新スーパーロボット大戦
作品解説
(その1・概観)
【その2・登場ロボット編はこちら】
【その3・世界観編はこちら】
【その4・ストーリー編はこちら】
●混迷した背景
「第4次スーパーロボット大戦」(1995年3月)で、スーパーロボット大戦シリーズ(DC戦争編)が一度完結。
その後、同シリーズはしばし、模索期に突入します。
折りしも、1995年の家庭用ゲーム界は、それまで王道を歩んでいたスーパーファミコンから次世代機に移る、過渡期の真っ最中。
発売順にハード名を挙げるなら、3DO(94年3月)、セガサターン(94年11月)、プレイステーション(94年12月)、PC−FX(94年12月)が次々と発売され、混迷状態となっていました。なお、スーファミの正統な後継機であるNINTENDO64の登場は、少し遅れて96年の6月。
95年〜97年の間は、それらのハードが生き残りを掛けて、熾烈な競争を行っていたわけです。その結果、国内のゲーム業界を制したのが、「ファイナルファンタジーZ」などを追い風にしたプレイステーションであり、PSおよび後継機のPS2が業界トップを走る状況は2004年現在に至るまで続いています。
さて、そんな混迷したハード界に合わせるように、スパロボシリーズも、世紀末の5年間は、いろいろな方向性を探っていました。
96年初頭にはいち早く、リメイク作品の「第4次S」を発売して、メインのプラットフォームをPSに見定めつつも、それに前後して、携帯機のリメイク作品「第2次G」(95年6月)や、スーファミ最後のシリーズ作品「魔装機神」(96年3月)を発売。それまで培ってきた任天堂との関係を維持します。
さらに、97〜98年に「Fおよび完結編」をセガサターンで、99年に「64」を任天堂のハードで出すなど、メインのプラットフォームが見えにくい状態が続いていました。96年末に「新スパロボ」が出てから、続編が出なかったことも、不鮮明さに拍車をかけています。結局のところ、ユーザーの立場から見て、スパロボがPSで続いていくことがはっきりしたのは、98年末〜99年にかけて、「Fおよび完結編」の移植や、リメイク作の「コンプリートボックス」がPSで提供されてから、といえます。
それ以降、2000年に「α」が出てからは安定して、PSおよびPS2に年間1本のペースで作品が提供され、戦闘シーンで雄叫びを響かせてくれています(その他、携帯ゲームでの商品展開も順調に進行)。
以上の経緯を顧りみても、この「新スパロボ」という作品、大変に重要な足跡を残しているにも関わらず、過渡期の中で埋没しがちな不遇な作品というイメージがつきまといます。
いかにも続編が出そうなエンディングであるのに、結局は「α」において世界観の仕切り直しがなされたため、良く言えば「α」のプロトタイプ、悪く言えばスパロボ界の抹消されつつある黒歴史的な作品と言えます。
同じような状況にある作品なら、「魔装機神」と「64」も歴史の狭間に埋もれそうな作品であることは変わらないのに、前者は「大人の事情が許せばリメイク希望筆頭作品」、後者は「隠れた名作」との評価も聞きます。それに対して、「新スパロボ」はあまり良い評判を聞かないんですよね。
そこで、ここでは「新スパロボ」という作品の独自性を振り返りつつ、その功罪についても、検証してみたいと思います。
●「新」の感想と概観
前述のとおり、1996年初夏の段階で、スパロボの続編がどうなるかは不鮮明でした。
リメイク作品の「第4次S」や「第2次G」、そして「魔装機神」は、それぞれ傑作だったけど、いまいち派手さに欠けるかなあ、と思っていたある日、某アニメ雑誌で「天野由梨」嬢が「新しいスパロボのために、声を収録した」という記載を見つけて、おおっと心が動きました。彼女は、Gガンダムのヒロイン・レインの声優さんということで、当時も今も変わらぬGガンファンのNOVAにとっては、注目のニュースだったのです。
声入りってことはPSだな。すると、「第2次G」で活躍したGガンがカラー画面で動く? 物語はどうなるんだろう? 「第4次」の続編だったら、「第2次G」の物語と、どう矛盾なく絡めるんだろう?
いろいろ疑問が湧きあがりました。当時は、スパロボの路線は「DC戦争」一本道で、それ以外の世界観は前例がなかったので、上の疑問も当然のことと思います。
その後は、ゲーム雑誌の情報をネタに知識を補完しつつも、いろいろ想像や妄想をふくらませながら、発売を楽しみに待っていました(この辺りのワクワク感は、今でも持ち続けていますし、これがある限りはスパロボファンはやめられないと思います)。当時を思い出すと、リアル等身で戦うボルテスVやトライダーG7の勇姿を、コンビ二の予告編デモで見るだけでも、ずいぶん燃えさせてもらいました(コンビニでゲーム発売するようになったのも、この頃でした)。
ただ実際にプレイした感想は、「第4次」みたいな集大成作品に比べて小粒。声とグラフィックは最高。新キャラのリュウセイはマサキほどの魅力に欠ける。いろいろ未完なので、続きが気になる……といったところ。
これらの感想を踏まえた上で、システム・ストーリー面の分析をば試みまでに。
@声と音楽
やはり、「新」を語る上で、一番重要なのは、全キャラが戦闘シーンで喋った初のスパロボと言うことでしょう。
PSでの第1作「第4次S」は、声の入った初のスパロボでしたが、主役格のキャラしか喋りませんでした。当時はそれでも、兜甲児が「ロケットパーンチ!」と言うだけで感動でしたが、それだけに喋ってくれない大介さん(デュークフリード)がいっそう物悲しく思えたり……。一番、燃えた戦闘シーンが、敵味方共に声入りの「ダバVSレッシー」だったり。
そんなわけで、敵も味方も全キャラ喋る「新」は、ものすごく燃えたものです。しかも、主要キャラの一人が、あのドモン・カッシュですからね。「オレのこの手が光って唸る! お前を倒せと輝き叫ぶ!」の決めゼリフは、派手なグラフィックと、シャイニング(およびゴッド)ガンダムの爽快なまでの強さと相まって、気分を奮い立たせてくれました。
それと、声優エピソードで感心したのが、スパロボの声の収録のために、わざわざ駆けつけてくれたボルテスVの剛健一こと白石ゆきなが氏。声優引退していたのに、昔の作品を大切にしてくれている……と聞くと、ロボット者としては嬉しくなります。
ボルテスと言えば、敵キャラのハイネル(市川治)も、シャーキンとの掛け持ちで、初出演。声が入ると、ライバル同士の対決も、いっそう盛り上がるというものです。
そして、個人的にお気に入りは、ボアザンの将軍ジャンギャルこと飯塚昭三氏の悪役声。思わず、幻夢界に引きずり込まれてしまいます(笑)。巨大なドクロ型要塞スカールークの大型ドリルが、またいいんだよ。敵の武器で、これほどダメージを喰らいそうなのはないと思う。
……声とグラフィックについては、話すと尽きないですが、でも音楽だけは不満点。
それは、敵ターンの戦闘BGMが固定な点です。
例えば、ボルテスが攻撃するときは、ボルテスの主題歌が流れるんだけど、敵からの攻撃では、敵専用のBGMが延々流れている、と。しかも、それがまた軽いノリの曲で、どうにも好きになれない。もう少し、重量感のある曲なら……と思いながら、さっさと敵ターンが終わるのを心待ちにしていました。
このBGM固定は、声が入って読み込みが遅くなるのを避けるための苦肉の策らしいですが、技術が進化したらしく、以降の作品では(スーファミ時代同様)BGMが主役キャラに合わせて切り替わるようになりました。
Aグラフィック(リアル等身のロボットと、カットイン)
スパロボは、基本的に2等身のSDキャラが活躍します。しかも、F以前は、ガンダムに「目玉」があるなど、リアルよりも、SDガンダムの延長で描かれていました(ストーリーは、リアルに準じていたにも関わらず)。α以降は、原作に従った真ゲッターや、ジャイアントロボ、それにボスボロットなどを除けば、「目玉」は描かれなくなりましたが。
それでも、第4次以降から「少しでもリアルな映像を」という方向性が明確になり、その頂点が「魔装機神」と本作で試みられた「リアル等身のロボ描写」と言えます。α以降の「SDだけどよく動く派手な画面」に見慣れた現在でも、「新」のリアル等身ロボは(動きは少なくても)格好良く映ります。とりわけ、サーベル同士の「切り払い」で、リアル等身ロボがぶつかり合う様子は、SD同士よりも力強さを感じます。
ただ、同一サイズのロボット同士なら格好いい映像でも、サイズの大きく異なる戦艦を交えた場合、非常に滑稽に見えます。巨大なアフロダイAや、νガンダムが、レウルーラやアドラステアといった戦艦に格闘したり、サーベルで切りかかったり……SDだと「ゲームならではの表現」と脳内補完できたものの、リアル等身だとサイズ差の異常には嘘がつけないんですね。「魔装機神」の場合は、巨大な戦艦が登場しないので問題なかったわけで、「新」に入ってリアルサイズの弊害が露呈した、と。
なお、スパロボ風味で、リアル等身を追求した作品ですと、「リアルロボット戦線」や、「Scramble
Commander」が挙げられますが、それらは戦闘シーンに戦艦を登場させておりません。それでも、例えば、ガンダム(18m)とダンバイン(6.9m)、グレートマジンガー(25m)とゲッターG(50m)が同サイズに見えてしまうのは、設定重視の視点では、おかしいんですけどね(それを言うなら、後者は劇場アニメでの描写も明らかにおかしいんだけど^^;)。
さて、リアル等身のもう一つの弊害は、ロボの最大の特徴とも言うべき「頭部が描きにくいこと」です。まあ、頭でっかちのSDと比べると、バランス的に頭部が小さくなるのは必然ですね。
それを補う意味もあって、本作ではロボが必殺技を発動する際、「上半身だけのカットイン」が挿入されることになりました。それだけでなく、パイロットのカットインや、殴ったり蹴ったりするGガン、「大雪山おろし2段返し」で敵を虚空の彼方に投げ飛ばす真ゲッター3など、リアルさを通り越した迫力ある戦闘グラフィックを展開。さらに、ある意味、ロボットよりもよく動く「人間キャラ東方不敗」による格闘シーンなど、本作の戦闘シーンは、他のスパロボと一線を画す面白さ、格好よさに満ち溢れている、と言えます。
本作の経験を活かしてこそ、最近作のMXなど、「基本的にはSDなんだけど、決めポーズの時に、一瞬だけリアル等身になる」など、凝った映像に進化したんでしょうね。
Bあまり変わらないシステム
「第4次」と比べて、本作のシステムは、ほとんど変わっておりません。
本作以前、および本作以後でも、スパロボは毎作、何らかの追加システムが採用されているわけで、ここまで前作同様のシステムを維持したスパロボは、本作オンリーと言えるでしょう(システムの変化よりも、音声やグラフィックの変化を重視した)。
あえて、変化した部分に焦点を当てるなら、以下の4点。
1.「気力」を「戦意」と言い換えた。
スパロボでのメカが、パイロットの気力によって強くなることは、「第3次」以降のお約束です。
ですが、本作に限り、「気力」を「戦意」と呼んでいます。ルール上は、まったく同じ扱いなんですが、スパロボの世界を新しく仕切り直すに当たって、「用語の変化」を行ったのでしょうか。
だけど結局、「戦意」という言葉は定着せず、F以降、「気力」に戻っています。
個人的にも、「戦意」よりは「気力」の方が、音の感じが力強くて好き。「気力転身! オーラチェンジャー!」なんてネタとは関係なくても(音声学的にも、サ行よりカ行の方が、固い感じなんですね)。
2.精神コマンド「見極め」
ウッソが持っています。
効果は、「マップ兵器を味方に当てず、敵のみに当てる」。要するに、光の翼などをサイフラッシュのようにするわけですね。本作のみのレア精神コマンドと言うことで。
3.特殊技能「マジンパワー」「野生化」「超能力」そして「社長」
第4次で初めて採用された特殊技能。
これらが、本作ではさらに「個々の作品特有のヴァリエーション豊かな能力」として深化しました。
マジンパワーは、マジンガーZ専用の特殊能力。戦意130以上で発動して、ユニットアイコンがグレートみたいに鋭角化。武器の攻撃力が約2倍に強化されます(その分、EN消費も倍に)。α以降のマジンガー系ユニットにも採用されていますが、効果は本作に比べておとなしくなってますね(ダメージ1.25倍)。
野生化は、ダンクーガの獣戦機隊が持つ特殊技能。戦意130以上で発動して、攻撃力1.5倍です。α以降は、やはり1.25倍に減少していますが、4人のパイロット全員が「気合」を覚えるダンクーガでは、発動も容易です。
超能力は、ガイキング他、大空魔竜隊コンバットフォースの面々が持つ特殊技能。命中・回避に+3修正、および消費精神ポイントが80%になります。これは、αでは主人公用の特殊技能「集中力」として、消費精神ポイント80%の効果のみ復活。また、ゴッドマーズの登場する「64」や、ガイキングの復活した「第2次α」では、超能力という名称も復活、命中・回避などにボーナス効果を与えています。
なお、超能力に似て非なる念動力という技能(ライディーンの洸やSRXチームが所持)は、本作では未登場。
最後に、トライダーG7の竹尾ワッ太の持つ特殊技能・社長。獲得資金が1.5倍になります。その後の作品では、αの主人公用特殊技能として復活したあと、「強運」と名前を変えて、部隊の改造費用をまかなってくれています。
4.武器のフル改造による武装追加
どの機体のどの武器を改造するかは、スパロボでも頭を悩ませる(でも楽しい)点。まあ、α外伝以降は、「個々の武器ではなく、まとめて改造」になりがちですが。
そして、武器を改造して追加武器(マップ兵器)が生まれるのは、本作が最初となります。本作で加わるのは、ダイガン(ダンクーガ)、光の翼(V2ガンダム)、爆熱ゴッドフィンガー(ゴッドガンダム)、バスターライフル(Wガンダム)の4つ。
なお、改造ボーナスというシステムが最初に出た作品は、第2次G。そのときは、機体フル改造によるユニット強化でした(V2の場合は、V2アサルトバスターに進化)。
武器のフル改造によるボーナスが生まれたのは、「魔装機神」が元祖。ただし、武装追加ではなく、武装変化でした(ファミリア→ハイファミリアとか、ディスカッター→バニティリッパーとか、名称は変わらなくても射程が増えたり、とか)。
CSRXチームとバルマー帝国
本作のストーリー上の注目点は、魔装機神サイバスター、ゲシュペンスト(グルンガスト&ヒュッケバイン)に次ぐ、バンプレストオリジナルメカSRXを登場させた点です。
同時に、SRXに敵対する異星人勢力として、ジュデッカ・ゴッツォ率いるバルマー帝国・辺境銀河方面軍第8艦隊を創造。その圧倒的な戦力の一端をかいま見せてくれました。
プレイヤー操るスーパーロボット軍団は、かろうじてゴッツォの駆る「生体金属でできた巨大ロボット・ズフィルード」を撃退。しかし、敵の本隊はまだまだ健在で、いつ再び地球に向けて侵攻してくるか分からない……という結末です。ついでに言えば、バルマーの再侵攻に備えて、軍事組織OZが結成されたという引きで、本作では顔見せ登場に終わったWガンダムの物語に展開していくはず……だったんですがねえ(苦笑)。
その後、SRXチームおよびバルマー帝国の物語は、練り直されて、「α」や「オリジナルジェネレーション(OG)」といった後継作品に引き継がれていくことになります。
名称も多少の変化が見られ、α以降は、バルマー帝国ではなくて、ゼ=バルマリィ帝国と呼ばれています(地球人側は、主にエアロゲイターという通称を使用)。本作のラスボスであるジュデッカ・ゴッツォも、ラオデキヤ・ジュデッカ・ゴッツォというのが正式名称となり、又、αでは「ジュデッカという名前のロボット」まで登場するため、少々ややこしくなっております。おまけに「ユーゼス・ゴッツォ」なるキャラも登場しますからねえ。
「新」と「α」の間のミッシングリンクをつなぐ作品として挙げられるのが、「スーパーヒーロー作戦」です。この作品の主人公イングラム(およびヴィレッタ)は、αおよびOGでも重要な役割を果たすキャラなんですが、「新」の時点では、まだ登場していません。
ただ、イングラム的な役割をする人物として、「新」では2人のキャラクターが挙げられます。それは、神隼人とアムロ・レイ。
前者はSRXチームの指導教官として、後者はSRXチームのアヤ・コバヤシが心惹かれる男性(念動能力者はニュータイプに憧れる、とのこと)として、それぞれ後にイングラムが受け持つ役割の原点と言えます。
あ、それと、忘れてはいけない。本作は、古代(オカルト)遺跡の専門家でもある眼鏡美女・安西エリ博士のデビュー作でもあります。オカルト要素の少ないOGでは登場しなかった彼女ですが、「新」では古代ムーの海底遺跡を発見、「α」では古代中国の守護者・龍虎王を掘り当てた功績を誇り、同シリーズでの隠れたレギュラー的存在になっています。一応、「超機大戦SRX」のキャラ扱いだけど、SRXチームの出ない「第2次α」でも登場している点がポイント高いです(と言っても、NOVAはまだ彼女を見ていない。龍虎王が絡む「クスハ編」に出るのかな?)。
D小粒なストーリー
本作の欠点はいくつか挙げられるわけですが(とりわけストーリー部分において)、細部は後述するとして、ここでは構造的な問題点について。
まず、本作が小粒という印象ですが、当然、集大成作品である「第4次」と比べて、一からストーリーを構築しなければならない本作が小粒になるのは、やむをえない、という考え方はあるでしょう。
しかし、では「第4次」以前の「第2次」や「第3次」そして「EX」と比べては、どうか?
本作のストーリー構造上の特徴は、途中から「地上編」と「宇宙編」に完全に分かれて、(最後のおまけシナリオを除いて)合流しないという点に挙げられます。
これは、各スーパーロボットが勢ぞろいして巨敵に挑む構造の「第2次」や「第3次」と違い、マサキ・リューネおよびシュウの3章に分かれて、別視点の物語を展開する「EX」に近い構造です。よって、「新」と比較するなら、「EX」がふさわしいでしょう。
EXの場合、他のスパロボ作品のような多くのロボット主人公の群像劇という側面よりも、単独の主人公を中心としたストーリーと言えます。例えば、マサキの章では、何よりも「マサキを中心とする人間関係がきちんと描かれ、マサキと因縁関係にあるラスボスとの決着まで描かれる」なら、物語としては成功と言えます。それは、リューネやシュウについても然るべきですし、じっさいにEXでは、それがきちんと成功していると評価できます。EXを評するなら、「小粒だけど、手堅くまとまったストーリーの3本立て」と考えるのが妥当でしょう(ラスボスのフェイルロード、カークス、ヴォルクルスが、それぞれの主人公と何らかの因縁を持っている、という点がドラマ的にもおいしい)。
一方、新においては、主人公が定かではありません(SRXチームは顔見せ的登場で、主人公としては描かれておらず)。
すると、結局のところ主人公不在のスパロボと言うことで、「第2次」や「第3次」のような群像劇となるんでしょうが、この場合、ビアン博士やインスペクターのような強大な敵勢力との決戦……がポイントになる、と思います。一騎当千の強者どもが、巨敵に対して力を合わせて立ち向かう……バトルアクション大河ドラマとしては非常に燃える展開ですし、それがスパロボの魅力でもあるわけです。
しかし、新では、地上編と宇宙編に部隊を分けるのみならず、ラスボスであるべきバルマー帝国のジュデッカ・ゴッツォとは、宇宙編の部隊だけで決着をつけてしまったのです。プレイヤーの実感としては、MS主体の宇宙編より、スーパーロボット主体の地上編の方が明らかに戦力が上。ということは、弱い側のチームであっさり倒せてしまえるバルマー帝国って、何それ? って感じなんですね。物語上は、その強大さばかりが取り沙汰されるバルマー帝国ですが(あのシャアをして、「バルマーには勝てないから、無駄な抵抗止めて、地球人は降伏すべきだ」なんて、キャラに似つかわしくないことを言ってるのに)、νガンダムと、V2アサルトバスターと、ダンクーガと、マジンガーZと、その他大勢のMS軍団(ガンブラスター中心)だけで、撃退してしまえるんです。
第4次でも、終盤、部隊を2つに分けているものの、最終決戦で合流して、総力を挙げたクライマックスを演出しています。敵が強大なほど、それと戦う主人公も強く見えるのが、バトル物の演出の基本なのですが、それは逆も言えるでしょう。すなわち、味方が総力を挙げるほどの敵だからこそ、その強大さが印象付けられる、と。その点で、バルマー帝国のジュデッカ・ゴッツォに関するゲーム上の演出は、ちっとも強く感じられないという点で、大失敗だと言えるわけです。
ちなみに、地上編と宇宙編の両方をクリアすると、追加最終シナリオ「狂気の力」をプレイすることができます。そちらは、「デビルガンダムの力を得たゴステロ」という色物キャラと戦うわけですが、ジュリア(レイズナー)やハイネル(ボルテスV)、シュバルツ(Gガンダム)、ゼクス(ガンダムW)といった隠しキャラが次々に助っ人に登場するという、燃える展開を示します。それはそれで楽しいのですが、ストーリー演出を盛り上げる上では、やはり、この追加最終シナリオのラスボスこそ、ジュデッカ・ゴッツォであるべきだった、と考えます。
ただ小粒な物語……という批判では、「小粒に作ったのだから、そう見えて当然」と切り返すことができます。怪獣映画に対して、「怪獣が出るのはリアリティに欠けるので、駄作」と言ってしまうようなもので、批判としては的外れもいいところでしょう。この場合、批判すべきは「演出意図と実際の効果のギャップ」であるべきで、新の場合、「強大な敵の侵攻を意図した物語であり、今後の壮大な物語の序章であるにも関わらず、シナリオ構造や演出面から、それをプレイヤーに実感させることができず、バランスが欠けた」と言えます。分かりやすく言えば、「デカいことをやろうとして、映像と音楽はきちんと用意したものの、物語内でやっていることがどうしてもチャチに思えてくる」と(何だか、映画批判、あるいは昨今のグラフィック過多のゲーム批判みたい^^;)。
なお、本作での構造上の失敗点は、後の作品ではきちんと昇華できていると思います。
「地上編」と「宇宙編」という点で、本作と対比できる作品が、「Compact2」(およびImpact)。これは3部構成で、地上(第1部)と宇宙(第2部)に分かれたスーパーロボット軍団が、第3部で最終的に合流して決戦に挑む、という王道的演出を示しています。
また、リュウセイ編とキョウスケ編という、二つのストーリーで始まる「OG」も、中盤過ぎから部隊が合流して、強敵エアロゲイターとの戦いに挑む、という構造です。
E魅力に欠けるキャラクター
こう言うと、語弊があるかも知れません。
リュウセイのキャラは、後の作品(αやOG、その他CDドラマの数々)で、少しずつ魅力的になってきています。
ただ、新というゲーム内では、トホホな演出のおかげで、その魅力が描ききれなかった、というのが実情でしょう。つまり、初登場でのツカミに失敗した、と。
リュウセイは、スパロボマニアであり、格闘ゲームマニアです。その意味では、スパロボのプレイヤー(ロボットファンであり、ゲームファン)に近いキャラと言えましょう。プレイヤーが感情移入しやすい主人公……という点で、設定的には問題ありません(チームの仲間も、クールな2枚目と、活動的だけど、もろい面も持ち合わせたヒロインという王道路線)。
でも、新でのリュウセイは、とにかく「変な奴」に描かれているんですね。「ライディーンにスリスリと近寄ってきて、パイロットの洸に『よるな』と言われる」、何だかバイキンみたいな演出がされています。本作でのリュウセイは、格好良い見せ場よりも、3枚目的演出が誇張されています。
つまり、プレイヤーに近いキャラであるにも関わらず、扱いが決してよろしくない、と。
キャラクターとしては、先輩のマサキも、リュウセイと同じ「単純な熱血漢で2枚目半」と言えます。ただ、初登場シーンでは、「サイフラッシュで圧倒的な強さを見せつけたキザな奴」、それでも、より強大なビアン博士のヴァルシオンに敗れて、自分の無力さを痛感し、プレイヤーキャラと共同戦線を張ることに同意。つまり、クールから一転、本来の熱さを見せていく、と(何だか、そう書くと、グレートマジンガーの剣鉄也を思い出した)。
その後、方向音痴といった3枚目属性を披露。熱さ、クールさ、お笑いの3つの芸風をバランス良く獲得するに至っています。
マサキにとって幸いなのは、ライバルキャラのシュウが同様の存在感をもって描かれたことにもあります。シュウを追いかけるマサキ……という構図は、デビルガンダムを追うドモン、ホワイトベースを追うシャア、ルパンを追う銭形警部と並んで、分かりやすいキャラ像を提示してくれています。
それに対して、リュウセイのキャラ演出を見ると、やはり3枚目的な側面が強調されすぎています。熱さも持ち合わせており、役柄と言えば、戦隊物でいう「お笑い系レッド」かな、と(他には「マジメな熱血系レッド」と「頼れる隊長系レッド」がいる)。
ただ、リュウセイが闘志を燃やすべき敵キャラとの間で、ドラマが存在しないのが、演出上のミスです。ジュデッカ・ゴッツォも単にラスボスというだけで、さほど描写が行われていないキャラなんですが、本来は、その部分をきちんと描き、新たな主人公と敵組織の因縁をしっかり見せるべきだったんです。
それがない以上、リュウセイの熱さも空回りしており、単に「新ロボが登場した際に、マニアックに解説する役どころ」に甘んじている、と。ガンダムが出てくると解説を始めたがるニナ・パープルトンや、旧ザクなどのレトロMSに造詣が深いシャングリラ・ジャンク屋チーム、その他、解説役はスパロボ界でも必要なんですが、主人公的存在がそれを行うと、どうもプレイヤーの感情移入に支障をきたすような気がします。
ちなみに、多くのバトルアクション物では、敵キャラが必殺技などを披露した際に、観戦者サイドで「驚き戸惑う3枚目」と「豊かな知識と観察眼で説明を加える2枚目」にキャラ配置がなされるわけですが、リュウセイの場合、どちらでもないんですね。と言うのも、リュウセイって味方のスパロボには興味あるくせに、敵に対してはコメントを入れてくれない。本作では、敵オリジナルのメカも豊富に登場しているんですが(とりわけ印象的なのは、女性格闘家型メカのキョウ)、そいつらに対してリュウセイがツッコミの一つでも入れてくれれば、また解説役としての評価もできる、と思います。
言ってしまえば、本作のリュウセイは、いろいろな意味で役どころが中途半端に見える、と。
リュウセイに限らず、本作でのキャラ描写は他のスパロボ作品と比べても、相当薄味になっています。過去の作品だと、ララァやフォウ、胡蝶鬼、ミネルバなど説得できる敵キャラのみならず、キャプテン・ラドラや、ゲッターとの勝負にこだわる鉄甲鬼など、多くのキャラが登場し、バトルドラマに彩りを与えてくれました。
本作は、地上編の前半がボルテス、後半がGガンダム、宇宙編はVガンダムに偏っており、他の作品キャラは印象が薄めです。最たるものは、ガイキングの敵キャラである美少女戦士エリカ。何のドラマもなく、暗黒怪獣デビルジャガーに乗ってきて倒されるだけの存在になってます。役割としては、グレンダイザーのナイーダやキリカなど、悲劇の美少女に相当するキャラなのにね。単にゲームのコマとして扱われるだけで、ドラマに寄与しないなら、登場しないほうがマシとさえ思ってしまいます。
Vガンダムの敵キャラも、数はたくさんいるのに、ほとんどドラマには貢献しません。あのバイク親父のドゥカー・イクが目立たないんじゃ、その他は推して知るべし、ということで。
結局のところ、オリジナルキャラを立たせることもできず、また原作キャラに対するリスペクトもあまり感じさせない、という点で、本作のキャラ演出は、残念ながら魅力に欠ける、と言わざるを得ません。
なお、本作で最も印象的な演出がなされている敵キャラと言えば、プリンス・ハイネル(ボルテス)と、東方不敗マスターアジア(Gガンダム)なんですが、彼らの扱いも原作を知る者からは到底納得できないものと言えます。これについては、後述ってことで(ハイネルはこちら、東方不敗はこちら)。