星人派があまりよく描かれていない点は重大なポイントです。
第2次では、「異星人来襲に備えて地球圏を統一する」という名目で、ビアン総帥がDCを結成。シャアもDCに所属しています。DCは武力による地球征服を目指した、ということで悪役になっていますが、ビアン総帥は自分が悪役として葬られたとしても、自分を葬った勢力が地球の平和を担ってくれるだろう、ということまで計算しています。
続く第3次では、実際に異星人が来襲し、地球連邦とDC、そして異星人の三つ巴の戦いが展開されます。ただし、DC内部でも、親異星人のキシリア派と、本来の理念である反異星人思想を掲げるギレン派が分裂。ガトーや、ルートによってはシャア本人が、反異星人の理念をもってプレイヤー側の味方として行動する一幕がありました。
続く第4次でも、異星人と結託するメガノイドDCはとことん悪役で、反異星人思想のノイエDCの方に、プレイヤー側が同調できる展開が用意されていました。
つまり、スパロボの歴史において、親異星人という考え方は、必ずしも好意的に扱われていないわけで、シャア本人も(宇宙移民者のスペースノイドを尊重する立場ではありますが)侵略者である異星人に対しては、果敢に立ち向かう姿勢を表明していたわけです(時にはマスクを着けながら、時にはクワトロ名義で)。
もちろん、第4次では、エルガイムやダイモスの物語を通じて、異星人にも信頼できる相手がいる、というメッセージは込められています。そして、最終的にはゾヴォーグ大使メキボスを通じて、和平の道を模索する流れで、ストーリーは完結しています。ただ、それも力の信奉者をさらなる力で粉砕した後に、改めて話し合いのできる相手との平和的解決という展開をたどるわけで、相手の力に屈しての消極的な平和維持策を是としたわけではありません。
こうした過去のスパロボの歴史の蓄積がある以上、新でのシャアの選択は、プレイヤーにとって必ずしも受け入れられやすいものではなかった、と言えます。
むしろ原作のシャアの行動を見る限り、強大な敵に対して少数精鋭のゲリラ、あるいはレジスタンス活動で理想を貫くだろう、と考えます。保身のために、人類を売り渡すような行動は(たとえ、それが最善の策に見えたとしても)取りそうにないし、むしろ、そういう行動をとる相手こそ軽蔑し、嫌悪するように思えます。
そういうイメージどおりのシャアが描かれたのが、64です。NOVAとしては、「64は、新で描こうとして失敗した、あるいは描ききれなかった要素の一部を昇華した作品」という位置付けなんですが(レイズナー、ガンダムW、そして逆シャア)、
64での物語冒頭において、地球圏は完全に異星人に占領されております。これは、レイズナーの後半部およびダンクーガの設定に準じた形ですが、異星人の走狗としてOZのスペシャルズ(ティターンズ含む)が同じ地球人に圧政を加えていたりします。それに対して、レジスタンスとして立ち上がるのがプレイヤー部隊であり、その中心にクワトロことシャアがいるわけです。
64は割と展開が早い作品(ガンダムサーガでは、Zの序盤から、ZZ、逆シャアまでをじっくり再現)で、物語中盤において、異星人の勢力は地球から一度、排除されるわけですが、その後、地球圏は反異星人に宗旨変えしたOZや、ハマーンのネオジオン、ベガ星やギシン星など異星人勢力の入り混じった混乱期に突入。プレイヤー部隊も、「独立部隊として行動」「サンクキングダムの完全平和運動を支援」「OZに参加する」の3パターンの選択肢を選ぶことができます。どれを選んでも、結果は異星人を迎撃しつつ、地球圏の混乱を収めていくという点で共通の方向になるわけですが、
地球圏の混乱が大体、収まってきた終盤において、シャアが反乱を起こすわけですね。いわく、「これだけ何度も混乱が引き続き、それを乗り越えてきたのに、一向に変化しようとしない地球の愚民どもを修正してやる」との主旨。まあ、64は数あるスパロボ作品でも例を見ないほど、多数の敵組織が入れ替わり立ち代り、混乱を引き起こしているわけだから、シャアの言い分にも大変説得力があるわけです。
しかも、本作でのシャアが評価できるのは、行動を起こすのが他の異星人勢力を排除した後、ということです。異星人と手を組んでの地球侵略などはせず、あくまで自分独自の勢力で動く点が潔いです。
このように、全てが終わってから、最後に行動を起こすシャアは、COMPACT2およびリメイク風作品のIMPACTで見られます。
今から思うに、「逆襲のシャア」って作品は、ガンダムサーガの一種集大成にあたるわけで、十分に重い歴史を引きずっているわけです。そして、シャアの理念は、他の異星人との関わりを交えて描くには複雑すぎます。よって、「全てが終わった後の独立した物語」という位置付けがベストかもしれません。
ただし、シャアをどのように描くかは、スパロボ作品でも冒険的で魅力ある素材といえます。
無難なのは、従来どおり、クワトロ止まりにすることで、スパロボでも「Zガンダム」を素材にすることが多いため、ストーリー的な齟齬も起こりにくい、と言えます。最新作のMXでも、クワトロ止まりですが、それはそれで悪くないと思います。と言うのも、原作での不幸が解消されるというIFワールドにおいて、「逆シャア」のストーリーはシャアの不幸な結末である以上、それを避ける展開もあっていいかな、と。連邦議会で政治家キャスバルとして活動するシャアも、一つの理想形と思えますし。
逆シャアを用いた作品は、正編ともいうべき第2次α、そして携帯機のRとD。自分はどれも未クリアなので、ストーリー的な詳細は書けませんが、
第2次αは、大河シリーズで初めて「逆シャア」を描いた作品……ということで、今、一番、注目しているのは「もう続編ではクワトロやシャアが使えない」という点。これは裏を返せば、今後、νガンダムやアムロがどうなるか、にも関わってくるわけで……「逆シャア」を出してしまえば、それで1stガンダムからの流れは完結してしまう。そちらの方が今後の作品としては、どうなるかと心配、あるいは新展開を期待してしまう、と。もちろん、シャアはいないけど、アムロは健在な世界観も作れるわけだし、シャアがいなくなれば、次はブライトにスポットが当たって、「閃光のハサウェイ」を期待したりも。ともあれ、αシリーズは引き返せない道を選択したな、と思ってます。
Rは、α外伝に次ぐタイムスリップネタ。「逆シャアが序盤!」という衝撃的な導入部。不幸な未来を過去に逆上って修復するという、SF的には非常に面白い展開に。
そしてD。これは、逆シャアの設定ほぼそのままに、シャアが味方になる、という意外な展開。何しろ、シャアの想定しない形で地球が消滅……というとんでもない事態になって、地球を守るためにネオジオン総帥のシャアが立ち上がる、という「原作とは異なるけれど、いかにも原作キャラらしい行動」というスパロボ特有の「らしいIFワールド」を構築しているわけで……。
いずれも「逆シャア」という素材に、巧みな味付けがされていることを期待できる作品の数々。
今はまだ無理だけど、いずれ、それらの作品もじっくりプレイして、改めて考察していきたいと思ってます。
HPの低い順に紹介。なお、各機体には改良タイプもありますが、カラーリングと一部ディテール以外に大差ありませんので、割愛します。
スカウト | スカート付き砲台といった形の偵察用メカ。 三角形の光線・ミノフスキートライアングルを放つ。 |
シース | 蜂型の飛行メカ。はっきり言ってザコである。 |
ザドック | シャアとゼクスが開発協力したと言われる、MSに似た人型兵器。 ビームサーベルとライフルで武装しており、 性能的にはガンブラスターに匹敵する。 おまけにビームコートまで装備しているが、 登場が地上編メインなので、さほど苦戦しない。 宇宙編で出てきたら、嫌な相手だったろう。 |
キョウ | NOVAお気に入りの、女性型格闘メカ。 さりげなく分身能力まで備え、性能もR1に匹敵する。 戦闘グラフィックも非常によく動く。 |
ゲルドラ | ザドックの強化タイプ。 デザインは大差なく、カラーリング的にはブルーな点がグフっぽい。 でも、なぜかビームコートがなくなり、サーベルではなく格闘で戦う。 |
アマジャ | 小型MAを思わせる機動兵器。 デザイン的には、腕のついた球体ポッド。 飛行砲台として活用される。 |
シュトゥル・クトゥール | 小型MAを思わせる機動兵器。 デザイン的には、砲台で武装したブースター。 ネオジオン兵士も乗っており、ギラ・ドーガの後方支援が担当と思われる。 |
リコニトーレ | サイコミュ兵器で武装した人型ロボット。 バルマー版ヤクトドーガに位置づけられるのだろうか。 デザイン自体は、もう少し無骨だが、強敵度が増してきた。 |
アルテミス | 戦車型兵器。 |
バディオ | こちらも戦車型兵器。 アルテミスよりもタフだが、機動性に欠ける。 基地内の護衛が任務とのことだけど、海適正Aという特徴を持つ。 海中で、ゲッター3と戦わせたいけど、そういうシーンはない。 |
バトルクラッシャー | コン・バトラーチームの2号機と同じ名前を持つが、 デザイン的には、ウォルターガンダムに良く似ている。 すなわち、球状の上半身を細い4本足で支えたアンバランスな機体。 それでも、ボディの強度は高く、結構な強敵。 |
ジャム | やや長い手足と、細身のボディ。 一応人型だけど、野生のサルに近い怪物じみたデザイン。 見た目は貧弱にも見えるが、実は恐ろしい強さを持つ最強の量産型機。 |
フーレ | 他作品にも登場する、バルマーの主力戦艦。 デザインは、白いニンジン。 |
ズフィルード | バルマーの最強ロボットで、ジュデッカ・ゴッツォの専用機。 相手の能力を分析して進化する「自己進化・分子構造記憶」機能を 持つ。再生能力を持つズフィルード・クリスタルで機体が構成され、 デビルガンダム並に無敵の存在と言えるが、 本作では、味方機のヘルモーズの主砲の藻屑と消えることに。 |
ヘルモーズ | 本作では、決して倒せない最強の超大型戦艦。 どれだけ大きいかと言うと、全長27キロメートルで、 エンジェルハイロゥより大きく、富士山より小さい。 ちなみにラー・カイラムは487メートルで、50倍の差がある。 ともかく、最終決戦でのマップが、ヘルモーズなのは圧巻である。 |