スーパーロボット大戦EX
作品解説
(その1・システム編)
各章目次
【その2:マサキの章】
【その3:リューネの章】
【その4:シュウの章】
前作「第3次SR大戦」からわずか半年で新作が出ました。
1994年の春にスーパーファミコンで、外伝という形の本作が発売。
NOVAがスパロボの発売をまだかまだかと待ち受けていたのは、この作品と次の「第4次」までですね。以降の作品は、ゲームに慣れてしまった分(また忙しくて、じっくりプレイできなくなった分)、この時期ほどの感動をともなってはいないみたいです。
それでも、どんどん進化する戦闘画面には、毎回、期待しているのですが。
そして、この作品は、1999年、PS版の「コンプリートボックス(EXCB)」として復活もしました。
1.SR大戦EX
●冒険心に満ちたゲームシステム
一時期、NOVAはスパロボ入門編に最適なソフトとして、「EX」を考えていました。理由は簡単。この前の「第3次」と続く「第4次」が、ストーリー的にも長く、難易度も高めだったからです。
それに比べ、EXは3つの短編ストーリー形式(各章とも20シナリオほど)で、「初級者用(マサキの章)」、「中級者用(リューネの章)」、「上級者用(シュウの章)」に分けられていたからです。
おまけに異世界ラ・ギアスを舞台にしたオリジナルストーリーですから、ロボット物の知識が少ない人でも、比較的容易にストーリーに入っていけるという特徴があります。
システム的に大きな特長は2つ。
1つは、ISS(インタラクティブ・シナリオ・システム)。各章で選んだイベントの結果が、別の章のプレイ時にも反映されるというものです。このシステムを使わないとプレイできないシナリオもあり、再プレイ意欲を高めてくれました(しかも、短編なので再プレイは容易)。
もう1つは、武器の改造が可能になったこと。前作までは、パイロットの攻撃力をレベルアップで高めるしか、ダメージを増やす手段はなかったのですが、改造の選択肢がさらに増え、これでますます資金が必要になったわけです。
ただし、SFC版に限って、「パイロットの攻撃力」という概念がなくなりました。結果、パイロットの違いは命中・回避と精神コマンドのみ、と。そのため、ダメージ計算も一番容易なシステムと言えます。自分の武器ダメージから相手の装甲を引くだけですから(もちろん、双方の気力のパーセンテージを掛け算するなどの修正は加わります)。
あと、SFC版の武器改造には注意事項があります。それは、どんなに改造しても、最大ダメージは9999を超えないんですね。すなわち、攻撃力8000のシャインスパーク(今の目から見ると、すごい数値だ)を改造してもムダだと。
シャインスパークの必要気力は130ですから、最低でも8000×1.3=10400で、限界を突破します。ましてや、精神コマンドの「熱血(ダメージ2倍)」をかける必要はまったくありません。
まあ、装甲2000(今の目からは、常識的な数字かな?)なんて化け物を仕留める際には、それなりに意味があるのかもしれませんが。
精神コマンドでは、相手のHPを10だけ残す「てかげん」が加わりました。これで、弱いキャラを育てたり、「幸運(資金と経験値2倍)」持ってるキャラにとどめを刺させたりすることが、容易になりました。
「集中」がなくなったこともポイントかな。命中は「必中」のみ、回避は「ひらめき」のみで行います。で、命中率は比較的高めなので、ほとんど「必中」の必要性はありません(スーパーロボットでオーラバトラーを攻撃する時ぐらいかも)。
逆に、前述のシャインスパークの例で分かるように、攻撃力は高めですから、「ひらめき」は欠かせませんね。EXでは、「ひらめき」を持たない剣鉄也より兜甲児のほうが、ボス戦ではるかに使いやすかったものです。
ユニットの特徴として、長射程武器を持つメカが、味方に多くなったことも特徴。総じて、敵のほうが射程距離の長かった「第3次」に比べ、「EX」では敵の射程や地形対応を見て、それに合わせて攻略法を考える余地が多かったと思います。とりわけ、対「移動要塞」戦において。
逆に「集中」かけて敵陣に突っ込む戦法は、使えません。ただし、「CB版」では、「集中」が復活していますから、それも可能になりましたが。
「サイフラッシュ」や「サイコブラスター」といったマップ兵器が最も強かったと思えるのも、この作品です。とりわけ、「マサキの章」では、サイバスターの他に、魔装機神ガッデスやザムジード、ZZガンダム、GP02など、マップ兵器搭載のユニットが非常に多く、それだけでボス以外を殲滅することも可能です。
さらに、後の作品で省略されてしまったマップ兵器の戦闘デモ映像が、きちんと描写されていたのも印象深いです。ハイメガキャノンを放つZZや、メガバズーカランチャーを発射する百式の雄姿は、SFC版EXが最も格好良かったと思います(このマップ兵器演出は、IMPACTでようやく復活)。
最後に細かい点として、敵の攻撃に対する反撃設定が「各ユニット別」になったこと。前作では、死にそうな味方が一機でもいれば、全員「防御か回避」を選択するしかなかった訳ですが、今作では回避(防御)させたいユニットだけを選べば、その他のユニットは反撃できるわけですから、ターンを無駄にしなくなったわけです。
その後、「第4次」になってようやく、反撃設定がその時その時のマニュアル操作でできるよう(すなわち現在のスタイル)になったわけです。昔は、敵の攻撃ターンは、見守っているしかなかったわけで、システムの進化=便利になったことを痛感します。
●オリジナル世界ラ・ギアスの物語
物語はインスペクター戦争(「第3次SR大戦」)後、サイバスターの故郷である異世界ラ・ギアスに、多くのスーパーロボットやそのパイロットたちが召喚されたことから始まります。
おなじみの各種ガンダムや、マジンガーチーム、ゲッターチームの他に、新参入作品としては、「聖戦士ダンバイン」と「戦国魔神ゴーショーグン」があります。
「ダンバイン」は、ガンダムシリーズにつづくリアルロボットとして、抜群の回避力と絶大な攻撃力を誇り、以降の作品でも主力的な扱いを受けます。後のシリーズでの扱いの大きさに比べると、このEXではまだ顔見せ的な登場ですが、「マジンガーZ」に匹敵する強固な装甲や、妖精(ミ・フェラリオ)のチャム・ファウなど、話題性も豊富で、存在感は抜群です。
そもそも、本作では母艦からして、「第3次」以前のブライト艦ではなく、オーラシップが採用されているのですから、ある意味、魔装機神につづく準主役と言っても過言ではないでしょう。
さらに、「ファンタジー風の異世界に召喚された勇者」というEXの設定は、そのまま「ダンバイン」の設定ですから、登場に全く違和感ないわけですね。
一方の「ゴーショーグン」ですが、何とも落ち着きのないこと(笑)。「マサキの章」と「リューネの章」を行ったり来たりで、ずいぶん歯がゆい思いをさせられました。「シュウの章」にも絡んでおり、その出会いは続く「第4次」において、深遠なシリーズ設定の種明かしの伏線として機能しています。
また、「初の遠距離必殺技を持つスーパーロボット」だとか、「ゲッター以外で、初めて複数パイロットの精神コマンドが使えるようになったメカ」だとか、トピックはいろいろあるのに、スパロボでは何だか地味な扱いのような気がします。
今後の作品では、レミー島田がメインパイロットの小型ロボット・トライスリーの登場を要望します。
これらのロボット軍団が、フェイル軍(マサキ)、カークス軍(リューネ)、邪神の使徒(シュウ)に分かれ、互いに接触やすれ違いを繰り返しながら、ラ・ギアスの戦乱に巻き込まれて、戦いつづけるのが基本ストーリー。
最終的には、どの章でも、自分たちの陣営の長と対立する構造になっており、ドラマ面に深みを与えてくれます。
「スパロボ」全体から考えると、この作品の意義は、サイバスターの仲間である地水火の魔装機神(その他、多くのラ・ギアス関連キャラクター)のデビュー作であり、オリジナル世界ラ・ギアスの世界観をプレイヤーに認知させた作品といえます。
ラ・ギアス世界の冒険を楽しむには、この作品とSFC版ソフト「魔装機神」のプレイがお勧めです(PS版「真・魔装機神」は似て非なる作品)。ただし、後者は現在、入手しにくくなっていますので、移植を希望。
「α外伝」で、ジャオームやらセニアやらプレシアやら、ラ・ギアス関連のメカやキャラクターを多く出しているのだから、この機会に改めて、「魔装機神」をリメイクしませんかねえ。
●リメイク版の評価
リメイク版EXは、NOVAの中では、あまり良い評価じゃありません。
理由は、ユニットのデータがSFC版「EX」よりも、「第3次」に準じているからです。
つまり、ゲーム性がかなり変わった印象だということですね。
システム的には、反撃命令がマニュアルで設定できるようになったことや、声優の採用など、CB版「第3次」と同じ評価ができますし、シナリオタイトルを読み上げるのも相変わらずいいです。
でも、違和感を覚えるんだよなあ。
違和感を覚えるユニットは2つ。それは、F91とマジンガーZ。
元祖EXでのF91は、全シリーズの中でも最強だったと思います。
主力武器のヴェスバーがビーム兵器ではなく、射程9、すなわちνガンダムのフィンファンネルに匹敵する長射程を誇ります。マサキの章の主力MSとして、ボス的退治にも大活躍でした。νガンダムは、リューネの章に出るわけですから、うまく住み分けができていたわけです。
しかし、CB版EXのF91は、第3次のデータが基本ですから、激弱になりました(第3次のF91の評価はこちら)。一応、「第3次」よりもヴェスバーの射程が1伸びていますが、それでも射程6。これでは、移動要塞やラスボス・デュラクシール(ともに最大射程7)の射程外から安全に攻撃という真似ができません。すなわち、F91をラスボス戦に投入するのは、はなはだリスクを伴うようになった、と(ちなみに、νガンダムのフィンファンネルの射程は8)。
F91の扱いは、作品によってまちまちなのですが、最も強かった「EX」と、最も弱かった「第3次」というのがNOVAの印象。強かったF91が、CB版でとたんに弱くなったのが非常に悲しかったです。
おまけに、F91って、「コンパクト2」では出番少ないし、「α外伝」では密かに削られているし、何だかだんだんスタッフの愛情が感じられなくなっているような気が。
次にマジンガーZ。
NOVAが初めて、マジンガーが強いと思えたスパロボ作品が、元祖EXなのです。
その理由は、「ブレストファイヤー」の威力と、HPが「第3次」よりも向上していたこと。最初からジェットスクランダー装備で機動性が少しは上がっているとはいうものの、風の魔装機神たるサイバスターに追いつけるはずもなく、ザコが一掃されたころに、戦場に駆けつけるノロマですが、それでも対ボスキャラには、これ以上ない壁役として本領発揮。5000を越えるHPは、そう簡単には落ちません。
しかし、F91同様、マジンガーZも第3次のデータに基づき(評価はこちら)、あまり使えないメカの仲間入り。HPが3300まで激減しましたからね。唯一の救いは、甲児くんが「鉄壁」(装甲2倍)を使えるようになったことぐらいですか。
他に変わった点と言えば、マップ兵器のダメージが、武器改造によって、あまり上昇しなくなったこと。
元祖EXでは、一度の改造で200上昇(最大7段階改造で1400も上昇)したマップ兵器が、CB版では50しか上昇しなくなった(最大10段階改造で500だけ)。
すなわち、元祖ほどマップ兵器の威力が強くなく、それだけでザコ一掃というほど、甘くはなくなった、と。
これで割を食ったのは、「マサキ」……ではなくて、「リューネ」。
マサキはまだ何とかなるんです。「サイバスター」の「サイフラッシュ」はまだ敵のHPを削るため、と見なすことができる。仮に、「サイフラッシュ」でエネルギーを使い果たしても、弾数8発のハイファミリアなんかで活躍できます。おまけに、マサキの章には、補給係のボスボロットもいるから、「サイフラッシュ」連発も不可能じゃない。
しかし、リューネの場合、状況は深刻です。まず、「ヴァルシオーネ」が「サイコブラスター」でエネルギーを使い果たした場合、残された飛び道具は弾数3発のクロスマッシャーだけです。元祖EXでは、「サイコブラスター」の連発で大体、周囲のザコを一掃できましたから問題ないのですが、CB版ではそうはならない。後の戦いのことを考えると、HPを削るためとは言え、「サイコブラスター」をうかつには使えません。補給のためには、母艦でじっくりターンを掛けなければなりませんから。エネルギーは、サイコブラスターよりも、ハイパービームキャノンのために費やす方がよほど効果的です。
ちなみにおおむね、「第3次」と変わらない「CB版EX」のユニット群の中で、ヴァルシオーネのデータは、極端に弱くなっています。
以上から考えて、CB版EXのプレイ感覚は、元祖とかなり異なるものになっています。それはそれで、新鮮な楽しみではあるのですが、昔のプレイを懐かしむようにはいかない、と言っておきましょう。
ユニットデータ以外は、文句のない移植なのですが、やはり、愛着のあるユニットが弱くなると、悲しいわけです。
さて、この後は、「EXの各章」ごとにページを分けて、その内容を細かく見ていきましょう。