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魔装機神
THE LORD OF ELEMENTAL
作品解説
(その1・概観&システム編)


●SFC版スパロボ最後の傑作

 スーパーロボット大戦シリーズは、過去のロボット作品にスポットを当てるだけでなく、ゲームというメディアで、新たなオリジナルロボットやキャラクターを製作し、ロボット業界全体を活性化させる一翼を担ってきました。

 その中でも嚆矢となるロボットが『風の魔装機神サイバスター』
 地底世界ラ・ギアスの神聖王国ラングランで製造された同機は、熱血漢ながら方向音痴という3枚目要素を持った操者、マサキ・アンドー(安藤正樹)と共に、DC基地を攻略途中のホワイトベース隊の前に颯爽と現れ、遠距離砲台をたちどころに壊滅させた挙句、一度は姿を消します。
 その後、DCの協力する宿敵シュウ・シラカワを追う中で、ホワイトベース隊と共闘することになり、DC総裁ビアン・ゾルダークの駆る究極ロボ・ヴァルシオンを撃退します(第2次スパロボ)。

 さらに、別のヒーローRPGへの出張出演を経た後で、異星人の襲撃を受けている地上世界に出現し、ホワイトベース隊改めロンド・ベル隊に協力。ビアンの娘リューネを説得し、彼女の愛機ヴァルシオーネも交えたスーパーロボット軍団で異星人を撃退。
 そして、ついに宿敵シュウの乗機グランゾンが秘めたる真の力を発動させた最強の敵ネオ・グランゾンを、凄絶な死闘の末に打ち破ることに成功します(第3次スパロボ)。

 次いで、ラングランに帰還したマサキ、召喚魔法によって呼び込まれたリューネ、邪神官の復活の儀式で甦ったシュウが、戦乱のラ・ギアスの地で、3者3様の戦いとドラマを繰り広げた後(EX)、
 新たに現れた異星人との最後の決着にも立ち合うことになります(第4次スパロボ)。

 本作は、これらファミコン〜スーパーファミコンのゲームとして展開されたDC戦争サーガ終結を機に、
 EXで一部が語られつつも、今だ全容が不明確だったラ・ギアスの物語を、第2次以前、マサキが召喚された時から、第4次以後、成長したマサキがラ・ギアスの戦乱に終止符を打つ時までを2部構成で描いた傑作ソフトです。

 マサキがどうしてシュウを追うのか? 
 大地の魔装機神ザムジードの前操縦者リカルドとは? 
 マサキの師匠にして養父、そしてプレシアの父親ゼオルートとは? などなど、

 サイバスターとマサキのファンがいろいろ気になる情報が満載された作品です。

 本作の後、サイバスターとマサキは、F&完結編α&外伝、そしてOG&OG2に登場していますが、いずれもラ・ギアスのことは匂わすだけで、必ずしも十分な扱いを受けているとは言えない現状。
 SFC最後の傑作として、今なお、リメイクあるいは続編が期待されている本作について、改めて振り返ってみることにしましょう。

●後の作品への影響

 本作の扱いは、「スーパーロボット大戦外伝」です。
 物語的には、同じ外伝的作品の「EX」で紹介された世界観を中心に、その前章であるラングラン崩壊までと、ラングラン復興後の戦乱終結に至る物語が描かれます。

 F&完結編は、第4次のパラレルワールド的内容なので、サイバスター絡みで特に新しい展開はなかったわけですが、
 システム的に、「修理装置や補給装置による経験値取得システム」が本作から受け継がれ、以後、スパロボでは標準採用されています。
 さらに「武器のフル改造による新武器の追加(本作では進化)」も、F完結編αに受け継がれております。
 また、本作であった「使用しなかった精神ポイントがシナリオクリア時に経験値に換算されるシステム」は、F&完結編のみですが、受け継がれています。
 あと、マサキリューネの能力が、第4次では射撃主体だったのが、以降は格闘が強化されているのも、移動しての接近攻撃が有利であり、格闘能力が重視されている本作の影響を受けていると言えましょう。 

 αは、DC戦争編になぞらえば「第2次&第3次」に相当する時代ですが、DCの立場が敵役から協力組織に変化しており、シュウにも悪役とは異なる役割が与えられています。
 システム的には、本作で初採用された「クォータービュー(斜め上からの見下ろし画面)によるマップ表示」が受け継がれ、以後、携帯機以外のスパロボでは標準採用されております。
 また、「高度による命中率の変化(高い位置ほど有利)」は、αと続編のα外伝のみに受け継がれています。
 他に、サイバスターの持つ特殊能力「精霊憑依」は、本作でのイベント(シュウに追い詰められたマサキが発動させて逆転の契機となる)を継承したものです。
 加えて、サイバスターの技である「ディスカッター乱舞の太刀」や、ヴァルシオーネRの技「円月殺法」も本作が初出。

 α外伝は、外伝つながりだからか、本作の影響を強く受けた作品と言えます。
 ある意味、「EX」「魔装機神」「α外伝」という流れを意識することもできます(キャラクター事典やロボット図鑑にも、「EX」「魔装機神」との関連およびパラレルワールド的相違点が解説されている)。
 具体的には、4大魔装機神の総登場とその強化技(火風青雲剣フェンリルクラッシュ五郎入道正宗)の採用や、プレシアディアブロセニアノルス・レイ(彼らの戦闘BGMの数々も本作が初出)、マサキの最初の乗機が「陽炎の魔装機ジャオーム」だったり、サイバスターの製作者ウェンディが登場したりなど、「魔装機神」プレイヤーには、いろいろと懐かしかったり嬉しくなるようなネタが多いのが、α外伝だったりします。

 一方で、OGのシリーズは、違った意味で本作の影響を強く受けた作品です。
 そもそも、「オリジナルジェネレーション」というシリーズが生まれたこと自体、最初のバンプレスト・オリジナルロボット主役作品である本作が高い評価を受けたことの証拠と言えましょう。その意味で、本作「魔装機神」「プロトタイプOG」という位置づけにある作品とも見なせるわけです。
 ただ、まあ世界観的には、「第2次」や「α」の時代に相当する1作目、および「第3次」の時代に相当する2作目を経たところで、「EX」以降の4大魔装機神の総登場にはまだ至っていないわけで、魔装機神ファンのお楽しみはこれから、という段階ですね。

 最後に、「魔装機神」の特徴の一つである「SDではないリアル等身による戦闘シーン」ですが、同じ年に出た「新スパロボ」に採用されただけで、どちらかと言うと、あまり日の目を見ることの少ないシステムと思っています。
 ただ、リアル等身のサイバスターは、TV画面ではめったに見られないので貴重ですね。この秋に出る「OVA版OG」の第2話では、リアル等身で動くサイバスターに期待を寄せていますが。

●本作独特のシステム

 本作は、スパロボにあって、スパロボにあらず。他の作品にない独自のシステムが採用されています。
 ここでは、それらを一つ一つ、確かめてみましょう。

@方向修正とZOC

 α以降に受け継がれたクォータービューのマップ画面(および立体化されたユニット表示)ですが、本作では、それまでの平面マップでは描写しにくいシステムを取り入れるために、必然的に採用された表示方法と言えましょう。
 クォータービューを採用した理由は、「視覚的なリアル感覚を取り入れる」以外に、3つあります。

 1つは、前述した「高度差による命中修正」。それまでの平面マップでは、「飛行ユニット」の浮遊状態を表すことはできても、建物や高台地形の高度を示すことができませんでした。しかし、クォータービューのおかげで、地形による高度差が明示できるようになったわけです。ただ、高度差のルールがなくなったIMPACT以降は、単に「リアル感覚を増す」以外のシステム的必然がなくなったんですけどね(リアルな視覚描写は、それはそれで大切な要素ですが)。

 そして、残りの2つが、本作のみのルール、すなわち方向修正とZOCです。
 まず、方向修正ですが、相手の側面から攻撃すれば命中とダメージが120%、背面から攻撃すれば150%の割合に増加するシステムです。一方、側面への反撃は命中が80%、背面への反撃は50%に減少します(ダメージ比率は変わらず)。
 これはすなわち、機動性の高い機体で、相手の背後から攻撃すれば圧倒的に有利で、逆にユニット移動時には敵に背後を取られないように考えて動かす、という、より戦術を考える必要のあるシステムです。
 これまでのスパロボでは、「破壊力のある一部必殺技」を除けば、「射程の長い武器を持つユニット」が有利でした。MSに代表されるリアル系のロボットがわざわざ接近してビームサーベルで切り掛かるのは、(確実にとどめをさせる場合や、回避できる場合などを除いて)愚策だったわけです。まあ、接近戦主体のオーラバトラーなどは別なんですけどね。
 ただ、本作の方向修正ルールは、「敵の背後に回りこむ」という戦術が有効なため、正面からの撃ち合いよりも、素早く移動攻撃できる武器の方が、使い勝手が良いことになります。
 具体的には、サイバスターでそれまで主要武器だった遠距離兵器のハイファミリアを駆使するよりも、ディスカッターで切り掛かる方が効果的になった、と(まあ、ザコ相手の反撃なんかでは、ハイファミリアは役に立つわけですが)。他の魔装機神を見ても、ガッデスを除けば、最強武器が剣撃系になっている点からも、接近戦重視の本作の特徴が明らかです。
 ザムジードも、EX第4次では、リニアレールガンを使った遠距離砲台だったのが、本作では超振動拳を多用 することになった、と。

 次に、ZOC(ゾーン・オブ・コントロール)ですが、これは敵機体の隣接マスは通り抜けできない、というシステムです。このシステムがないと、移動力のある機体なら、いとも簡単に相手の背後に回り込むことができるため、ユニット配置について考える余地が非常に少なくなり、ゲームとして面白く ありません。よって、方向修正とZOCは、2つ合わせて初めてゲームとして機能するシステム、と言えるでしょう。
 逆に、これらのルールが他のスパロボで採用されていない理由としては、やはり戦術的に難解になるからでしょうし、それで正解だと考えます。「背後に回りこんだほうが有利」という戦術 はいかにも姑息で、「力と力の派手な激突が売りのスーパーロボット」の戦いを表現するには向かないからです。MSのようなリアルロボットのみなら、方向修正やZOCが採用されても問題ないですが、やはり「背後に回ってシャインスパーク!」とかはどうもねえ(苦笑)。
 この点については、同じロボットシミュレーションゲームの「BRAVE SAGA」シリーズや、最新の勇者ゲーム「新世紀勇者大戦」なんかでは採用されていて、敵の背後に回りこんで、剣で切り掛かる姑息な勇者ロボットが描かれています。ゲーム性としては面白いんだけどねえ。ただ、まあ、勇者シリーズには「それをして当然な忍者ロボット」がいますし、忍者ロボットは総じて攻撃力が低い分、背後からの奇襲が行いやすくなっていて(移動力が高かったり、相手のZOCを無効にする能力があったり)、「勇者ではなく、忍者の支援を表現するシステム」としては肯定的に評価してもいいかなあ、と最近は考えるに至っています。

 さて、話を「魔装機神」に戻して、方向修正やZOCのルールに付与する操者の特技が、「気配察知」です。これは、一定確率で発動し、側面や背面から攻撃を受けた際に、そちらに機体を向け直させる能力です。
 ただ、この能力の存在は痛し痒しで、背後から敵を狙った際に発動されると、ファンネルを切り払われたり、とどめと思った攻撃をシールド防御でダメージ減少され て生き残ったときと同じような悔しさを覚えます。
 まあ、敵が気配察知するなら、それはそれで納得するわけですが、もっとイヤなのは、こちらがきちんとZOCを考えながら背後を取られないように機体配置しているのに、側面からの攻撃に思わず振り向いてしまって、背後がガラ空きになってしまった瞬間。思わず、「そんなザコからの攻撃に、気配察知するなよ〜!」と計算外の出来事に憤慨してしまうことしきり。
 できれば、方向修正とZOCのような戦術を駆使するシステムを採用しているのだから、それを覆すようなランダム要素の大きいルールは採用して欲しくなかった、というのが本音。でも、そんなランダム要素も計算に入れて、戦術を考えるのが一流のシミュレーションゲーマーというものかも知れませんが(苦笑)。
 蛇足ながら、操者の特技関連で、お気に入りは「再攻撃」。これはFC版第2次にあった「相手よりも反応値が一定数値以上高いと、2度めの攻撃が発動する」ルールの改訂版で、本作では切り払いや、後の作品のカウンターなどと同じように、「特技レベルに応じた一定確率で発動する」仕様となっています。これが発動して、敵にとどめをさせたときの爽快感は、また格別のものがあります。

 最後に、本作では「飛行ユニット」という概念は存在していません。
 サイバスター
と言えども浮遊できず、またサイバードに変形することもできません。これはやはりZOCのルールへの対応なんでしょうね。飛べる機体に飛べない機体のZOCは意味を成さない、と考えれば、ZOCというルールを優先するために、飛行というルールを割愛したのも必然と。
 そして、飛行できないということで、高度差のある地形についても、1段ずつしか登ることができません。よって、もの凄く高い崖の上に射程距離の長い敵が鎮座ましましている場合などは、もう最悪。はるか頭の上から「高度修正によって命中率の高い砲撃」をバシバシ撃ってきて、「うお〜、こんな時にサイバードに変形できれば〜!」と叫びたくなってしまうことも。
 こういう思いは、他のスパロボではなかなか味わえないので、地道に崖を登りながら、ようやく敵に取り付いてディスカッターで切り掛かる瞬間の高揚感とともに、記録しておきます。

Aプラーナ

 パイロット(操者)の能力は概ね、第4次以降のスパロボと同じなのですが、本作では世界観に準じたプラーナという能力が採用されています。
 これは、オーラバトラーのオーラ力に相当する能力で、プラーナの数値が機体の能力を上昇させます。具体的には、以下の表のとおり(MGはマグネタイト=魔力の略で、他のスパロボのENに相当)。

最大HP 現在プラーナ×10
最大MG 現在プラーナ×1/2
装甲 現在プラーナ×5
移動力 現在プラーナ×1/32

 これにより、主人公のマサキは、全パイロットの中でも最高のプラーナ値(基本値50)を持つため、優秀な魔装機神パイロットであるという設定も見事に描写されていますし、
 おおむねラ・ギアス人はプラーナ値が低く(おおむね30代)、能力的には優秀でも、魔装機の力を完全には引き出せない、という設定も再現されています。

 また、プラーナ値は、マップ兵器や必殺技を使用する際に、MG同様、消費してしまいます(毎ターン最大値の1/16ずつ回復)。MGと違って、プラーナ値の減少は機体の能力にも影響を与えてしまいますので、強力な武器の使用のタイミングには注意を払わないといけません。

B精霊修正

 プラーナ同様、本作の世界観を取り入れたシステムが、これです。
 魔装機に代表される本作のメカは、(ヴァルシオーネRなど一部の機体を除き)、大地に属する守護精霊の加護を受けています。そして、精霊属性には有利不利の相性が設定されており、得意な敵や、苦手な相手が存在するわけです。精霊の相性と修正数値は、以下の表のとおり。

大地に強くダメージ120%。炎に弱くダメージ80%。
風に強くダメージ120%。水に弱くダメージ80%。
炎に強くダメージ120%。大地に弱くダメージ80%。
大地 水に強くダメージ120%。風に弱くダメージ80%。

 これにより、風の魔装機神サイバスターを基準に考えれば、大地系の敵は戦いやすく、炎系の敵は強敵ということが言えます。炎系の敵が現れたときは、テュッティのガッデスに任せる、という戦術も取れるわけですね。

 あと、守護精霊には格付けがされており、高い順に聖位、高位、低位の3段階があります。
 基本的には、魔装機神が高位で、他の魔装機が低位に分類。聖意は、魔装機神の機体フル改造か、一部ボスキャラのみに見られます。
 そして、精霊の格が1段階違うごとに10%のダメージが加算されるようになっています。これによって、格の高い機体が有利となり、また魔装機神の(機体能力以上の)強さも再現されている、と。

 これら、プラーナ精霊修正の2大ルールは、本作を他のスパロボ世界と大きく分けている要素で、いかにも魔術世界であるラ・ギアスらしさを表現しきったシステムとして、NOVAの好みにかなっています。


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