がん性疼痛
図1がん性疼痛の出現率と病気の進行度(平賀一陽,2004より改変)
クリックで拡大します
がんに伴っておこる症状のなかで、「痛み」は最も苦痛な症状であり、かつさまざまな病気の段階でみられます(図1)。
そのため、がんの痛みをとることは、苦痛のない生活を送れるようにするだけでなく、がん自体の治療をより積極的に進めるためにも非常に大切なことと言えます。
平成19年4月1日よりがん対策基本法が施行され、「治療の初期段階からの緩和ケアの実施」が重点課題として挙げられ、より積極的ながん性疼痛治療の必要性が認識されるようになりました。
図2 がん患者の痛み
(淀川キリスト教病院編 緩和医療マニュアル2007より改変)
クリックで拡大します
がんの痛みは、図2のように「全人的な痛み」として治療に当たることが重要と言われていますが、なかでも「身体的な痛み」を抑えることは最も重要で、適切に鎮痛薬を使うことでその多くが緩和されます。
また、痛みがおきる原因が腫瘍そのものにより引き起こされる場合もあれば、がん治療に伴う痛みや体の衰弱に伴う痛みなど様々であるため、患者さん一人一人で鎮痛薬の必要量や種類は大きく異なります。
図3(JPAP資料より改変)
クリックで拡大します
痛みの治療法は、WHO(世界保健機構)方式と呼ばれる鎮痛薬の投与法で痛みの程度にあわせて痛み止めの量を調節することで多くの痛みをとることができます(図3)。しかし、十分な鎮痛薬を使っても痛みの緩和が難しい場合には、放射線治療や神経ブロックなどの治療を組み合わせると効果的な場合もあります。
疼痛医療センターでは、大阪大学医学部附属病院でがん治療を受けている患者さんを中心に、入院患者さんには緩和ケアチームが、通院患者さんには麻酔科ペインクリニック外来が痛みのコントロールに関する相談および治療に当たっています。難治性の痛みに対する治療として、神経ブロック治療(腹腔神経叢ブロック、経皮的コルドトミー、など)、くも膜下モルヒネ注入ポート埋込術などを行っています。