【仮面ライダー空間・扉へ】【注釈へ】

ライダーエッセイ

仮面ライダーシリーズについてのよもやま話


目次
改造技術の系譜 @ショッカーに基づく技術
 (1号〜V3)
このページ
Aメカニックライダー
 (ライダーマン、X)
2ページ目
Bバイオとメカの相克
 (アマゾン〜スカイライダー)
3ページ目

1:改造技術の系譜

 「仮面ライダー本郷猛は改造人間である」
 これは、仮面ライダーのオープニングを飾る有名なセリフである。
 クウガやアギト(およびギルス)は、改造されたような描写こそされていないが、明らかに普通の人間と異なる体質に変わっている。ただし、アギトに登場したG3シリーズ、龍騎のライダーズ、そしてファイズは改造人間とは異なる技術が用いられており、最近はスーツ装着型がメインになってきているようだが、それについては別項を設けるつもり。
 ここでは、「改造人間=生身の人間と異なる特殊能力を備えた者」と定義して、彼らの技術の系譜をたどってみたい。

@ショッカーに基づく技術

 「彼(本郷猛、あるいは一文字隼人)を改造したショッカーは、世界制覇(征服)を企む悪の秘密結社である」
 前述のオープニングの続きである(なお、この後、「
仮面ライダーは人間の自由のために、ショッカーと戦うのだ」とつづく)

 我々が仮面ライダーと呼ぶヒーローの元祖(もちろん1号)は、悪の秘密結社の改造技術によって生まれた。では、その技術とはどのようなものだろうか?
 NOVAは、機械工学者でも生物学者でもないので、専門的なことはよく分からないが、ショッカーの技術には、劇中描写より
「機械工学」「生命工学」そして「オカルト科学(なにやら神秘的な呪術めいたもの)」が入り混じっていると推察される。
 この3つの要素は、その後の改造人間の技術の系譜を読み解くのに必要な概念である。
 まず、「機械工学」は、変身ベルトの風車(タイフーン)などに顕著な、いわゆるメカニックギミックを司る部分である。後のライダーは、よりメカニックな装備を充実させていくが、1号および2号ライダーでは、外から分かる明確に機械的な装備は、変身ベルトとオートバイ(サイクロン)ぐらいである。内部図解などの設定では、Cアイ(複眼)やOシグナル(額中央の単眼)など多くの機械的描写が見られるが、たとえば、宇宙刑事のようにCアイが発光したり、ターミネーターのように本郷猛が腕の皮をめくると機械がむきだしになるような描写は見られない。強いて言えば、一文字隼人が朝、目覚めると、腹のベルトだけが変身前もそのまま残っている描写(第15話)くらいである。初期の仮面ライダーは、最低限度の機械的ギミックしか持たないヒーローと言えるだろう。
 第2に、「生命工学」だが、これは「バッタの改造人間」という設定に顕著である。仮面ライダーは、いわゆるショッカー怪人「バッタ男」として改造された。ショッカーは、動植物の能力を人間に宿して、改造人間を造る。もちろんミイラ怪人エジプタスや、想像上の生き物である雪男怪人スノーマン、ユニコーンの化石(そんなものあるの?)から造られた怪人ユニコルノス、モチーフ不明のマグマ怪人ゴースターなど「?」の存在も見られるが注1)。それでも、おおむね、ショッカーの怪人には、「生命工学」の要素が導入されていると思って、間違いない。それが、現代の我々が知っている遺伝子工学と同じものかどうかは謎だが。
 第3に、「オカルト科学」だが、これが意外とバカにできない。ショッカーの人体改造手術は、ナチスドイツに基づくもので、ナチスの総統ヒトラーは、オカルトマニアだったと知られている(そのため、有名な『インディージョーンズ』のような、オカルト遺品をめぐる冒険活劇映画が作られるぐらいだ)。オカルトと改造手術に何の関連があるか不思議に思う人もいるかもしれないので、具体的に指摘しよう。
 まず、北欧の海賊バイキングの中には、熊の毛皮をかぶり、熊の力を我が身に宿したように荒れ狂う戦士(バーサーカー)が存在した。ネイティブアメリカンの呪術にも、守護トーテム(聖獣)との一体化を成し遂げる儀式があった、と言われる。自然界の精霊との交流を軸とする土着信仰は数多いし、多くの精霊は、自然の象徴として動物の姿をとる。
 熊の力を宿したショッカー怪人ベアーコンガーは、おおむね現代の(といっても30年前だが^^;)バーサーカーかもしれない注2)。

 ということで、ショッカーの技術の3本柱は、「機械工学」「生命工学」そして「オカルト科学」であることは明らかになった。バッタ男こと仮面ライダーにも同種の技術が用いられていると考えて間違いないだろう。「オカルト科学」の部分は、変身ポーズ(いわゆる魔法的な儀式に相当)による変身に反映されていると考えられる。
 当初のライダー(旧1号)は、バイクに乗りながら、ベルトに風を受けて変身していた。これは、はっきり言って効率悪い。イザという時に、自分の意志で変身できないこともある。その理由を考えると、やはり本郷猛が改造途中で、脱出したことにあるだろう。つまり、本郷は、変身ポーズを修得しないうちに脱出したわけだ。そこで、もっと直接的な方法(バイクに乗っての疾走により、風を強引にベルトに受ける)を取ったと考えられる。
 本郷猛は、大学で生化学を研究していたが、何しろIQ600の超天才である。「機械工学」についても、それなりの理解力を備えていたにちがいない。だが、いかに彼が天才でも、ショッカー独自の「オカルト科学」までは、すぐには理解できなかったのだろう。まさか、変身ポーズをとれば変身できるなんて、考えなかったにちがいない。
 しかし、敵怪人の方はしばしば人間体に化け、そして、なにやら怪しげな身振りをしながら、怪人の姿になったりする。すなわち、怪人も変身ポーズを取っていたわけだ(ただし、「変身」などという言葉は使わないが)。
旧1号だけ、わざわざバイクを使わないと変身できない(じっさいには爆風をベルトに受けることでも変身できたが)ということはないだろう。
 
ライダー2号こと一文字隼人は、最初から変身ポーズを修得していた。これは、彼が脳改造寸前に本郷によって救われたからである(劇中描写こそないが)。つまり、変身ポーズに関する知識の暗示などは、すでに為された状態で、ショッカーを脱出したのだろう。
 その後、
本郷一文字の変身ポーズを見て、自分にももっと変身を容易にするためのポーズがあるはずだと考える。そして、そのポーズを試行錯誤の末、修得するのである。
 「ルァイダァアア! 変身!」という掛け声とともに。

 その後、本郷は、自分と一文字の体を分析しながら、短期間のうちに、ショッカーの技術を修得していく。IQ600の超天才は、ほぼ独学で、ショッカーの技術をマスターしていった。
 その成果を実際に示したのが、第3のライダー・仮面ライダーV3である。
 瀕死の風見志郎V3改造したのは、1号&2号のダブルライダーとなっているが、「フリーカメラマンにして格闘家」に過ぎない(行動力や戦闘能力は秀でているが、知識面で劣る)一文字に、深遠なショッカーの技術が修得できるとは思えない。やはり、これは、本郷の成果であって、一文字はただ手伝いをしていただけなのだろう(「一文字、その機械のスイッチを入れてくれ」「これか、本郷?」「ああ、そうだ。よし、5秒したら切ってくれ。3、2、1、よし」などという会話を交わしながら)。

 V3の技術は、本郷が独学で修得したショッカー製技術である。さらに、独自のアレンジとして、「力と技の風車」こと「ダブルタイフーン」と、追跡装置の「ホッパー」が新装備として挙げられる。「ホッパー」の提案者は、一文字かもしれない。彼は、しばしばショッカーとスパイ戦を展開していたため、そのような小道具の必要性を主張したのだろう。(Aへつづく)